中国太平洋経済協力全国委員会事務局長の呉正竜氏が「日本がTPP参加に意欲的なのはなぜか」と題する論評を発表した。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。以下は同論評より。

 日本の菅直人首相は10月24日、全閣僚にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加についての調整を急ぐよう指示した。日本はこれまでに何度もTPP参加に意欲を示してきたが、実際の行動にはまだ出ていない。

菅首相は、11月に横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、日本がTPP参加を表明することを示唆した。日本がTPPに参加すれば、アジア太平洋自由貿易区の建設に大きな影響を与えるため、各方面からの注目を集めている。

 TPPの交渉は今年始まり、すでに3回の交渉が行われた。参加国は米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリで、次の交渉は12月上旬にニュージーランドで行われる。米国によると、TPPは「21世紀に向けた、高水準の自由貿易協定の締結」「参加国をすべてのアジア太平洋地域の国に拡大」を目的としている。

 日本のTPP参加意向には、多くの意図が含まれている。

 まず、日米同盟強化の姿勢を経済分野で具現する。TPPは米国がアジアに回帰し、アジア太平洋地域の自由貿易区の建設を再始動させ、APECを主導する上で一つの足がかりとなる。しかし、オーストラリアなど7カ国の市場規模はあまりに小さく、米国の雇用増加と輸出拡大の戦略目的を実現することはできない。米国は日本を引き入れ、雪だるま式にTPPを大きくし、最終的に中国を含むすべてのアジア太平洋諸国のTPPの潜在的な市場規模を大いに引き出すことを考えている。そのため、米国は日本のために力を尽くしている。日本はTPP参加に積極的に取り組み、米国の戦略目標の実現に一肌脱いでいる。

 次に、これは日本のアジア太平洋市場を開き、輸出を拡大し、経済成長を実現するための戦略でもある。日本は「失った20年」と世界金融危機の影響を経て、財政赤字の増加、負債の増加、デフレ、高齢化などの経済に関する難題が山積みになっている。TPPという「自由貿易の急行列車」に乗り込めば、日本企業の不利な競争地位を変え、工場の急速な海外移転の動きを転換し、経済の起死回生の道を切り開くことができる。

 最後に、現在は日本がTPPに参加するのに重要な時期である。これまでの3回の交渉では枠組み協定や、執行中の自由貿易協定との関係が主に話し合われ、農産品や繊維製品、労働者の保護、政府調達、知的財産権の保護など実質的な項目の話し合いはまだ行われていない。この時期に参加すれば、具体的な項目の話し合いに直接参加し、自国の利益を保護することができる。ところがこの時期を逃せば、新参者はすでにまとまった項目や案文に従うしかなく、選択の余地はなく、受け身になる。

 日本のTPP参加意向は交渉を複雑にするに違いない。交渉はこれまでの米国とほか7カ国に対するものではなく、米国と日本の駆け引きになるだろう。世界一と世界3位の経済国である両国の貿易の利益と要求には大きな差があり、交渉は複雑さを増すと考えられる。

 そのほか、日本がTPPに参加すれば、TPPの吸引力は大幅に増加するだろう。マレーシアがTPP参加を表明したほか、すでにタイ、フィリピン、カナダなども参加意向を示している。日本はドミノ効果を引き起こし、アジア太平洋諸国は参加を競うことになり、アジア太平洋のそのほかの国は関心を高め、対策を練る必要がある(編集担当:米原裕子)



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