著名な建築家13人が脱・犬小屋に挑戦:「犬のための建築」

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日本勢を中心とした世界的に著名な建築家たちが、犬のための家を特別に設計。その図面をウェブサイトで公開し、誰もがDIYでつくることができるプロジェクト「Architecture for Dogs — 犬のための建築」がスタートした。



プロジェクトディレクターの原研哉によると、これは「犬と人間の新しい幸福のための建築プロジェクト」として、15年間もあたためてきた構想だという。「犬は人間の傍に生きるパートナーですが、人間が血統を掛け合わせ、多くの品種をつくってしまった動物でもあります。この身近なパートナーをより新鮮な目で見つめ直すことは、人間自身や環境を見つめ直すきっかけになるかもしれません」。



原の呼びかけに応じて建築界のスターが集結。アトリエ・ワン、内藤廣、妹島和世、隈研吾、コンスタンチン・グルチッチ、MVRDV、ライザー+ウメモト、坂茂、藤本壮介、トラフ建築設計事務所、伊東豊雄と、その顔ぶれは錚々たるものだ。世界各地で次々と革新的な建築物を設計している彼らが、犬のために何がつくれるか、と真剣に頭をひねって生み出された作品の数々は必見だ。



しかもその気になれば、それらを世界中の誰もがDIYで組み立てることができるというのが、このプロジェクトの画期的な点である。ウェブサイトでは建築家たちの図面をまるごとダウンロードすることができ、プロトタイプの画像や制作方法の解説ムーヴィーなどを観ながら、自分のペットのために建築をつくることができるという仕組みだ。完成後は、ペットと一緒に撮った作品の写真の送付も推奨されていて、早くもいくつかの投稿作品がウェブサイトに掲載されている。



プロジェクト始動を記念して、先月マイアミ(米国)にて、初の展覧会が開催された。2013年秋には、日本での展覧会の開催も決定している。







以下、プロジェクトディレクターの原研哉より、「WIRED」の読者に向けて特別なメッセージをいただいた。



15年程あたためてきた構想なので具体化できたことがまずうれしい。しかもアメリカの友人たちの協力を得て、国際的なプロジェクトとしてこれをラウンチできた事もよかったと思っています。「犬」をテーマとして選んだのは、地球に住んでいる人たちは誰でも犬についてよく知っているので、インターネットというメディアを使って世界に広がっていくプロジェクトとして、大きな普遍性を持っていると考えられたからです。そういう意味では、マイアミという世界の注目の集まる場所でこれを発表できたことに大きな意義があると感じています。勿論まだスタートしたばかりなので、今後もこのプロジェクトをゆっくり育てていきたいと思っています。皆さんもぜひ協力してください。(原研哉)



「著名な建築家13人が脱・犬小屋に挑戦:「犬のための建築」」の写真・リンク付きの記事はこちら





BEAGLE HOUSE

INTERACTIVE DOG HOUSE




近年、犬の多くは屋内に住まい、彼らの暮らしは、飼い主家族のライフスタイルとしっかりつながっている。我々人間は、一つ屋根の下で、犬と円満な暮らしを営んでいる。犬のための建築物など在りはしない:犬は、人間が自分たちの好みで選んだ建築物の中で暮らしているのだ。そこで、我々は、犬のための建築という課題を犬の専用空間の創出に決めた。そして、いわゆる古典的な犬小屋を今様にデザインしたりして極めて伝統的なやり方で取り組みを進めていった。世界で一番有名なビーグル犬のスヌーピーでさえ、他とあまり変わり映えのしない犬小屋に住んでいたのである。犬の家という簡素で象徴的かつ典型的な形(人が住まうシェルターの原型でもある)は、一つのメッセージの発信のために、はっきりと分かるような変化を加えないことが必要だった。そして、ほんの少し控えめに形を変えることで、その家は、隠れ場所となり、双方向性のあるおもちゃとなり、優雅で、遊び心のあるものに変容していったのだった。ビーグル犬は、利口で、子供たちとも上手に遊ぶことのできる性格の良い犬として知られている。そのため、私たちは、ビーグル犬の意欲をそそり、遊び心をくすぐるような環境を作ることに腐心した。曲線形は、その家の中に入ってみようと思わせ、遊び戯れることのできる心地の良い静かなスペースを生み出す。犬が出たり入ったりする度に、その家は、微妙なモーションで応えてくる。丸みを帯びた底面は、摩擦をあまり生じさせることなしに地面と接触する。家に取り付けられたヒモのおかげで、犬も飼い主も移動がし易いし、飼い主は家の断面がくさび形なので持ち運びし易い。弓なりの曲線は、人間の目線に届くので双方向の交流を一層可能にする。頑丈で活発なビーグル犬は、シンプルで、強度があり、遊び心にあふれたオブジェを我々に着想させてくれた。(作品紹介ページより転載)



