【仙台×川崎】“息子のための戦術変更”と“主導権を握ると困るパスサッカー”という不思議
けが人が続出するなか、恒例の夏場の失速を最小限に抑えたベガルタ仙台。18位のコンサドーレ札幌にアウェーで不覚をとったものの、6月以降の敗戦は、その札幌戦のみ。他の試合をドローでしのぎ、勝ち点1を稼ぎ続け、しぶとく2位の好位置をキープすることに成功した。
対する川崎フロンターレは、風間監督の愛息子の加入後、1勝2敗2分けと低迷。息子たちをスタメン起用するために風間監督は、戦術変更まで行ったが、その親ごごろも実らずにいる。
ホームの仙台のスターティング・フォーメーションは4−2−2−2。GKに林、DFラインは右から田村、鎌田、上本、朴。ダブルボランチはケガから復帰の富田、角田のコンビ。攻撃的MFは右に太田、左に梁。前線はウィルソンと赤嶺のペア。
アウェーの川崎のスターティング・フォーメーションは4−2−3−1。守護神は西部、最終ラインは右から田中、レネ・サントス、井川、山越の4人。中盤の底は風間兄と中村が固め、2列目は右から大島、風間弟、登里の3人。1トップを務めたのはグロインペイン症候群からようやく復帰した山瀬。
試合は中村のアシストで先制した川崎を得意のセットプレー2発で粉砕した仙台が2対1で勝利。川崎はプレミアリーグ開幕戦のマンチェスターユナイテッドと同様に軽量級テクニシャンを大量先発させたことが裏目となり、角田らストロング・ヘッダーを擁する仙台の高さに屈してしまった。
仙台はお馴染みのロングボール&ハイプレス。川崎のフォアチェックを縦パスで交わし、セカンドボールを拾って試合を優位に進めた。これから季節が秋に変わり、気温が下がってくるだけに、強靭なフィジカルにモノを言わせた仙台のパワフルなサッカーは、J1で猛威を振るうことだろう。
独自のパスサッカーを展開していた川崎は、風間監督が体格的に守備面で限界のある風間兄弟を2人同時に起用するため、戦術変更を行った。たいした親バカである。フォーメーションほ4−2−3−1に変えただけでなく、以前はディフェンスをある程度免除し攻撃に専念させていた両サイドのMFに守備のタスクを課すようになったのだ。
確かに風間兄弟の起用には攻撃面である程度のメリットがある。テクニックに欠ける矢島、小林といった選手が外れたことで、前よりもパスワークによる崩しがスムーズにはなった。
その代わり、稲本が外れたことで中盤のフィルター機能が低下し、守備が余計に脆くなってしまっている。両サイドの選手を守備に戻らせてバランスを保とうとしたが、彼らもディフェンスが得意なわけではなく、せっかくの戦術修正もうまく行っていない。
風間兄弟加入以前の5試合で4失点だったものが、加入後5試合で8失点と倍増してしまっている。これでは風間兄弟の起用はメリットよりもデメリットの方が大きいと言われても仕方がない。
一般にポゼッション・ハイプレス志向の強いチームは、アウェーよりも、試合の主導権を握りやすいホームでの戦いを得意としている。逆に主導権を握れるホームでの試合を苦手としているのがカウンター型のチーム。相手がディフェンシブになりやすく、速攻の機会が少なくなってしまうためだ。
仙台はホームの12試合で勝ち点23、アウェーの12試合で勝ち点22と、ホームとアウェーの両方で好成績を残している。これは仙台の戦術的柔軟性の高さを示している。仙台はハイプレスで積極的に試合を支配することもできれば、相手にボールを持たせてカウンターを狙うこともできる。戦力的には中位以下に過ぎない仙台が首位に立てたのも、対戦相手のスタイルに左右されない、この臨機応変さにあるのだ。いまの仙台はレギュラーが健在なら、どのチームが相手でも互角以上に渡り合えるだけの力がある。このまま優勝ということも十分にあり得るだろう。
一方の風間監督就任後の川崎は、ホームで9試合3勝5敗1分けの勝ち点10、アウェーで7試合3勝1敗3分けの勝ち点12。パスサッカーを志向しているにも関わらず主導権を握りやすいホームでの試合を苦手としている。
原因はDF陣のパス能力の低さと中盤の攻守の切り替えの遅さにある。川崎のDFは、サンフレッチェ広島のDFのようにパスが得意ではない。そのため自陣でのパスミスが多く、ショートカウンターを喰らうこともしばしばだ。さらに中盤の選手たちの攻撃から守備への切り替えが遅く、相手のカウンターを防ぎきれないシーンも目立つ。
アウェーでの平均失点が約1.29点なのに対し、ホームでの平均失点は約1.78点。リーグ平均失点が約1.34点ということからも、その失点の多さがうかがえる。
主導権を握ると困難に陥るパスサッカー。それに何の意味があるのだろうか?私にはさっぱりわからない。
国内外問わず様々な試合に触れ、システムや選手個々の役割などチーム戦術に注目し分析を行う。ブログとは別に、「やる夫で学ぶフットボールの歴史」のスレ主でもある。