■ チェコ戦

キリンカップの3戦目。日本対ペルー(新潟)、チェコ対ペルー(松本)の試合が、ともに0対0の引き分けに終わったため、この試合で勝った方が優勝となる。チェコ代表とはジーコジャパン時代の2004年にアウェーで対戦し、1対0で日本が勝利を飾っている。

日本はペルー戦に続いて「3-4-3」。GK川島。DF吉田、今野、伊野波。MF遠藤、長谷部、内田、長友。FW本田圭、李忠成、岡崎。DF吉田、MF内田、MF長友、FW本田圭、FW李忠成がスタメン出場して、DF栗原、MF西、MF安田、FW関口、FW前田はベンチスタート。FW李忠成は日本代表として初スタメンとなった。

■ スコアレスドロー

横浜市の日産スタジアムで行われた試合は、前半から静かな展開となる。日本はペルー戦に続いて「3-4-3」で臨んできたが、チェコの守備も堅くてなかなかチャンスを作れない。前半はゴール前のフリーキックでは得点の可能性を感じさせたが、それ以外では、いい流れで崩すシーンもほとんどなくて、前半は0対0で折り返す。

後半も同じような流れとなるが、後半7分に日本がビッグチャンスを迎える。コーナーキックから、FW本田圭がサイドを崩してクロスを上げると、ファーサイドで受けたFW李忠成が左足のアウトサイドでシュート。これはうまくヒットしなかったが、ゴール前に飛んだボールをフリーのDF吉田がヘディングシュート。しかし、枠外でゴールならず。

日本は後半19分に、MF遠藤とDF伊野波を下げて、MF家長とDF槙野を投入。MF家長にボールが集まって、ここからいい縦パスが出てバイタルエリアを突く攻撃が増えてくる。すると、後半32分には、FW本田圭のクロスからファーサイドのFW岡崎がヘディングシュート。これはGKチェフがはじいて、こぼれ球をFW李忠成が詰めるが、相手DFとGKに防がれて思うようなシュートは打てず。

日本は、終盤になると、何度かいい位置でフリーキックを得るが、FW本田圭のシュートはうまくゴールマウスに飛ばずに、可能性のないシュートになってしまう。結局、試合は0対0で終了。今年のキリンカップは、3試合ともにスコアレスドローで、3チームの同時優勝となった。

■ 「3-4-3」は不発

FW本田圭、MF長友、MF内田、DF吉田ら海外組がスタメンに戻ってきて、またしても「3-4-3」にチャレンジしたザッケローニ監督だったが、またも消化不良の試合となった。ペルー戦と比べると、守備は機能していて、チェコにほとんどチャンスを作らせなかったが、日本も、流れの中では、あまりいい攻撃は見せられなかった。

アジアカップでは「4-2-3-1」を採用してタイトルを獲得しており、ザッケローニ監督も、「4-2-3-1」であれば、どんなチームでもある程度はできるという手ごたえを得ているのだろう。この段階になって、オプションの1つとして、「3-4-3」を持っておくのは悪くない。

W杯を終えて、新監督が決まるまで、時間がかかったことも関係して、これまで、ザッケローニ監督はいつもギリギリのスケジュールでチームを作ってきた。そのため、ベースを作るだけで精いっぱいで、いろいろなことを試す余裕がなかったので、キリンカップという、必ずしも、結果だけを求められる大会ではない試合でチャレンジしておくのは間違いではないのだが、今の段階では、攻守ともにメリットが少ないので、W杯のアジア予選で使うのは厳しいだろう。

■ 生きない両サイド?

3バックのとき、もっとも重要なのが、アウトサイドのプレーヤーで、このポジションの選手がどういう働きをするかで、チームが変わってくる。この試合は、右サイドにMF内田、左サイドにMF長友を起用したが、ともに良さを出せずに終わった。

Jリーグでは、今シーズン、広島、京都、岡山、富山の4チームが3バックを採用している。長い間、3バックに挑戦している広島は別として、他の3チームは、まだ3バックに着手して、1年も経過していない。そのため、試行錯誤の段階であるが、いずれのチームもアウトサイドの選手の人選に苦労している。このポジションにサイドバック系の選手を入れてしまうと、5バックに近い布陣になってしまうし、ボランチ系の選手を入れると、縦への推進力がなくなってしまうし、アタッカータイプを入れると、守備面で不安が出てくる。

よって、かなり難しいポジションであるが、チェコ戦のプレーを見る限り、MF内田も、MF長友も、迷いながらプレーしていて、攻撃で見せ場を作れなかった。縦に突破しようにも、「自分自身」と「前にいるウイング」でスペースを消しているので、生きるエリアがない。結果として、サイドは機能せず、攻撃が前の3人に集中してしまうのため、厚みもなくなってしまった。

■ 生きない両サイド?

