試合 :キリンカップ
開催日:2011年6月1日
結果 :引き分け
スコア:「0−0」
得点者:無し

「問題はどこかというと、うちがボールを持っているとき、ポゼッションしているときに問題が顕著になったと思う。守備はまあまあの出来だったと思っているが、攻撃の際にサイドにスペースがあるのに、中へ中へ入ってしまったことが問題だったと思っている」

「現時点で3バックを行うのは、ややリスクを背負いすぎるかもしれないが、わたしの仕事としては、このチームの引き出しを増やすことだと思っている。今日もかなりの交代があったが、けがなどによりやむを得ずカードを切ったものだ。チェコ戦まで数日あるので、可能性があればまた「3−4−3」をやろうと思っている。ただ何度も言うが、欲しかった情報というものは、ある程度は手にすることができた」


「今日ももう少しうまくやれば、スペースがもっと見つかったと思うが、相手の中盤が5枚並んでピッチ中央で人が密集してしまった。サイドにスペースがあったという印象があったが、慣れていなかったのでそれができなかったようだ」

ペルー戦の「3−4−3」の状態というのは、「3−4−0−3」だったと思ってもらえれば分かりやすいと思うのですが、どうしてもスペースがあるのは「0」の部分なので、そこに向かってプレーする事が多くなっていましたよね。岡崎、関口、安田、西、全員がそういう感じでした。

重要なのは、その「0」の部分で起点を作っていた、という意味の「中へ中へ入ってしまった」、という事ではなく、サイドでボールを受けて、そこからの展開として、サイドにスペースがあったシーンでも、岡崎、関口、安田、西、という選手たちが、サイドを縦にではなく中へ仕掛けてしまっていた、という意味の「中へ中へ入ってしまった」、という事ですね。

そして、その原因が、トップ下の位置に誰もいなかったから、という事ですよね。やはり選手の意識としてはスペースがあるところへボールを運びたくなりますし、それは間違っていないと思います。従って、問題は、セントラルでの起点をどうするのか、という事ですよね。

ウイングが中へ入るのか、ボランチの1枚が上がるのか、1トップが下がってくるのか、それとも、明確にトップ下を置くのか、まずはそこをどうするのかを明確にする必要があると思います。そうすればこの問題は解決できるのではないかなと思います。


そういう意味では、慣れという事もあるとは思いますが、起用した選手やその配置、という事も大きかったように思います。但し、ザックは、「欲しかった情報というものは、ある程度は手にすることができた」、と言っていますので、次の時には何らかの修正があるのではないかなと思います。

しかし、もう1つの考え方として、本当に、オプションとしての「3−4−3」が必要なのか、というのもあるかなとは思います。攻撃的な布陣のオプションとしては、2トップにする、という事もあると思いますし、また、4バックを基本としていてもSBが攻撃的にプレーすれば3バックや2バックという事になりますから、あえて「3−4−3」を固定的な布陣としてオプションとする事に強い意味があるのかというのは、ちょっと疑問に思うところでもありますね。


「ほかのシステム同様に、「3−4−3」にも長所と短所がある。絶対的なシステムは存在しない。システムの問題ではなく、いかにそのシステムを理解し、活用するかだろう。例えばバルセロナはあのシステムだから勝っているのではなく、システムを最大限に理解して使うことで違いを見せている。バルセロナも最初からうまくいっていたわけではないので、われわれもこれから向上していかないといけないと思っている」

ザックの口からバルサという言葉が出ていたので、私もバルサを引き合いに出して話をすると、バルサも3バック(「3−4−3」)を試みていましたが、やはり上手くいかなかったですよね。そして、なぜバルサでも上手くいかなかったのか、というのは、ザックジャパンの場合と同じだったと思います。

つまり、3バックや2バックにならずに5バックになってしまう、という事と、もう1つには、2列目がいなくなってしまう、という事ですね。実際の試合になった時というのは、3バックでやる場合、5バックにならないようにするというのは結構難しくて、どうしてもウイングバックの選手は自分の裏のスペースを突かれる事を嫌がる意識が高くなってしまいますからね。

また、2列目がいなくなってしまうというのは、バルサの場合には、アンカーのブスケツが下がって3バックになるという方法を採用していましたが、そうするとイニエスタとシャビがボランチ的に3列目でプレーしなければならない事が多くなるので、そうすると2列目がいなくなってしまう、という事が起きていた、という事ですね。