MVRDV

1993年、ヴィニー・マース、ヤコブ・ファン・ライス、ナタリー・デ・フリイスにより、オランダのロッテルダムで設立される。建築ディレクターとして中心的役割を担う3人の緊密な共同作業を通して、建築、都市計画、景観デザインなどの分野におけるデザインや研究を行っている。









ARCHITECTURE

FOR THE BICHON FRISE




ビションフリーゼの毛はとても個性的である。とても白くてふわふわしていてワタアメの様でもあり雲の様でもある。そのような魅力的な毛を纏ったビションフリーゼの体を一回り大きくしたような建築である。全体の形としては、球を少しつぶしてくぼみをつくりそこにビションフリーゼが落ち着けるようなスペースをつくる。また、そこに座ったときにこの建築とビションフリーゼが一体となるような形を目指した。ストラクチャーは単純で、MDF合板を帯状にカットしたものを丸めてリングにし、それらの半径を少しづつかえながら放射状に配置し、部材どうしを凧糸で組んでいる。そのストラクチャーの上から毛糸でふわふわさせるような編み方で面をつくっていく。建築の後部には小さな穴があいており、そこからもビションフリーゼが出入りできる。(作品紹介ページより転載)



妹島和世 | KAZUYO SEJIMA

建築家。1956年茨城県生まれ。81年日本女子大学大学院修了。伊東豊雄建築設計事務所を経て、87年妹島和世建築設計事務所設立。95年に西沢立衛とSANAA設立。主な受賞に日本建築学会賞、日本建築大賞、芸術選奨文部科学大臣賞美術部門、プリツカー賞2010など。主な作品には金沢21世紀美術館*、トレド美術館ガラスパビリオン*、Dior 表参道*、スタッドシアター*、ニューミュージアム*、ROLEXラーニングセンター*、現在、ルーブル・ランス*等が進行中。(*印はSANAA)









NO DOG, NO LIFE!



人間の生活する家の中に置かれた、犬の生活する家。この建築は、犬の為の生活空間であり、人間の為の家具であり、家の中の庭であり、人間と犬の間の柔らかな境界である。私たちの提案は、人間と犬の生活空間に生まれる様々な物事を含み込むことのできる家、新しい豊かさを持った、間の建築です。形状は、7mm角のヒノキ材を200mmグリッドの格子状に組み、その上に2mm厚の透明のアクリル板を設置した、800mmキューブの棚のようになっています。この格子の内側を刳り貫いた部分に犬の居住空間を用意し、透明の棚の上には首輪や皿や本や植物といった、人間と犬の様々なものが収納されます。生活にまつわる様々なものが犬を取り巻く風景は、犬自身が主体的に生活に関わるきっかけに溢れた、人間と犬の新しい関係性を映し出しています。ペットとしての犬を人工的につくり出した人間、ペットゆえに動物としての意思を失くしてしまった犬。No dog, no Life!は、人間と犬自身が、生活する中で主体的に相互へ働きかける枠組みとなるような、人間と犬のための新しい建築空間です。(作品紹介ページより転載)



藤本壮介 | SOU FUJIMOTO

1971年、北海道に生まれる。94年、東京大学工学部建築学科卒業。2000年、藤本壮介建築設計事務所を設立。スイス、バーゼルにおけるPrimitive Future House(原初的な未来の家 08年)など、日本を問わずヨーロッパにおいても、多数の住宅のデザインを手がけている。10年、武蔵野美術大学美術館・図書館が竣工。









