昨シーズンの1月末にウエストハムからレアル・マドリーへ半年間の期限付きで移籍したジュリアン・フォベール(26)。完全移籍への意気込みは当然あったが、故障もたたってレアルでの出番はわずか2試合。所属クラブへと舞い戻り、気を取り直して今シーズンでの復活に臨んだ。

 その結果、第18節までで15試合に出場(うち先発14試合)。レギュラー定着の秘密は、開幕前からゾラ監督に右サイドバック志願を直談判したことにあった。24日にレキップ紙のインタビューで明かしている。

 これまでMFで多くプレーしてきたフォベールは、「自分がディフェンダーであることを自覚する必要があった。人々が僕について話すのを聞くと、僕がどのポジションなのか誰もわかっていないようだった。大体、育成のときはセンターバックだったしね」と語る。

 フォベールは、カンヌで育ちボルドーで開花というジダンがたどったのと同じ道を歩んだ。ボルドーでは、その器用さから、フォーメーションに応じて攻撃的、守備的両方の中盤を自在に務め、ときには右サイドバックも無難にこなした。レアルからもその万能ぶりが買われたのだろう。しかし本人は、「これまでオールラウンドであることがかえって仇になった。フランス代表でもそう」と自覚するに至った。

 フランス代表といえば、フォベールのデビューは華々しかった。2006年W杯後の最初の試合(親善試合、対ボスニア・ヘルツェゴビナ)で、引退したジダンの背番号10を受け継ぎ、途中出場で決勝ゴールをマーク。しかしなぜかその後、ドメネク監督からは2度と招集を受けていない。ウエストハムという移籍先が監督のお気に召さなかったようだ。

 そのウエストハム、今季は第18節終了時点で19位に沈んでいる。レギュラー定着は果たしたものの、チームがこの状態。本人も「ビッグ4以外だと、代表入りはむずかしいだろうね」と感じてはいるが、「でも(招集を)待ち続けるよ」とW杯出場の望みは捨てていない。

 さらにここへ来て、フォベールには“裏技”でW杯に出場する線も浮上してきた。本人が明かしたところでは、アルジェリアのサッカー協会から打診を受けたという。フランスとアルジェリアの二重国籍をもつ選手は多いが、フォベールは生粋のフランス人。ただしアルジェリア人の妻をもつ。

 すでにフランスのA代表で出場してしまっているフォベールだが、「アルジェリアの協会は、親善試合に出ただけなら問題ないと考えている。どうなるか見てみよう」と語っており、フランスを捨ててW杯出場の夢を叶えることも満更ではないと考えているようだ。