【最新ハイテク講座】なぜ、体の中の脂肪量がわかるのか?「体脂肪計」
最近はあらゆるところで、「メタボリック・シンドローム(心血管病の予備軍)」という言葉を耳にするようになった。メタボリック・シンドロームになると、脳卒中や心筋梗塞、糖尿病などを併発するリスクが高くなるため、社会的な問題にもなりつつある。
厚生労働省は健康保険組合に対し、メタボリック・シンドロームの予防対策(メタボリック対策)を2008年4月1日より義務付けている。メタボリック対策をしていない健保組合には、国の助成が出なくなり、一定期間内での減少率が基準以下の場合に「罰金」を課すといったペナルティも検討しているという。
個人にとってメタボリック対策に欠かせないアイテムといえば、体内の体脂肪率を測定できる「体脂肪計」だ。
ところで、この「体脂肪計」。レントゲンや核磁気共鳴画像法(MRI)を使用しないで、どうして体の中の脂肪がわかるのだろうか?
普段利用していながら、構造などよく知られていない「体脂肪計」のハイテク技術を見てみよう。
■体脂肪計が誕生するまで
体脂肪計は、どのようなアイテムなのだろうか。またどのような経緯で誕生したのだろうか。簡単ではあるが、わかりやすくまとめてみた。
●そもそも体脂肪率ってなに?
体脂肪率とは、体重1kgあたりに何kgの脂肪がついているのかを百分率で表したものだ。代表的な体脂肪としては、体内に含まれる脂のことで、皮膚の下にある「皮下脂肪」、内臓のまわりに蓄積される「内臓脂肪」、血液中の「中性脂肪」や「コレステロール」などがあげられる。
体脂肪は、脂っこい食事をしたり、不規則な生活を続けていると、体内に蓄積されやすくなる。日常の運動不足も体脂肪を増やす大きな要因となっている。
●体脂肪計が脂肪を測定できる理由
体脂肪計は、文字通りに体内に占める脂肪の割合(体脂肪率)を測定する道具だ。家庭向けの体脂肪計では、微弱な電流を体に流して体内の水分量の測定から体脂肪率を測定する「インピーダンス法」と呼ばれる測定法が用いられる。もう少し詳しく説明しよう。
人間の体は、血液など水分を多く含む組織は電気を通しやすいのに対し、脂肪は電気を通しにくい性質を持っている。体脂肪計は、体に電気を通したときの電気抵抗(インピーダンス)の大きさを計測し、体脂肪率を割り出している。
体脂肪計は、足ではかるタイプと手で握るタイプの2種類に大別できる。足ではかるタイプは、足で極板の上に乗り(または手で極板を持ち)、その極板に電流を流して人体のインピーダンスを求め、体脂肪率を測定する。
インピーダンスとは、交流回路における電圧と電流の比で、一般に複素数で表される。実部を「レジスタンス(抵抗成分)」、虚部を「リアクタンス」 と呼んでいる。言葉だけを聞くと難しく思えるかもしれないが、直流におけるオームの法則の電気抵抗に相当するものだ。
●世界初の体脂肪計
世界初の体脂肪計を開発したメーカーは、体重計などの計測器を製造するメーカーとして知られる株式会社タニタだ。同社はもともとパイプやシガレットケースなどの金属加工を得意とする製造会社で、自転車用のライトやライターなども製造していた会社だが、1959年に国産初の体重計を開発して以来、体重計を製造する大手企業へと成長した。
タニタは体重をはかるビジネスが成功をおさめたことから、健康をはかることに新たなビジネスを見出した。1990年に開設した「ベストウエイトセンター」では、肥満を解消するビジネスの研究を行っていた。その研究の一環が体脂肪を測定するというものだった。そして1992年、世界で初めて体脂肪計を開発されたわけだ。
体脂肪計の試作機は、両手足に電極を付けて体脂肪率を測定していたが、同社は体重計のメーカーであることから、体重計のように手軽に測定できる機器として体脂肪計に改良を加えて今日のような形となっている。
■体脂肪計の現状と未来
体脂肪計は、身近なハイテク機器なわけだが、その数値は本当に正確なのだろうか。また今後は、どのように進化していくのだろうか。疑問に思われる点をまとめてみた。
●体脂肪計の数値は正確か?
