J1第14節、浦和レッズ対セレッソ大阪。ワールドカップ開催にともなう中断期間前最後の試合、加えて相手はFWディエゴ・フォルラン、柿谷曜一郎ら、強力攻撃陣を擁する好敵手とあって、会場の埼玉スタジアムに54,350人もの観衆が詰めかけた一戦は、浦和が1−0で勝利を収めた。

 スコアだけを見れば、最少得点差の辛勝である。だが、引いて守りを固めるセレッソを相手に、浦和はじっくりと圧力をかけ続け優位に試合を進めていた。そして迎えた77分。19歳のMF関根貴大がJ初ゴールを決めると、虎の子の1点を自慢の堅守で守り切った。浦和はこれで5試合連続無失点。これで今季の無失点勝利は8試合目である。

 しかも同じ日、前節まで首位に立っていたサガン鳥栖が大宮アルディージャと1−1で引き分けたため、浦和はこの勝利で首位に立った。昨季、「ここで勝てば首位」というようなポイントとなる試合でことごとく勝ち点を落とし、勝負どころで失速していた浦和を思うと、見違えるような変貌ぶりである。

 MF原口元気は「守備はいいので、攻撃陣がもっと点を取ってあげなきゃいけない」と反省を口にしつつも、「中断前に首位に立ったのはチームにとってプラス」と喜んだ。

 関根のゴールをアシストするなど、攻撃陣を引っ張っているMF柏木陽介も、「(自分が)縦パスを受けたときに、もう少し(周囲の選手が)裏を狙う動きがあってもいい。相手を崩す形があまり作れなかった」と攻撃面については厳しい言葉を並べたが、守備に関しては「前から行くところと、引いて守るところのメリハリができていた」と手応えを口にする。

 たしかに、最近5試合を見ても、4勝1分けという好成績の一方で、奪ったゴール数はわずかに5。1試合に1点を取るのがやっとという状態だ。強固なディフェンスが現在の浦和を支え、安定した戦いを続けられている要因となっている。

 そんな浦和の変貌ぶりに大きな影響を与えているのは、やはり、今季広島から加入したGK西川周作である。

 先ごろ発表となったワールドカップに臨む日本代表にも選出された、Jリーグ屈指の守護神は、常に落ち着いたプレイで浦和ディフェンスに安定感をもたらしている。西川は言う。

「ここまではいい試合運びと、自分自身のいいパフォーマンスが継続的にできている。今年で28歳ですし、前の試合でよかったけど、次はダメという波のある選手にはなりたくない。前の試合でよかったら、それをどんどん続けられる選手でありたいなと思う」

 今季、西川が常々口にするのが、「リーグ最少失点」と「試合数より少ない失点数」。第14節終了時点での総失点9は、そのどちらもクリアする数字である。西川自身、「いい結果で(中断前の試合を)終われた」と、ホッとした表情を浮かる。

 とはいえ、西川の貢献度の高さはディフェンス面に限った話ではない。

 元々、GKでありながら足下の技術にも優れている西川。しっかりとボールをつないで攻撃を組み立てる浦和にあって、DFと連携して最後方からパスをつなげるGKの存在は極めて大きい。最終ラインからでも不安なくボールをつなげる状況が、チーム全体の試合の進め方に安心感を与え、ひいては守備の安定につながっていると言えるだろう。西川自身、そうした役割を求められることは望むところだ。西川は力強い言葉を口にする。

「自分は攻撃もできて守れるGKという究極のところを目指している。浦和のサッカーはGKからつないでいくサッカーなので、しっかりとパスを回しながらも、相手がそれを狙ってきたら、今度はロングキックを蹴ったりして対応するという部分は、自信があるので、攻撃面でもこだわってやりたい」

 リーグ最少失点でチームは首位浮上という最高の形で中断期間を迎えることになった西川。これからしばらくは浦和を離れることになるが、その間にはまた別の、大仕事が待っている。

 言うまでもなく、日本代表でのポジション奪取である。トレードマークの笑顔を絶やすことなく、西川が語る。

「(5試合連続で)無失点の試合ができているので、自信がついた。それを代表でもやっていきたい。チームがいい状態だと自分もいい状態でプレイできる。代表に行っても、気分よくやれると思う。行くからにはポジションを争っていきたい」

 今季移籍した新天地・浦和で得た確かな自信とともに、西川はブラジルへと向かう。

浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki