ペットになりたがる最近の学生、精神科医・香山リカ氏が現状を危惧
「子どもたちのママゴトで『ペットになりたがる子』が増えている」
以前、新聞で上記記事が紹介され、大反響となりました。これまで人気だったママ役よりも、ペットが人気だというのです。驚きの事実について、東京大学大学院の秋田喜代美教授はこう解説しています。
「家電の進化などにより、料理や裁縫で母親の技を見る機会が減ったことや、ペットが家庭の中心的存在になったことが影響しているのかもしれません」(朝日新聞)
ペットになりたい、何もこれは子どもだけのことではないようです。精神科医で立教大学の教授でもある香山リカ氏は、大学の授業で「いま何にでもなれるとしたら、何になりたい」かと、毎年聞いているそうです。すると、ここ数年の一位はなんと「ネコ」に。「イヌ」も上位に入るとのこと。「ウチのネコを見ていると気ままだから」「ペットの犬はいつも楽しそう」「どこにも行かずにゴロゴロしていられる」と、学生は理由を語ります。ママゴト世代だけでなく、大学生さえもペット願望があるというのでしょうか。
経済的な理由で一人暮らしの学生は減り、片道2時間以上かけて通学する学生は珍しくありません。大学の課題、サークル活動、バイトで多くのスケジュールは埋まってしまいます。「就職活動はきつい」「仕事はさらに大変」と先輩からの声が聞こえてくると、不安になっても仕方ありません。暗いニュースを見ては、日本や世界に希望を抱けないと思い、身近な友だちと家族との人間関係にも気をつかい、TwitterなどのSNSではさらに言葉に気をつけ、相手のひとことで傷ついたり深読みして悩んだり......これらを考えると、学生たちがペットになりたいという気持ちはわからないでもない、と香山氏はいいます。
しかし、本当にペット生活は楽しいのでしょうか。飼い主の事情に合わせて都会のマンションで生活を送ることになり、食べ物ひとつとっても好みを主張することはできません。本を読んだり会話をすることはできず、どんなに長生きしても20年くらい。本当にそれでいいというのでしょうか。
どんなにデメリットを香山氏が話したところで、学生たちの意見は変わらないそうです。「やっぱりネコのほうがいい」「ウチのワンちゃんは幸せそう」。
「日々の生活や人間関係の悩みの追われ、夢を持てずに不安いっぱいで生きるくらいなら、いっそのこと自分で何も決められなくても、生きる時間が短くなったとしても、何も考えずに暮らしたいということか」(香山氏)
そしてもう一点。学生たちは「ペットは愛されるからうらやましい」と口を揃えます。いまを生きる彼らは、人からどれくらい好かれるか、かわいがられるか、がとても大切なのです。「あの人、なんだかムカつくよね」「ちょっと変わってるね」と言われてしまったら、もうおしまいと思っているのです。
「私だって髪をベリーショートにして黒いシャツとか着て、カッコいいおしゃれもしてみたいんです。でも、いまって"愛されキャラ""愛されオンナ"が強いじゃないですか。そのためには女らしいフワフワなスカートとか、巻き髪にしておかなきゃならないんです」
ある学生の言葉です。彼女のように、装って生きている学生は少なくはないようです。"愛される"ということはとても重要なことであり、それを失うと、この時代ひとりで生きていくにはよほどの自信や実力がないと難しいと考えているのです。
「そこからさらに、『ひとりになったらおしまいだ』とまで思い込んでいる人もいる。実際にはそんな状況にはなったことがないのに、『ひとりは最悪』というイメージがひとり歩きしているようにも見える。だからそうならないためには、かつてはいちばん大切と考えられていた『主体性』や『自由』まで放棄してかまわない、と思っているのだ」(香山氏)
自分がないまま年を重ねていってしまうと、ある日突然、空っぽな人生に気付くことになるでしょう。また、誰もがペットという支配下におかれてしまっては、世の中全体が誰か強いリーダーの思いのままに操られる可能性もあります。ペットになりたがる、学生や子どもたち。この姿を物珍しく見ているだけではいけません。