人間は複雑な構造をしているので、体内の電流の流れは一様ではない。よって、体脂肪計で計測した脂肪率は、必ずしも正しい数値であるとは限らない。とくに水分率や骨密度が標準的な人と大きく異なると、体脂肪計で測定した脂肪率と、本当の脂肪率との差が大きくってしまうのだ。
具体的な例をあげると、人間は子供の頃のほうが水分率が高いので、成長期の児童は体脂肪計での測定には向かない。さらに高年齢者や閉経以降の女性、妊婦、人工透析患者、スポーツ選手、むくみ症の人、骨粗鬆症の人、発熱中の人、激しい運動をした直後の人、極度の脱水症状の人などは、体脂肪計で正しく測定できないとされている。
●体脂肪計はより賢く
よく知られているように朝起きた直後は水分が一様に分布しているが、夕方になると、水分は足のほうに移動している。そのために初期の体脂肪計は、朝に測定した数値は実際よりもやや高め、逆に夕方はやや低めの数値を出したということもあったようだ。
各メーカーは、測定方法に独自の工夫を凝らしており、今日では測定誤差が少ない体脂肪計を提供している。一例をあげると、タニタは体の水分量と体に電流を通したときに発生する「リアクタンス」と呼ばれる抵抗に密接な関係があることを導き出し、1日の水分分布の変化できる体脂肪計を開発させた。
体脂肪率の進化は目覚ましく、最近では体重や体脂肪率だけでなく、筋肉量や骨量なども測定できる多機能な計測器「体組成計」も登場しはじめている。体重計の歴史に比べると登場間もない体組成計だが、昨今の健康ブームと相まって個人の健康状態を手軽にチェックできるアイテムとして注目を集めつつあるようだ。
参考:
・体脂肪計 | メタボリックシンドローム - ウィキペディア
・メタボリック・シンドローム - 舶来堂
・そこが知りたい家電の新技術 タニタの体重計が「健康をはかる」まで - 家電Watch
・厚生労働省 - 公共サイト
・株式会社タニタ - 企業サイト
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厚生労働省は健康保険組合に対し、メタボリック・シンドロームの予防対策(メタボリック対策)を2008年4月1日より義務付けている。メタボリック対策をしていない健保組合には、国の助成が出なくなり、一定期間内での減少率が基準以下の場合に「罰金」を課すといったペナルティも検討しているという。
ところで、この「体脂肪計」。レントゲンや核磁気共鳴画像法(MRI)を使用しないで、どうして体の中の脂肪がわかるのだろうか?
普段利用していながら、構造などよく知られていない「体脂肪計」のハイテク技術を見てみよう。
■体脂肪計が誕生するまで
体脂肪計は、どのようなアイテムなのだろうか。またどのような経緯で誕生したのだろうか。簡単ではあるが、わかりやすくまとめてみた。
●そもそも体脂肪率ってなに?
