移籍交渉が長引くと、来年6月のW杯本番にも大きく影響してしまう。本田圭佑のミラン移籍は今夏? 冬? それとも別チーム?

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「今夏、ACミランへの移籍が決定?」「CSKAモスクワ会長が再オファーを拒否?」

日々、二転三転するサッカー日本代表本田圭佑の移籍交渉報道に、サッカーファンはやきもきしていることだろう。どうやらCSKAのギネル会長が夏休みに入ってしまったようで、交渉は完全にストップしてしまったようだ。

だが、セリエA優勝18回、チャンピオンズリーグ優勝7回という名門中の名門クラブであるミランの一員になったとして、本田はどれくらい活躍できるのだろうか? 移籍が現実になったとしても、サブメンバーであれば、本田自身のステップアップにつながったとは言い難い。

ミランほどのクラブともなれば、周囲から受けるプレッシャーも大きい。活躍すれば絶賛されるが、イマイチなプレーをすれば手のひらを返したように批判される。チーム内のポジション争いも激しく、コンディションを崩せばすぐにサブ扱いだ。ビッグクラブの、特に攻撃的なポジションでプレーする選手の宿命とはいえ、簡単な挑戦にはならないはずだが……。

「本調子なら十分活躍できると思います」

そう語るのはサッカーライターの杉山茂樹氏だ。だが、杉山氏はこうも続ける。

「ただし、10年前の感覚でミランを見ると、実力を見間違います。欧州全体の中での位置を理解するには、UEFAの欧州クラブランキングを見るといい。直近5年間の成績を加味したランキングでミランは14位。日本では知名度の低いリヨン(フランス)、アトレティコ・マドリー、バレンシア(スペイン)、ベンフィカ、ポルト(ポルトガル)よりも下位です。昨季のチャンピオンズリーグではグループリーグを突破したものの、決勝トーナメント1回戦(ベスト16)でバルセロナに敗れています。実力的にはどう見ても欧州のベスト10に入っていないんです。理由? メンバーを見ればわかるでしょう」

メンバー表を見ると、確かに地味な印象は否めない。これにはミランの内情に詳しいイタリア人記者も、ため息をつきながら同意する。

「マルディーニ、ピルロ、ルイ・コスタ、カカ、シェフチェンコ、インザーギ……きらびやかな看板スターを抱える時代ではなくなりました。今年1月、バロテッリが加入するまで屋台骨を支えていたのは新鋭エル・シャーラウィだった。彼は優れた有望株だが、“国際的”と呼ぶには時期尚早だし、イタリア代表でもまだ不動のレギュラーではない。だからこそ、今のミランとメディアにとっての本田は“大物”なんです」

前出の杉山氏は、大胆なこんな指摘をする。

「そもそもミランでいいのか、という問題があります。CSKAモスクワはUEFAランキング18位で、ミランとの差はわずか。これでは“栄転”とまではいえません。かつてミランは一流選手の最終目的地でしたが、今はさらに上を目指すワンステップになってしまった。24歳ならいいが、27歳の選手(本田)が行くべきところではない。レベルアップを目指す彼が行くべきなのはトップ10のチームでは」

それでも、地味なロシアよりもはるかに魅力的に思えるが、最悪のシナリオとして、こんなケースも考えられるという。

「移籍がずれ込んで来年1月になると、その間にミランはそれなりの形のチームになっているはず。本田の実力とは関係なく、チームが好調なら入り込む余地はなくなる。冬の移籍は“賭け”の要素が強いんです。そこで出場機会が得られないと、半年近く試合に出ないままブラジルW杯を迎えることになってしまいます」(サッカーライターの中山淳氏)

そうなると、日本代表にも影響を与えかねない。一刻も早く本田がミランに合流してくれることを祈るばかりだ。

(写真/益田佑一)