しかし、バルサの場合にはメッシがトップ下のようにプレーしますし、また、そのメッシはスペシャルな選手なので、それでも得点を取る事はできていましたが、そうなってくると「3−4−3」と言うよりは、ほとんど「3−4−1−2」や「5−2−1−2」と変わらないので、「3−4−3」にして「4−3−3」よりも更に攻撃的に、という事は実現できていませんでした。

それどころか、アウベスも下がって、ペドロも下がって、前線にはビジャとメッシの2人しかいない、という「5−3−1−1」にもなってしまっていて、ザックジャパンでも、もしトップ下を置いた場合でも、これと同じ状態になってしまう可能性は高いかなとは思います。^
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そして、結局バルサの場合でも、「4−3−3」、「4−1−2−3」、バルサの場合には、「4−3−1−2(ワイド)」もしくは「4−1−3−2(ワイド)」、と表記した方が正しいと思いますが、要するに4バックのままで、片方のSBにプジョルやアビダルという守備的な選手を置いて、もう片方のSBにアウベスという攻撃的な選手を置き、それで3バックに近い形をとる、という方が完全に機能性としては高いので、もしザックジャパンでも3バックをやりたいのであれば、それに習う方が良いかなと個人的には思いますね。^
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「おっしゃる通り、5枚になるのはいい傾向ではない。うちのペナルティーエリアに来られた場合は、5枚になるのは仕方がないと思うし、あまり練習もできなかった。後ろが5枚になって、前線に3枚を残しているので、そうなると中盤は2人になって負けてしまう。もしくはFWをさらに下げる選択肢もあるが、わたしはそれはしたくない。違ったところでバランスを取らないといけないと思う」

「3バックについて強いこだわりがあるわけではなく、今後も代表チームで使い続けるということでもない。どこかの試合でこれを出せたり、ある状況でオプションとして持っていればいいということで試している。ただ、日本サッカー界はサイドアタッカーを輩出しているし、サイド攻撃が得意な選手が多いという印象を持っている」


あくまで3トップに拘る、FWを下げるという事をしたくない、という事であれば、やはり中盤をダイヤモンド型にするしかないかなと思いますが、それでもやはり3バックだと、どうしても中盤のサイドの選手はSB的に下がる事が多くなってしまうと思うので、それも不可とするのであれば、サイドをある程度捨てるか、ボランチのところにCB的な選手を置いて、その選手を下がらせ、サイドのCBをSB的にプレーさせるしかないかなと思います。

ただその最後の方法でも結局は5バック的になるという事なので、5バックにならずに3バックを常に保ったまま戦うというのは、かなり難しいかなと思いますね。チリ代表は南アフリカW杯で「3−3−3−1」をやっていましたが、やはり守備的になってしまっていましたし、バルサのようなチームでもそれは難しかったので、それを日本代表でやろうというのは、ちょっと無理があるかな、という気がします。

それから、「日本サッカー界はサイドアタッカーを輩出しているし、サイド攻撃が得意な選手が多いという印象を持っている」、という事についてなのですが、特別そういう事でもないと個人的には思っています。長友、内田、安田、他にも、宮市などはそうですが、しかし、岡崎、香川、本田、家長、長谷部、他にも、森本、カレン、などもそうですが、適正ポジションはサイドではないと思っています。

むしろ日本人選手は外よりも中に適性を持っている選手の方が多いと思っていて、しかし、欧州でプレーする時には、運動量の豊富さとか、欧州基準で見る体格的な部分とか、フィジカルの部分とか、守備への献身性であるとか、そういう事を総合的に考えた場合に、サイドで起用される事が多くなっていますが、日本人選手だけで集まった場合には、それはまた違ってくると思っています。

ここが、個人的にはアジアカップの頃から感じ始めていたのですが、ザックが持っている欧州のサッカー観が、選手起用という部分でマイナスに作用するのではないか、と、ちょっと懸念を感じてる部分でもあります。特に、岡崎、香川、吉田、この3人に対する適性判断として、少し違うのではないか、という事が個人的にはありますね。




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前編。WOWOW、ノンフィクションW、「王者の資質」、ジョゼ・モウリーニョ、という番組を観て思った事を少し。
長友は右SBとして先発フル出場。試合にも勝利しインテルがカップ戦優勝。日本人選手がまたもタイトル獲得。 【インテルvsパレルモ】