CHIHUAHUA CLOUD



この「雲」は、犬と一緒に旅をする建物である。個々のチワワの持つ独自の身体と気性を伝える第二の肌である。フワフワしたオーダーメイドの肌である「雲」は、チワワの動きや、スピードや、個性を、うねりの紋様に置き換えるのである。ペットと飼い主の仲介役であるひもは、犬の身体をつなぐかなめとして処理されている。この犬と人との接続部で、「雲」は、犬と人との関係性を肌の上に模様として変換させながら、引きと弛みをなぞっている。高慢なこの品種の特殊な要求に応えてデザインされた「雲」は、寒さよけの役目も果たすし、犬の骨の弱い部分—頭部(泉門)の柔らかい場所や目の近くの傷つきやすい面を含む—の保護役もする。「雲」のうねるようなたっぷりしたふくらみは、チワワの大好きな潜伏ごっこやかくれんぼにも対応する。更に言えば、「雲」は、チワワの身体の大きさについての予測を無効にするベールであり、本体より大きく見せるので、チワワという品種の高慢な個性にふさわしいものである。肌(雲)を通しての交流は、単に犬を大事に扱うというより、むしろ、飼い主や他の犬たちにチワワという品種との適切な交流の仕方を想起させる。さて、犬のサイズから目を離し、この品種の勇猛果敢さという際立つ特徴へと注意を向けてみると、「雲」は、不思議な神秘性をまとい始める;つまり、チワワの新たなる人工肌は、その精神を投影し始めるのである。DIY愛好者にとっては、「雲」の複雑な制作過程が、彼らのペットのために何か特別なものを作ってペットとの関係を強める機会となる。簡単にカスタマイズできる一式であるので、繊維の色や模様や飾りの選択作業を通して「雲」は、ペットと飼い主の両方のパーソナリティを表現するキャンバスの役割を果たすのである。(作品紹介ページより転載)



ライザー+ウメモト | REISER + UMEMOTO

「Reiser +Umemoto RUR Architecture PC」は、国際的に認知度の高い分野横断的建築デザインの会社であり、手がけるプロジェクトは家具デザインから、住居・商業用建造物、景観、都市計画やインフラ計画に至るまで広い範囲に及ぶ。一つひとつのプロジェクトが、現状の延長線上に連なるものととらえて、建築と構造と景観との関係性を包括的に把握し、建築と地域と物流の関係の徹底的な調査を行いながら取り組んでいる。多岐にわたるさまざまな規模のプロジェクトに取り組むことによって、歴史を通してバラバラに引き離されている領域を統合・一体化する柔軟な戦略力と技術力を養ってきている。









ARCHITECTURE FOR

LONG-BODIED-SHORT-LEGGED DOG




ダックスフンドは足が短いので、飼い主に目を合わせるのが大変。机や椅子によじ上るのも足が短いから大変。目の近くにまで行く良い手段はないだろうか?階段はどうだろう。胴が長過ぎてぎっくり腰になってしまう。スロープを折りたたんだようなものはどうか?これなら大丈夫。人も横になれるくらいのサイズにしよう。ベランダに出して、ダックスフンドと一緒に日光浴するのもよい。スロープの下は、小動物の巣穴のよう。潜り込んで獲物を捕らえるトレーニングができる。つなげればどこまでも伸びて行ける。どんな形にもなれる。例えば吹き抜けに積み上げれば、上の階に届く犬のためのスロープにもなる。(作品紹介ページより転載)



アトリエ・ワン | ATELIER BOW-WOW

1992年、塚本由晴と貝島桃代により設立。東京、ヨーロッパ、アメリカなどで戸建て住宅、公共施設、商業施設を設計・建築に携わる。都市学から生まれたプロジェクト「マイクロ・パブリック・スペース」は、国内外の美術館の枠組みを借りて実現する囲いのない公共空間の実験である。