現状では、「3-4-3」というシステムを、ザッケローニ監督がどのようなにとらえているのか、まだはっきりしないところがある。得点が欲しいときに使うのか、1点を守るときに使うのか、スタートから使うのか、イマイチ分からないので、何とも言いにくいところもある。

ただ、「4-2-3-1」でスタートし、メンバーを入れ替えて、試合の途中に「3-4-3」に変更して戦うことを想定しているのであれば仕方がないが、スタメンの段階から「3-4-3」を採用するのならば、MF内田、MF長友の両サイドが最適とは言えず、例えば、MF関口であったり、MF西であったり、もっとゴール前に絡める「非サイドバック系」の方が可能性を感じさせるし、DF槙野をサイドで起用する選択肢もある。

もちろん、「4-2-3-1」の場合、DF長友のスタメンは安泰であるが、「3-4-3」となると「絶対的な存在」ではなく、「3-4-3」のアウトサイドでプレーするとなると、今の段階では「普通の選手」になってしまう。これは、非常にもったいない話であり、今のメンバーで「3-4-3」を採用するのは得策ではないように感じてしまう。

■ FW本田圭佑は不発

ペルー戦はコンディションの問題もあって、後半からの登場となったFW本田圭佑は、この試合はスタメン出場。持ち味である高いキープ力から、いくつかのチャンスを演出したが、時間が経つにつれて、自由にポジションを取って、中に入ってくることが多くなった。

もちろん、90分間、ずっとサイドに張っている必要はないが、ウイングの選手がサイドにポジションを取って、スペースを広く取ることができるという点が「3-4-3」のメリットの1つであり、ウイングの選手が、中に入りすぎると「3-4-3」の意味がなくなってしまう。

中に入っていくのを禁止しているわけではないので、焦点は、ザッケローニ監督が、どこまで自由を与えているのかになるが、少なくとも、3月のチャリティーマッチのときは、もっと、FW本田圭が右サイドに張っていて、そこでキープしてチャンスを作っていて、「3-4-3」も、それなりには機能していた。中でプレーすることが悪いわけではないが、メリハリを付けないと、効果的ではない。最後は、とても「3-4-3」とは言えないフォーメーションで、中盤と前線がごちゃごちゃになった。

後半途中からは、FW本田圭が右サイドにいなくなったので、空いたエリアをMF内田が突ければ状況は変わってきただろうが、チームとして意図した動きではなかったので、MF内田がサイドを駆け上がるシーンもなく、結果として、日本の右サイドは機能停止した。FW本田圭をどのポジションで使えばいいのか?というのは、どの監督も苦労しているが、「3-4-3」のシステムで、この日のような感じでプレーするようだと、今後、使いづらくなってくる。

■ FW李忠成とDF槙野はまずまず

一方、初スタメンのMF李忠成は及第点と言える。FW前田がコンディション不良のため出場できなかったので、スタメンが回ってきたが、3トップの中央で、何度かタイミングのいいダイレクトパスを送り、「通ればチャンス」というシーンを作った。パスの精度は課題であるが、簡単にはたいて起点になろうとするプレーは、リズムを生み出す意味でも、悪くはなかった。

途中出場したDF槙野も悪くなかった。スタメンはDF伊野波に譲ったが、左サイドのストッパーでセンスを感じさせるプレーを見せた。持ち味であるゴール前に侵入するプレーはなかったが、広島でも同じようなポジションでプレーしていたので、違和感なくプレーできていた。今後に、可能性を感じさせるプレーだったといえる。

■ MF家長はボランチでプレー

DF槙野と同じタイミングでピッチに入ったMF家長はボランチでプレー。悪くはなかったが、前の方が混沌としていたので、攻め上がるスペースもなくて、何度かいいパスを送ったが、全体としてみると、可もなく、不可もなくというプレーだった。

今のような「3-4-3」の利点としては、最終ラインに3人のDFがいるので、ダブルボランチがサイドプレーヤーの裏のスペースのカバーを気にすることなくプレーできる点にある。ストッパーが攻撃に参加するようになると事情は変わってくるが、今のやり方では、ダブルボランチは攻撃に専念しやすく、MF家長がボランチでも、大きな穴にはならない。

MF家長というと、10代の頃はドリブラーとして名を馳せたが、大分やC大阪では「ドリブルの出来るパサー」として活躍した。とにかくキープ力があるのでボールを失わないし、いいタイミングで出てくる。「4-2-3-1」のダブルボランチとしては不安もあるが、「3-4-3」のダブルボランチであれば、MF家長もボランチとして計算できる。





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