2012年11月14日のワールドカップアジア最終予選、オマーン戦に挑む日本代表のメンバーが5日発表された。壇上に登ったのはアルベルト・ザッケローニ監督、矢野大輔通訳の2名。会見直前に配られたリストに並んでいたのはおなじみのメンバー。その中に代表キャップがまだない宇佐美貴士(ホッフェンハイム/ドイツ)の名前が入っている。

入室してきたときは笑顔がない監督だったが、「コンニチハ。ミナサン、コンニチハ」と日本語で挨拶。会見がはじまった。

ザッケローニ監督
「ゲンキデスカ(会場から笑い)? 私のなれているやり方では2カ月に一度しかみなさんにお会いできないのですが、最近は多いので不慣れだという気がします。ご存じのようにオマーンとの試合は我々にとって非常に重要な一戦になってくると思います。最終予選も折り返しの地点にきまして、これから後半戦には3つのアウェイという戦いになりますので、その中で、アウェイの戦いの中で、いかに勝点を拾っていけるかというところにかかってくると思います。

個人的な見解ですが、オマーンはグループの中でも組織力が優れていると思いますし、バランスが取れているという印象です。他のチームに比べるとフィジカルの面では見劣りするかと思いますが、ピッチにうまく選手を配置してきます。前回の埼玉での戦いではほとんど守備に、引いて守るというやり方をしてきましたが、通常ではボールを持ったら保持するという戦い方をするチームです。

彼らの特長としては精度の高いカウンターを持っているということと、バイタルエリアに入ってきたときに余り多くを考えずにどんどんエリアに人が入ってくるということと、そこにボールを供給してくるやり方をしてきます。グループの状況では日本が1位で、その後ろに2位タイでオーストラリアとオマーンが控えています。グループの戦い方を見てもオマーンが唯一負けているのが埼玉でのうちとの試合だけです。

なのでこの試合に関しては当然集中して挑まなければならないし、対戦相手もホームの利を生かしてきて、自分たちがキックオフの時間を決められるということで、午後一番の早い時間を設定してきた、なれている自分たちの土俵で時間を設定してきたということだと思っています。

それまでの試合では午後遅い時間にやっている気がします。大切になってくるのは今回シングルデートということで、国内組にとっては早めに入って調整ができるのですが、海外組にとっては試合の直前にしか来られないという状況です。

また、オマーン戦のメンバーを見ていただいたと思いますが、決して大きな変化はなく、唯一挙げるとすると宇佐美が入っていることではないでしょうか。それ以外のメンバーに関してはこれまでも呼んできたメンバーですし、これまでよくやっているメンバーですので特に変える理由が見当たりませんでした。選手を招集する作業というのがとても難しく、23人以外にもたくさんの選手が代表チームに値するパフォーマンスを見せてくれていると思います」

――海外組の準備期間が短いことへの不安は?
「海外組に関しては、特にシングルデートのときにそういう問題が出るのですが、いいところを挙げるとすれば日本に戻ってくるよりも時差の調整にそんなに苦労しないと思います」

――長谷部選手が試合に出るようになりましたが、その点について。
「長谷部だけでなく他のメンバーも試合に出始めていると思います。たとえば細貝やハーフナーにしてもよく使われていると思います。岡崎にしてもけがから復帰して試合に出始めている状況です。日本人の選手が海外に出て行くのにはメリットとデメリットがあって、メリットとしては違ったリーグに行く、違ったサッカーを体験することが貴重な経験になる、インターナショナルなレベルのサッカーに順応しやすくなるというところで、デメリットとしては試合に出られない、使われない可能性があるということが挙げられると思います」

――宇佐美選手を呼んだ理由を教えてください。
「そのポジションのチョイスには幅があるところです。そこは積極的に若手を呼んでいるポジションです。若い選手は非常に高いクオリティを持っていますが、みなさんも変更が一番多いポジションだと気付かれていると思います。このパートになっている選手たちはみな高いクオリティを持っている選手が揃っていると思いますが、みんな若いということを有効利用できていないとも思っています。若さというのは、成長するまだ時間がある、伸びしろがまだあるということですが、そこから飛躍的に成長している選手、大きな一歩を踏み出している選手というのがなかなか見受けられないのが現実だと思います。もっと要求をしていきたいですし、もっと成長してほしいという強い思いがあります」