WANMOCK



もともと狩猟犬だったジャックラッセルテリアは、犬種改良によってペットとしての温厚な素質をもつようになった犬です。人間のパートナーとしての素質をもつこの犬のお気に入りの場所を観察してみると、飼い主の洋服の上が大好きなようです。その匂いと布のさわり心地は、犬をとても安心させます。そこで、飼い主の洋服が犬の居場所をつくるような家具を考えました。布の伸び縮みを利用して、木のフレームにかぶせた飼い主の古着がハンモックのように犬の体を包みます。夏には風通しの良い服、冬は厚手の服と、季節にあわせて衣替えもできます。フレームはDIY のレベルにあわせて、合板、デッキ材の二種類、それぞれの作り方を考えました。どちらのフレームもソファに座る飼い主が手をのばせば自然に犬と触れ合うことができ、犬との距離をより近づけます。ワンモックは、人間と犬の心地よい関係を生みだす、誰もが作れる「犬のための建築」です。

(“ワンモック”という名前は、日本語の犬の鳴き声である「ワン」と、この作品の特徴である「ハンモック」をかけあわせた名前です)(作品紹介ページより転載)



トラフ建築設計事務所 | TORAFU ARCHITECTS

鈴野浩一(すずのこういち)と禿真哉(かむろしんや)により2004年に設立。建築の設計をはじめ、ショップのインテリアデザイン、展覧会の会場構成、プロダクトデザイン、空間インスタレーションやムーヴィー制作への参加など多岐にわたり、建築的な思考をベースに取り組んでいる。11年に『空気の器の本』、作品集『TORAFU ARCHITECTS 2004-2011トラフ建築設計事務所のアイデアとプロセス』〈ともに美術出版社〉、2012年に絵本『トラフの小さな都市計画』〈平凡社〉を刊行。









PAPIER PAPILLON



世界中どこででも手に入る、透明ラップフィルムの芯の紙管に針金を2本通すだけで、形が自由に変えられる、犬の空間ができあがります。ベッド、ブランコ、迷路のような空間…そしてあなたのイスやテーブルも作れます。(作品紹介ページより転載)



坂 茂 | SHIGERU BAN

1957年東京生まれ。南カリフォルニア建築大学に学び、85年、クーパー・ユニオン建築学部を卒業。同年、東京にて坂茂建築設計を設立。95年より、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のコンサルタントを務め(1995〜99年)、同年、NGO法人ボランタリー建築家機構(VAN) を設立。2007年より09年まで、プリツカー賞審査員。01年より08年まで慶應義塾大学教授。ハーヴァード大学デザイン大学院客員教授、コーネル大学客員教授(10年)。11年より京都造形芸術大学芸術学部環境デザイン学科教授。









MOUNT PUG



長さは600mmの細長い「枝」を用いたメッシュ状の「山」である。「枝」同士の凹凸をかみ合わせて六角形と三角形の形状に組んでいくと、生物の細胞のように「枝」同士がお互いを支えあう。釘やボンドを使わずに強度のある「山」ができる。パグはやんちゃで賢く、メッシュを巣として、そして遊具として使いこなす。おもちゃやおやつもメッシュに吊るせる。(作品紹介ページより転載)



隈 研吾 | KENGO KUMA

1954年横浜生まれ。79年東京大学建築学科大学院修了。コロンビア大学客員研究員を経て、2001年より慶應義塾大学教授。09年より東京大学教授。1997年「森舞台/登米町伝統芸能伝承館」で日本建築学会賞受賞、同年「水/ガラス」でアメリカ建築家協会ベネディクタス賞受賞。2002年「那珂川町馬頭広重美術館」をはじめとする木の建築でフィンランドよりスピリット・オブ・ネイチャー 国際木の建築賞受賞。10年「根津美術館」で毎日芸術賞受賞。現在進行中のプロジェクトに、10年国際設計競技一等のV&Aダンディー(スコットランド、イギリス)ほかがあり、国内外で多数のプロジェクトが進行中。









MOBILE HOME FOR SHIBA



終日の雨でも、熱せられたアスファルトでも、足腰弱い老犬になっても、毎日、飼い主と一緒に散歩に出かけたいのが犬。そんな犬の負担を少しでも和らげてあげられるように、散歩するための犬の家を考えた。風通しの良い木製のかごにタイヤを付け、ふかふかのクッションを敷き、日差しと雨をやわらげる開閉式のシェードを取り付けて、木陰のような快適な場所をつくる。スノコ状の床は出来るだけ低くして地面に近づけ、犬が自ら乗り降りできるようにしている。また、玄関や室内に持ち込んでベッドにも出来る、まさに移動する犬の家。船のような形をしたかごにゆらりと揺られ、飼い主と連れ立って、優雅な散歩を楽しみたい。(作品紹介ページより転載)



