サッカー日本代表のザッケローニ監督 (撮影:岸本勉/PICSPORT)

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ワールドカップ本大会進出をかけた試合の前にあえて3-4-3をもう一度試したザッケローニ監督。

試合前、記者同士の雑談でこんな話題が出た。

「今の時期に3-4-3を試すのは、きっと明らかになっていない意図があるに違いない」
「オーストラリアのヘディングの強い2トップに吉田麻也と栗原勇蔵をマークさせ、その後ろを今野泰幸にカバーさせるためではないか」
「3-4-3を攻撃的だと言って煙幕を張っておいて、本当は守備の強化だろう」
「引き分けでワールドカップ出場なら、当然考えられる戦術だ」

ところが、実際に試合が始まると3バックの並びは右から吉田、栗原、今野。もしも記者たちが予想した高さ対策なら、今野が中央にいなければおかしいはずだ。

しかも、日本がボールを持つと今野は思いきり左タッチライン沿いにポジションを取り、攻撃陣をサポートした。そのため広い空間を吉田と栗原がカバーすることになり、相手にパスをカットされ、そこからサイドチェンジされると、守備陣は大慌てしなければならなくなった。

「前半は前からのプレスがあまりうまくいかず、サイドチェンジされていました。日本はサイドがかなり絞っているぶん逆サイドにスペースがあるので、サイドを変えられるとスペースがある中で外から仕掛けられるとかなり厳しかったです」(吉田)

「前半やった3-4-3で慣れていないぶん、横ずれもあったし、体力を使って後半バテてしまいました。最後はかなり厳しかったです」(栗原)

記者たちの予想は外れた。現時点での3-4-3は、守備陣を疲弊させてでも、中盤より前の厚みを増やそうという戦いになっているのだ。それはザッケローニ監督の意図なのか。ここから先は栗原が明確に説明してくれた。

「あの3バックは守備的ではなく、攻撃的な3バックで、後ろが重くなると5バックみたいになるのですが、それをするための3バックじゃない。リードされて追いつきたいときとか、そういうときに使うという話が(監督から)されています」

「自分が入っているポジションだけがセンターバックで、今ちゃん(今野)と(吉田)麻也のところはサイドバックと監督は言っていた。そしてサイドバックが前に絡んでいかないと攻撃的なところが機能しない」

だが、とてもうまくいっているとは言えない前半だった。それは選手もそう感じていたようだ。栗原が続ける。

「後半(の4-2-3-1)はいつもやっているからスムーズだし、距離感とか、パッと顔を上げたところにどこにいるかというのが感覚的にわかっているから、それだけでも違う。そうなるためにはやっていかないとダメだし、今日はよくなかったかもしれないけれど、継続してやらなければ。でも、なかなか継続的にやれることが今までなかったし、オプションは増やしていったほうがこれからはいい」

では、なぜこの時期に敢えて3-4-3を試したのか。

「オーストラリアも今日、絶対にスカウティングしていると思うし、そこで多少は紛らわせるというのもあると思います。監督はそういうことは一言も言っていませんが」

だが、はたしてそういう意図があったとしても、4-2-3-1ですら得点を埋めないという機能不全を起こしている。日本はオーストラリア戦に向けて何をすべきと思っているのか。

「オーストラリアも強い気持ちで来るでしょうし、日本も引き分け以上でワールドカップが決まるから、そこは本当に気持ちの戦いにあると思います」

「今やれることは強い気持ち。あと何日かありますから、徐々に上げていけばいいと思います」

栗原は報道陣を見渡して、重い空気に気付いたのかもしれない。最後にこんな言葉を残してミックスゾーンを去って行った。

「もっと後ろから声をかけられればよかったけれど、前半に本当に消耗していて。きついときほど声を出せと言うけれど、本当にきついと声は出ないものです」(報道陣笑)


▼ 通訳を通して指示するザッケローニ監督



▼ たくさんのメッセージが書き込まれた応援フラッグ



▼ ブルガリアとの親善試合が行われた豊田スタジアム