――香川選手と本田選手については。
「今名前を挙げた2人のメンバーについては、ザッケローニ体勢になってから常に呼ばれている選手ですし、レギュラーでプレーしている選手で、クオリティを高く評価し信頼している選手です。しかしこの2人に関しては、この2年間も常にいた訳ではなく、それぞれがそれぞれの時期に休みを余儀なくされました。香川はアジアカップからそのあとの8月までは代表チームの活動には参加していませんし、本田圭佑にしても3次予選のほとんどに出場していません。しかし彼らの代わりにこれまで入ってきた選手が非常にいい仕事をしてくれたということを忘れては行けないと思いますし、今回も香川の代わりに入る選手が仕事をしてくれるだろうと思います。当然香川が現在している、また最近してきた貴重な経験を超えられる選手はいないと思います。本田選手に関してはときに得点することもあるようですし、それは彼に要求していることの一つです。彼に要求しているのは、中盤をヘルプすることだったりアシストすることだったり、当然ゴールに向かってプレーすることです。CSCKでも以前はもっと低いポジションでスタートしたのですが、ゴールに近いところでプレーしているようで、それは非常に喜ばしいと思います」

――コンディション作りにこれまで以上に気を遣いますか?
「フィジカルコンディションも大切ですし、きちんとケアしなければならない要素だと思うのですが、さらに注意しなければならないのは、準備期間の短さだと思います。6月の試合は忘れなければいけないと思っていますし、あのときはオマーン、ヨルダンと試合が続いたのことで準備期間も長かったし、その中でチームとしてのクオリティを詰めていったのですが、今回はその時間がないと言うことで、これまで積み上げたことを復習して臨まなければならないのかなと思います」

――勝点3を奪うための一番大切な要素は?
「タレント、つまりチームとしての能力はあると思っていますから、それがないときにそれを埋めることができるのはコンディションと、チームとしてのバランスだと思っています。サッカーは決定的な要素は一つではないと思っています。6月の試合とは変わってくると思いますし、これはオマーンとの新しい戦いだと思います。サッカーは毎試合新しいストーリーがあると思いますし、だからサッカーは楽しい、素晴らしいと思います。オマーンは非常にいい状態だと認識していますし、ポジティブないい雰囲気でチームが作れていると思います。今回はホームで試合ができるということもありますし、ヨルダン戦でもたくさんのサポーターがスタジアムに詰めかけているという情報が入っています。そのような相手に対して日本代表は寄り集中して試合に挑まなければならないと思います」

――若手は招集されても実戦の経験をさせないか、出ても少ないのですが、彼らが長い時間試合でプレーできるための要素は何ですか?
「成長している姿を見せてほしいと思っています。成長の証があれば、おのおののクラブでも試合への出場機会が増えてくると思います。宇佐美は試合に多く出ていますが、たとえば大津であったり宮市であったりは出場機会が多くないと思いますし、原口は去年より今年のほうが試合に出ていないのではないかと思っています。やはり成長している姿を見せてほしいと思っていますし、このメンバーに関しては代表に呼んでいるときも高いクオリティ、高い能力があるとわかってもらえるために呼んでいたわけです。クラブで試合に出なければ成長がないという話もあると思いますが、クラブで試合に出られないのは、それぞれのクラブの監督さんも私と同じような思いがあるのではないかと思います。2年前日本に来たとき、宇佐美を見て年齢と実力のバランスを見て非常に驚いたのですが、そこから2年経って大きく成長していないと思っています。システムが違うチームでやって、その中でも、そのコンディションも変わりましたけれど、もっと成長してほしいと思いますし、今彼がやっていることは2年前できたことをやっているだけだと思います」

――宇佐美選手には具体的にどんなプレーを見せてほしいのですか?
「宇佐美に関しては、彼の適性のポジションはセカンドトップだと思っていて、サイドアタッカーではなくて、CFの近くでプレーするのが彼の良さが生きるのではないかと思っています。足下にボールがあるとき、そこにボールを受けたときには高い技術を持っていると思っているのですが、そこに留まらずにスペースで受ける、スペースに出て行くことを見せてほしいと思いました」

――ミゲル監督と親交があるとき来ましたが、昨日のポルトガル戦についてはどう思いましたか。
「はい。11人制のスペシャリストで5人制の話はできません。フットサルのプレーの評価をするのは管轄外なので控えますが、ミゲル監督は昨日の試合に関しても素晴らしかったと思いますし、困難な状況から同点にまで持っていったのは、非常に素晴らしいのではないかと思います」

14時36分終了。笑顔はないが、余裕のある表情だった。だが、これまでの会見にはない厳しい意見を若手選手に向けて語ったのは、まだはまらないピースへの苛立ちもあるのだろう。