伊東豊雄 | TOYO ITO

1941年生まれ。主な作品に、せんだいメディアテーク、TOD’S表参道ビル、多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)、2009高雄ワールドゲームズメインスタジアム(台湾)など。現在、台中メトロポリタンオペラハウス(台湾)、みんなの森 ぎふメディアコスモス(岐阜県)等が進行中。 受賞歴に、日本建築学会賞作品賞、ヴェネツィア・ビエンナーレ「金獅子賞」、王立英国建築家協会(RIBA)ロイヤルゴールドメダル、高松宮殿下記念世界文化賞など。









DOG COOLER



一昨年十六歳の天寿を全うした愛犬のペペは、わたしのもっとも多忙な時期を共に過ごした心の友だった。美男のスピッツで、たいそうプライドは高かったけれど、性格は素直ですばらしくいい奴だった。しかし、あれだけ毛がフサフサしていると、さすがに夏場はキツイ。高温多湿のこの国の夏は、人にとっても犬にとっても最悪の気候だ。いまどき珍しい冷房のない我が家は、彼にとってはたいそうつらい環境だったに違いない。扇風機や冷風機を駆使しても、舌を垂らして苦しそうに喘いでいた。夏の居場所は風呂場で、タイルの床に伏せて体温を下げていた。もっとなにかしてやればよかった。この作品は,彼に対するオマージュである。体を冷やすこんなものがあれば、快適に過ごせたかもしれない。熱伝導率の高いアルミパイプに氷を入れたビニール袋を差し込めば,かなりの冷却効果が期待できる。アルミ材だけでは滑るので嫌がるだろう。間に木を挟み、爪が掛かるようにした。それらをゴムホースでつなぎ、室内の状態に合わせて自由に楽しめるようにした。彼のことを思い出しながら案を作った。(作品紹介ページより転載)



内藤 廣 | HIROSHI NAITO

建築家・東京大学名誉教授。1950年生まれ。76年早稲田大学大学院修士課程修了。フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所(スペイン・マドリッド)、菊竹清訓建築設計事務所を経て、81年内藤廣建築設計事務所を設立。2001年から東京大学大学院教授、副学長を歴任後、11年に退官。主な建築作品に、海の博物館(1992年)、安曇野ちひろ美術館(97年)、牧野富太郎記念館(99年)、島根県芸術文化センター(2005年)、日向市駅(08年)、高知駅(09年)、虎屋京都店(09年)、旭川駅(11年)などがある。









PARAMOUNT



つい先日、「ミラーテスト」に関する記事に出くわした。鏡に映った自分を認識できるか否かを軸に動物たちの自己認識を調べるのに神経学者が用いるテストである。生き物の中でも、類人猿、イルカ、象、ねずみは、鏡に映る自分を自分自身として認識すると確認されている唯一の動物である。人間は、好奇心を通してこのテストに応えることができるのが、せいぜい18ヶ月から二歳辺りになってからである。犬は、主に視覚以外の感覚を働かせているという簡単な事実だけの説明で、自己認識については全くできないという線引きをされている。このことを知ったプードル犬の飼い主たちがグループを作って、それぞれインターネットのフォーラムに集まり、この仮定についてケンケンガクガクの議論を展開している。彼らは、自分たちのプードル犬が鏡に明確に反応し、間違いなく自己認識の証拠を示すと主張している。もし、これが本当ならば、プードル犬について二つの質的特徴が浮かび上がってくる:一つは、彼らは、大いに自分の容姿を気にかけるということ、もう一つは、かなり知的であるということ。「The Intelligence of Dogs (犬の知性)」(スタンレー・コーレン著)によれば、プードルは、学習・問題解決能力と、従順に言うことを聞く頭の良さにおいてはトップスリーの中にランク付けされるという。このことは、人間から学ぶ犬の能力を言っているわけで、それは、きっかり一つの論理性のある掛け声につながる:「プードル犬を大統領に!」(作品紹介ページより転載)