「やはり大人たちは『自分で考えることを捨ててはならないよ』と、ちょっとストップをかけなければならないのではないだろうか」と香山氏は言葉を残しています。もちろんすべての学生がペット化を望んでいるわけではありません。しかし、「自由」に関する感じ方は、少しずつ変わってきていると言えるでしょう。
以前、新聞で上記記事が紹介され、大反響となりました。これまで人気だったママ役よりも、ペットが人気だというのです。驚きの事実について、東京大学大学院の秋田喜代美教授はこう解説しています。
「家電の進化などにより、料理や裁縫で母親の技を見る機会が減ったことや、ペットが家庭の中心的存在になったことが影響しているのかもしれません」(朝日新聞)
経済的な理由で一人暮らしの学生は減り、片道2時間以上かけて通学する学生は珍しくありません。大学の課題、サークル活動、バイトで多くのスケジュールは埋まってしまいます。「就職活動はきつい」「仕事はさらに大変」と先輩からの声が聞こえてくると、不安になっても仕方ありません。暗いニュースを見ては、日本や世界に希望を抱けないと思い、身近な友だちと家族との人間関係にも気をつかい、TwitterなどのSNSではさらに言葉に気をつけ、相手のひとことで傷ついたり深読みして悩んだり......これらを考えると、学生たちがペットになりたいという気持ちはわからないでもない、と香山氏はいいます。
しかし、本当にペット生活は楽しいのでしょうか。飼い主の事情に合わせて都会のマンションで生活を送ることになり、食べ物ひとつとっても好みを主張することはできません。本を読んだり会話をすることはできず、どんなに長生きしても20年くらい。本当にそれでいいというのでしょうか。
どんなにデメリットを香山氏が話したところで、学生たちの意見は変わらないそうです。「やっぱりネコのほうがいい」「ウチのワンちゃんは幸せそう」。
「日々の生活や人間関係の悩みの追われ、夢を持てずに不安いっぱいで生きるくらいなら、いっそのこと自分で何も決められなくても、生きる時間が短くなったとしても、何も考えずに暮らしたいということか」(香山氏)
そしてもう一点。学生たちは「ペットは愛されるからうらやましい」と口を揃えます。いまを生きる彼らは、人からどれくらい好かれるか、かわいがられるか、がとても大切なのです。「あの人、なんだかムカつくよね」「ちょっと変わってるね」と言われてしまったら、もうおしまいと思っているのです。
「私だって髪をベリーショートにして黒いシャツとか着て、カッコいいおしゃれもしてみたいんです。でも、いまって"愛されキャラ""愛されオンナ"が強いじゃないですか。そのためには女らしいフワフワなスカートとか、巻き髪にしておかなきゃならないんです」
ある学生の言葉です。彼女のように、装って生きている学生は少なくはないようです。"愛される"ということはとても重要なことであり、それを失うと、この時代ひとりで生きていくにはよほどの自信や実力がないと難しいと考えているのです。
「そこからさらに、『ひとりになったらおしまいだ』とまで思い込んでいる人もいる。実際にはそんな状況にはなったことがないのに、『ひとりは最悪』というイメージがひとり歩きしているようにも見える。だからそうならないためには、かつてはいちばん大切と考えられていた『主体性』や『自由』まで放棄してかまわない、と思っているのだ」(香山氏)
自分がないまま年を重ねていってしまうと、ある日突然、空っぽな人生に気付くことになるでしょう。また、誰もがペットという支配下におかれてしまっては、世の中全体が誰か強いリーダーの思いのままに操られる可能性もあります。ペットになりたがる、学生や子どもたち。この姿を物珍しく見ているだけではいけません。
「やはり大人たちは『自分で考えることを捨ててはならないよ』と、ちょっとストップをかけなければならないのではないだろうか」と香山氏は言葉を残しています。もちろんすべての学生がペット化を望んでいるわけではありません。しかし、「自由」に関する感じ方は、少しずつ変わってきていると言えるでしょう。
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