幼い体躯に老人の顔をもつ少女の登場は『AKIRA』を彷彿とさせる。 『THE EVENT/イベント』より (C)NBC UNIVERSAL, INC.
 陰謀うずまくスケール感たっぷりのド派手なアクションと、大友克洋の名作コミック『AKIRA』を彷彿とさせるSF要素満載のサスペンス。目下、話題沸騰の『THE EVENT/イベント』は、そんな海外ドラマの王道ともいうべき2大ジャンルが一度に楽しめる、まさに一石二鳥な超大作。かの『24 −TWENTY FOUR−』を手がけたプロデューサーと、エミー賞候補ともなった人気SFシリーズ『4400 未知からの生還者』の脚本家がタッグを組んだ、この冬いちばんの注目作だ。

 そもそもこの『THE EVENT/イベント』は、豪華客船で船旅を満喫していた、とある青年の身に突如降りかかった恋人の失踪という個人的な事件が、巧妙に仕組まれた陰謀によって、政府がひた隠しにしてきた“地球外生命体”をめぐる国家存亡の危機にまで発展する……という、なかなかにスペクタクルな展開が持ち味のサスペンス。

 だが、そんな緻密かつ複雑なストーリーが、過去と現在とを行き来しながらスピーディに描かれていくがゆえに、その見どころをひと言で説明するのは至難の業。こうしてチラッとあらすじを聞いただけでは、あまりの荒唐無稽さについつい首を傾げてしまいたくもなるに違いない。

 そこで今回は、本作に欠かせない、いくつかのキーワードを紐解きながら、ドラマの見どころをピックアップしてご紹介。「コレ観たかったけど、ホントに大丈夫?」といぶかしむ読者の背中をドーンと押してみることにしよう。

老人の容姿をした少女たち

 物語の中盤、主人公の青年ショーンは、自分たちが巻きこまれた巨大な陰謀が、60年以上にわたって政府が隠蔽してきた“地球外生命体”の存在と関係していることを知る。その道のりで出会うことになるのが、かの『AKIRA』を彷彿とさせる、幼い体躯に老人の顔をもつ異様な姿の少女たちだ。

 劇中では、薬物によって人為的に容姿を変えられたという設定で描かれる彼女たちだが、実際、これらは世界的にもすでに確認されている症例。一般的には、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群やウェルナー症候群などが比較的よく知られている。物語そのものが浮き世離れしているからこそ、こうした現実とのリンクは不可欠な要素。ただの絵空事では終わらせない説得力は、よくできたSFの必須条件だ。

かぎりなく人間に近い宇宙人

 そして、そんなスリリングな物語の重要なカギとなるのが、くだんの“地球外生命体”。政府によってアラスカの極秘施設に拘束されてきた謎の一団の存在だ。女性リーダー・ソフィアを中心とする彼らは、かぎりなく人間に近い容姿をもちつつ、DNAレベルで2%もの差異(チンパンジーとは1%)を有する“似て非なる”者たち。老化が異常に遅いうえに、ジャンボ旅客機を一瞬にしてテレポートさせるといった特殊能力までそなえる、正真正銘の宇宙人だ。

 だが、こうした宇宙人像は、1947年の「ロズウェル事件」以降、多数目撃されてきた大きな頭部と黒眼が特徴的な“グレイタイプ”や、ハリウッド映画にしばしば登場するいかにも凶悪そうな“エイリアンタイプ”と比べても、かなり斬新。単純な悪として描かれていないという意味でも、かのM78星雲から来た宇宙警備隊員に近く、われわれにとってはむしろ親しみやすい存在と言えそうだ(しかも、主要キャラには日本人を母にもつイアン・アンソニー・デイルもいるのでなおさら!)。

テレポートする特殊能力

 その彼らは物語の冒頭、フロリダにある大統領の別荘に特攻をかけたジャンボ旅客機を、3000km離れたアリゾナまで吹っ飛ばすという、驚異的な能力を見せつける。

 人間界でも、とある警備兵がフィリピンからメキシコに瞬間移動した16世紀以降、中央アメリカとヨーロッパを行き来した修道女や、インドからポルトガルに飛んだ船乗りなどなど、不可思議な体験談には事欠かないが、飛行機のような巨大すぎる物体を丸ごと移動させたなどという例はさすがにない。こうした超常現象を引き起こす彼らの存在理由こそが、このドラマの核心にして、最大のクライマックス。これらが明らかになっていくにつれて次第にスピードアップしていくストーリーには、誰もが「先が気になる」状態に陥ること受けあいだ。

人類に英知を授けたのは宇宙人!?

 想定外の不時着によって地球にとどまることを余儀なくされた宇宙人のなかには、アメリカ政府による幽閉をまぬがれた者も多数いる。そんな彼らのひとりは、自分たちの帰還をなんとか早めるために、文明の遅れた地球人たちの技術革新に協力。原子爆弾の製造を成功させた、かの「マンハッタン計画」にも深く関与していたという。

 もし、歴史上の“EVENT”の数々が、本作に登場する彼らのような“生命体”の手によってもたらされたものだとしたら、ナスカの地上絵やストーンヘンジをはじめとした“世界の七不思議”にまつわるトンデモな言説も、たちまち真実味を帯びてくる。こうした歴史の「もしも」をうまく活かした“遊び”もまた、このドラマの醍醐味と言えるだろう。

 事件の背後にひそむ黒幕がたくらむ陰謀に、ソフィアら宇宙人たちがどう関わってくるのか。期せずして巻きこまれたショーンたちの運命も気になる『THE EVENT/イベント』は、全8巻(全22話)で絶賛レンタル中。目の肥えたドラマ通をも唸らせた、驚愕の結末とは果たして――。

『THE EVENT/イベント』公式サイト