コンスタンチン・グルチッチ | KONSTANTIN GRCIC

1965年生まれ。王立芸術院(ロンドン)でデザインを専攻する以前に、ジョン・メイクピース・スクール・フォー・クラフツメン・イン・ウッド(イギリス・ドーセット州)において木製家具職人としての訓練を受ける。91年、ドイツ・ミュンヘンで、コンスタンチン・グルチッチ・インダストリアルデザイン事務所(KGID)を設立。以降、デザイン分野における一流企業数社の家具、製品、照明器具などを開発している。









POINTED T



Pointed : とんがり

T : テリア/テリトリー

おおきな厚紙1枚から切り出したパーツを組み立てて天井から吊るすと、部屋の中に犬のためのテリトリーが出来上がります。釘や大工道具は必要なく、文房具さえあれば誰でも作れる家です。壁がなく屋根だけ浮いたようなこの家は、従来の犬小屋とは全く違った曖昧な犬の居場所を形成します。日本テリアが家に納まると、頭はすっぽり隠れますが、浮いた隙間から細い脚だけはちらちら見えて、まるで犬がおおきなとんがり帽子を被ったようになります。犬にとっては家ですが、人間にとってはユニークな犬のオブジェです。(作品紹介ページより転載)



原デザイン研究所(三澤 遥) | HARA DESIGN INSTITUTE(HARUKA MISAWA)

1991年に日本デザインセンターに設立された、原研哉が統括するデザインセクション。専門はコミュニケーション・デザイン。現代のアクチュアルな問題をデザインから掘り下げていく多数のプロジェクトを手がける。2000年の「RE-DESIGN-日常の21世紀」や04年の「HAPTIC-五感の覚醒」は、日常や人間の身体感覚を起点として世界をとらえ直す新たなデザインの視点を提供した。09年の『TOKYO FIBER ’09-SENSEWARE』展は、日本の先端素材の可能性をわかりやすくプレゼンテーションする試みであった。現在は、13年3月に開催予定の、家を未来産業の交差点ととらえ、次なる日本の創造性を描き出そうとする展覧会『HOUSE VISION』に取り組んでいる。









D-TUNNEL



トンネルの階段を駆け上がると人間と程よい高さで向き合える。人間のスケールと犬のスケールを平衡させる、言わば、尺度を調整する装置を考えてみた。展覧会の立案者として、未成熟かもしれないが、このプロジェクトの視点を体現する試みを、先んじて演じてみる必要があった。ここでは尺度の平衡という課題を想定してみたわけである。人間は自分たちのスケールに合わせて環境をデザインしてきた。たとえば、階段のステップ約15センチで世界共通である。これは人間の背丈や脚の長さによって自然に決まってきたものだ。椅子の高さやテーブルの高さ、ドアというものの存在や大きさも、さらに言えば家の大きさも都市の大きさも人間が人間の身体を前提に決めたものである。従って、人間の傍らで過ごす犬は、人間の尺度を否応なく受けいれなくてはいけない。この建築は、犬と人間が自然に視線を合わせるための装置である。上を向きっぱなしで過ごす超小型犬に、ぜひ試してみてほしい。(作品紹介ページより転載)



原 研哉 | KENYA HARA

「もの」と「こと」との両方のデザインに重点を置くデザイナー。これまでに企画・プロデュースを手がけた世界巡回展には、『リ・デザイン』『HAPTIC』『Japan Car』がある。展覧会ディレクターを務めた先端繊維を世界に紹介する試み『TOKYO FIBER-SENSEWARE』展は、2009年のミラノトリエンナーレで発表され、多大な反響を呼んだ。「長野オリンピック開・閉会式プログラム」や「愛知万博2005の公式ポスター」など、作品には日本文化に深く根ざしているものも多い。11年には北京を皮切りに巡回展『DESIGNING DESIGN 原研哉2011中国展』がスタートするなど、活動範囲はアジア地域にも拡大している。多くの著作も手がけ、『デザインのデザイン』や『白』は、他言語にも翻訳されている。日本デザインセンター代表取締役。武蔵野美術大学教授。日本デザインコミッティー理事長。日本グラフィックデザイナー協会副会長。







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