2015年卒の大学生の就職活動解禁まであとわずか。その中でも体育会の学生は日々の練習と両立をさせて就職活動に取り組まなければいけないという現状があり、一般の学生に比べると多忙な日々を送ることになる。しかし、そういう中でも体育会学生には一般の学生が持つことのないアドバンテージがあるのも事実。今回は明治大学体育会サッカー部を率いる神川明彦監督に、そういった体育会学生の有利な点や現在の就職活動について語ってもらった。


ーまずは、今の就職活動についてどう思いますか?

実は私は、1999年の4月から2007年の9月まで就職課にいました。その頃は毎日仕事を通じて就職活動の状況をつぶさに見ていたので、その頃でしたらもっと語れたのだけど() ああいうのはサッカーの現場と違って、生き物なので。1年でもいなくなると語るのが難しくなる部分もあります。2007年に就職課から離れてけっこう経っているので、現状がよくわからない部分はありますけど、就職活動のための就職活動になっているんじゃないかなとは思いますね。一時を乗り越えるためだけにやっているような気がします。就活ブームみたいなものになっている感じがして。本当に心底考えて就職活動に向き合っている学生ばかりなのかどうなのか。そこは外から見ていて心配な部分ではあります。

今の状況を外から見ていて思うのは、グローバルというのかな。就職活動を見ていても、例えばTOEICのスコアだとか。そういう通常の学生生活プラスアルファのことを身に着けていないと、難関企業や人気企業に入るのは難しんじゃないかなと。そう思う一方で、就職課の人たちと話してみると「神川さんがやっていたときとあまり変わっていないよ」とも言われるんですけどね(笑) 結局、基本は自分自身の強み・弱みをしっかり捉えて、それを活かせる業界・職種に入っていくのがお互いにWinWinの関係を作れますよね。古今東西変わらずに求められる部分と、近年になって求められる部分。両方を備えていないと難しんじゃないかなとは思います。


ーなるほど。では就活における体育会学生の強みはどういった部分でしょう。

今のうちの選手なんかを見てても、極めて真面目です。教えたことに対しては素直に聞いてなんとかやろうとしますよね。あとはよく言われていることだけど、1から2にすることには慣れていると思うんですけど、0から1を生み出すのは今の子達は不得手なのかなと。今サッカーをやっている子達って小学生〜高校生までに教わってきたことが多くて、野放しでやってきていないというか。お腹いっぱいでくるというのかな。明治に来るとそういう、考える部分を求められるので、最初は苦しむ選手が多いですね。あとは、努力しても報われないこと、「自分はこれだけやったのに!」とか「自分はこれだけ正しいことをやっているのに!」と思いながらやっていても、それが決していい結果には繋がらない。こういうことを身をもって知っている。理不尽な体験を身をもって知っているんですよね、これは明らかな強みですよさすがに今の時代は減りましたけど、先輩がこうだといえばそれに従わざるをえないというか、そういう組織的な難しさを乗り越えてきているというし、サッカーに関してはどれだけ練習しても勝てない相手もいれば、どれだけ努力しても試合にすら出られないこともある。思い通りにいかなかったときの身の処し方を知っていると思います。


ーでは彼らには、社会に出て、どのような能力を発揮していってほしいと思っていますか?

組織的に難しい時、苦しい時にこそ力を発揮して欲しい。できればどのカテゴリ、どの企業でもうちから排出された子達がリーダーとして切り盛りしていってほしいですね。ドメスティックな社会も大事だとは思っているし、国内で活躍することを否定するつもりはなんらないですけど、それが更にアジアだとか世界だとか、自分のマーケットを広げられればいいと思いますね。それが今日的に求められている人物像じゃないですかね。


ー学生にはどのようなキャリアステップを踏んでほしいと考えていますか?

(自分のところの学生で言えば)せっかく東京で育ったので、地方で。東京ではない土地でですよね。20代の最初の8年ないし10年で苦労をして欲しいですね。色んな土地の文化に触れて、自分のものの価値観を確立して頂きたいと思っています。僕自体が大学をの職員になってから転勤をしていないので。あちこちに行っていない。それに、自分の仲間が海外や地方に行ったりしているのを見ると、やっぱり"成長しているな"と感じるんですよ。大人っぽくもなっていますし。いいな、とも思います。でも僕はサッカーをやりたかった。目標がはっきりしていたので。逆に言ったら、当時のバブル絶頂期の大学生からしたら、僕ほど足元が固まってた人間は珍しいんじゃないかなと思う。民間企業はほとんど受けなかったですからね。"就職しやすい"ことに踊らされなかったですから。人の価値観ではなくて自分の価値観で明治大学の職員になろうと思ったので。ここに入ればサッカーの指導者になれるとは思っていなかったですけど、なりやすいかな?とは思っていました。いつかは転職しようと思っていたんですけど、いつの間にか25年を迎えてしまって。意外と居心地がよかったんですよ。


ーどのようなマインドを持った社会人になってほしいと感じていますか?

弱いものを救うじゃないですけど、弱者に手を差し伸ばせるような、そういう社会人になってほしいですね。強いものに巻かれないというか。社会的地位の低い方とか弱い人とかもいると思うんです。そういう人たちに手を差し伸べられるようなマインドを持ってほしい。あまり僕は、強いものにへつらうようなことは好きじゃない。自分の価値基準を持ってもらってすごしてもらいたい。例えばですけど、僕も組織にいるのであれなんですけど・・・お子さんのいる女性とかは早く帰らざる、休まざるを得ないときってあるじゃないですか。そういうのに否定的な人は嫌いです。いまこれだけ結婚しづらい、結婚しても、育て辛いので子供を産まない。結婚をして子供を産み、育てること全てがネガティブになっていますよね。自分らしく生きるためのリスクというか、デメリットになってしまっている。こういう世の中的な流れがあるのはよくないんじゃないかと。日本人が日本人が産まなくなるわけですから、日本が滅亡に向かっている訳じゃないですか。


ーそれでは、最後に社会に出て行く学生にメッセージをお願いします。

僕は世の中の人は2つに別れると思っていて。税金を払っている人と払っていない人たち。こういう分け方をしているんですよ。払っていない人から払っている人になる。それだけ社会に対して責任は発生すると思うし、それだけの社会に対して提言する権利もあると思うんです。なので、社会にいいように使われるような人にはなってほしくない。だって、自分も働いて所得税とか年金を取られたり、社会システムの中に取り込まれるわけじゃないですか。結局自分で稼いだって、社会システムの中でいくらかお金を上納しなければいけない。ということは社会に対して厳しい目を持って、法律だったりとか政治だったり、色んな仕組みに対してものが言えるような見識というのを持ってもいいんじゃないかな、と。そういうのを持つべきなじゃないかなとは思いますね。逆に言えば学生はもっと世の中に対して黙って、自分達のやるべきことをやってくれと。それが学生に対してメッセージですね。学生というのは言ってしまえば世の中に生かされている存在な訳で。なので、謙虚に過ごしていったほしいですよね。ただ、税金を払う身になったなら、それなりに社会に厳しい目を持ってほしいですよね。そういうフィフティフィフティの関係を保てればと思います。

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