体脂肪率とは、体重1kgあたりに何kgの脂肪がついているのかを百分率で表したものだ。代表的な体脂肪としては、体内に含まれる脂のことで、皮膚の下にある「皮下脂肪」、内臓のまわりに蓄積される「内臓脂肪」、血液中の「中性脂肪」や「コレステロール」などがあげられる。
体脂肪は、脂っこい食事をしたり、不規則な生活を続けていると、体内に蓄積されやすくなる。日常の運動不足も体脂肪を増やす大きな要因となっている。
●体脂肪計が脂肪を測定できる理由
体脂肪計は、文字通りに体内に占める脂肪の割合(体脂肪率)を測定する道具だ。家庭向けの体脂肪計では、微弱な電流を体に流して体内の水分量の測定から体脂肪率を測定する「インピーダンス法」と呼ばれる測定法が用いられる。もう少し詳しく説明しよう。
人間の体は、血液など水分を多く含む組織は電気を通しやすいのに対し、脂肪は電気を通しにくい性質を持っている。体脂肪計は、体に電気を通したときの電気抵抗(インピーダンス)の大きさを計測し、体脂肪率を割り出している。
体脂肪計は、足ではかるタイプと手で握るタイプの2種類に大別できる。足ではかるタイプは、足で極板の上に乗り(または手で極板を持ち)、その極板に電流を流して人体のインピーダンスを求め、体脂肪率を測定する。
インピーダンスとは、交流回路における電圧と電流の比で、一般に複素数で表される。実部を「レジスタンス(抵抗成分)」、虚部を「リアクタンス」 と呼んでいる。言葉だけを聞くと難しく思えるかもしれないが、直流におけるオームの法則の電気抵抗に相当するものだ。
●世界初の体脂肪計
世界初の体脂肪計を開発したメーカーは、体重計などの計測器を製造するメーカーとして知られる株式会社タニタだ。同社はもともとパイプやシガレットケースなどの金属加工を得意とする製造会社で、自転車用のライトやライターなども製造していた会社だが、1959年に国産初の体重計を開発して以来、体重計を製造する大手企業へと成長した。
タニタは体重をはかるビジネスが成功をおさめたことから、健康をはかることに新たなビジネスを見出した。1990年に開設した「ベストウエイトセンター」では、肥満を解消するビジネスの研究を行っていた。その研究の一環が体脂肪を測定するというものだった。そして1992年、世界で初めて体脂肪計を開発されたわけだ。
体脂肪計の試作機は、両手足に電極を付けて体脂肪率を測定していたが、同社は体重計のメーカーであることから、体重計のように手軽に測定できる機器として体脂肪計に改良を加えて今日のような形となっている。
■体脂肪計の現状と未来
体脂肪計は、身近なハイテク機器なわけだが、その数値は本当に正確なのだろうか。また今後は、どのように進化していくのだろうか。疑問に思われる点をまとめてみた。
●体脂肪計の数値は正確か?
人間は複雑な構造をしているので、体内の電流の流れは一様ではない。よって、体脂肪計で計測した脂肪率は、必ずしも正しい数値であるとは限らない。とくに水分率や骨密度が標準的な人と大きく異なると、体脂肪計で測定した脂肪率と、本当の脂肪率との差が大きくってしまうのだ。
具体的な例をあげると、人間は子供の頃のほうが水分率が高いので、成長期の児童は体脂肪計での測定には向かない。さらに高年齢者や閉経以降の女性、妊婦、人工透析患者、スポーツ選手、むくみ症の人、骨粗鬆症の人、発熱中の人、激しい運動をした直後の人、極度の脱水症状の人などは、体脂肪計で正しく測定できないとされている。
●体脂肪計はより賢く
よく知られているように朝起きた直後は水分が一様に分布しているが、夕方になると、水分は足のほうに移動している。そのために初期の体脂肪計は、朝に測定した数値は実際よりもやや高め、逆に夕方はやや低めの数値を出したということもあったようだ。
各メーカーは、測定方法に独自の工夫を凝らしており、今日では測定誤差が少ない体脂肪計を提供している。一例をあげると、タニタは体の水分量と体に電流を通したときに発生する「リアクタンス」と呼ばれる抵抗に密接な関係があることを導き出し、1日の水分分布の変化できる体脂肪計を開発させた。
体脂肪率の進化は目覚ましく、最近では体重や体脂肪率だけでなく、筋肉量や骨量なども測定できる多機能な計測器「体組成計」も登場しはじめている。体重計の歴史に比べると登場間もない体組成計だが、昨今の健康ブームと相まって個人の健康状態を手軽にチェックできるアイテムとして注目を集めつつあるようだ。
参考:
・体脂肪計 | メタボリックシンドローム - ウィキペディア
・メタボリック・シンドローム - 舶来堂
・そこが知りたい家電の新技術 タニタの体重計が「健康をはかる」まで - 家電Watch
・厚生労働省 - 公共サイト
・株式会社タニタ - 企業サイト
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