【最新ハイテク講座】「マルチコア」時代に突入した次世代ゲームパソコンの進化
国内外を問わず家庭用ゲーム機の普及には目覚ましいものがあるが、3次元の仮想世界を舞台としたインタラクティブなオンラインゲームを楽しむとなると、家庭用ゲーム機はまだパソコン環境には及ばない。そんなオンラインゲームを快適に遊べるパソコンは「ゲームパソコン」と呼ばれるが、最近になってマルチコアを内蔵するマシンが増えてきている。
そこで今回は、ゲームパソコンで真価を発揮している「マルチコア」の魅力に迫ってみよう。
■CPUの性能とマルチコア化への道
最新のパソコンゲームは、高いリアリティと臨場感を表現するために高精細なグラフィックスを3次元で高速に表示することが要求されている。ゲームを十分に楽しみたいのであれば、おのずと処理能力が高いCPUとGPU※を搭載したゲームパソコンが必要となる。
※Graphics Processing Unitの略。CPUに代わって画像を処理するユニットの総称
まずは、CPUの性能がどこで決まるのか? CPUがシングルコアからマルチコアに移行していった理由をひもといてみよう。
●どこでわかる?CPUの性能
CPUはCentral Processing Unit(中央演算処理装置)の略称で、プログラムにより計算を行う装置だ。CPUの内部は計算を処理するCPUコア、一時的にデーターを保存する2次キャッシュメモリー、外部とのやり取りを行う制御装置などの各部から構成される。
CPUの処理能力は、CPUコアの数と動作クロック周波数、そして2キャッシュメモリーの3点に依存する。CPUコアについてはあとで詳しく解説するので、残りの2点について最初に説明しておこう。
動作クロック周波数は処理速度そのものだ。周波数の数値が高ければ高いほど、CPUは高速にタスクを処理できる。一方2次キャッシュメモリーはCPUコアで処理する(または処理した)データーを一時的に保存しておく機能を持っている。同じ動作クロック周波数を持つCPUであれば、キャッシュサイズが大きいCPUのほうが少ないものに比べて、高速にタスクを処理できる訳だ。
普通に考えれば、動作クロック周波数が高く、キャッシュサイズが大きいCPUがあれば高速に処理できる訳だが、思わぬ落とし穴があった。
●シングルコアからマルチコアへ
前述のようにCPUは、動作クロック周波数が高いほど、高速な処理が可能だ。ところが同じ構造のCPUで動作クロック周波数を高くすると処理能力は向上するが、発熱が増して安定動作が難しくなるうえに消費電力が増える。CPUを人間に例えるなら、100mを全力で疾走すれば体は熱くなるし、カロリーも消費するのとよく似ている。
さらにCPUの動作クロック周波数は技術的な問題から上限が存在し、新しい技術を確立しない限り上限を超えることはできない。キャッシュサイズについても同じことが当てはまる。CPUパッケージに収められる上限が決まってているのだ。さらに限られたCPUパッケージに大容量のキャッシュを搭載すると、CPU自体のコストがかさむことになる。
これらの課題を克服するために生み出されたのだが、新発想のマルチコアだ。
■マルチコアの魅力と課題
マルチコアのCPUは、シングルコアに比べて、どこが優れているのか? 課題はないのか? 具体的な例を挙げながらわかりやすく説明してみよう。
●マルチコアってなに?
マルチコアとは、ひとつのCPUパッケージに複数のCPUコアを内蔵する技術だ。スーパーコンピューターや大型コンピューターの世界では、マルチコアのアイデア自体は早くから使用されていた。1990年代には、マザーボード上に複数のCPUを搭載し、並列処理を実行できるシステムが組まれている。
現在、ゲームパソコンに代表される一般向けのパソコンに搭載するマルチコアのCPUには、2つのCPUコアを持つディアルコア、3つのCPUコアを持つトリプルコア、4つのCPUコアを持つクアッドコアの3種類がある。CPUコアの数が多いほど、潜在的な処理能力は高い。
●マルチコアCPUの凄い能力
一般向けのマルチコアCPUの中で、もっとも高性能なクアッドコアを例に、マルチコアCPUが持つ魅力について解説しよう。
クアッドコアCPUは、見掛けはひとつのCPUだが、演算処理においては4つのCPUとほぼ同等の能力を備えている。すなわち、タスクの並列処理においては、シングルコアのパソコン4台分に相当する。
パソコンのハードウェアについては、よく知らない人もいるかもしれないので、身近な例でもう少しわかりやすく説明しよう。前回の「一家に1台のスパコンを実現したPS3のCPUパワーの秘密」で説明したように、仕事(プロジェクト)をタスク、会社をCPU、人間をCPUコアと考える。
シングルコアのCPUでは、あるひとつの会社が仕事を1人でこなしている。いくら優秀な人でも、仕事の量が多ければ、それなりの時間がかかってしまう。
一方、クアッドコアのCPUは、会社がひとつであることは同じだが、仕事を4人で分担して処理する。前述するシングルコアに所属する社員に比べて処理能力が多少遅くても、仕事の量がおおければ、クアッドコアのCPUのほうがシングルコアよりも速く仕事を処理できる。
とくにRAWデーターの現像やフルハイビジョン映像の処理では、CPUコアの数が処理速度に大きく依存する。よって、グラフィックスの処理能力を重視するハイエンドなゲームパソコンでは、高機能なビデオカードとともに、高性能なCPUが要求される。ゲームパソコンがマルチコアを採用している点も、そこに理由がある。
■マルチコアが抱える課題と今後
もっとも大きな課題は、マルチコアに未対応のゲームがある点だ。未対応ゲームでは、処理能力は動作クロック周波数に大きく依存するため、動作クロック周波数が高いシングルコアのCPUのほうが快適にゲームを楽しめる。ただし、最近ではゲームメーカー側もマルチコアを意識しはじめ、インテルがゲーム開発者向けにツールを配布するなどマルチコア未対応のゲームは徐々に減りつつある。
マルチコアのCPUには若干の課題が残されているが、動作クロック周波数や発熱、消費電力問題など、シングルコアの時代からCPUが抱えているいくつもの問題を解決できるメリットがある。一般には、まだ流通していないが、インテルは「メニーコア」と呼ばれる10個以上のCPUコアを持つCPUの開発にも成功している。
メニューコアまではいかないものの、高速処理にマルチコアのCPUは欠かせない。今後も高性能なマルチコアを搭載したゲームパソコンは、続々と登場していくであろう。
参考
・マルチコア | CPU - ウィキペディア
・どうなるマルチコア時代のPCゲーム開発--インテルが開発者向けツールをリリース - CNET Japan
・第81回 メニーコアの使い道 - @IT
・日本AMD - 企業サイト
・インテル - 企業サイト
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そこで今回は、ゲームパソコンで真価を発揮している「マルチコア」の魅力に迫ってみよう。
最新のパソコンゲームは、高いリアリティと臨場感を表現するために高精細なグラフィックスを3次元で高速に表示することが要求されている。ゲームを十分に楽しみたいのであれば、おのずと処理能力が高いCPUとGPU※を搭載したゲームパソコンが必要となる。
※Graphics Processing Unitの略。CPUに代わって画像を処理するユニットの総称
まずは、CPUの性能がどこで決まるのか? CPUがシングルコアからマルチコアに移行していった理由をひもといてみよう。
●どこでわかる?CPUの性能
CPUはCentral Processing Unit(中央演算処理装置)の略称で、プログラムにより計算を行う装置だ。CPUの内部は計算を処理するCPUコア、一時的にデーターを保存する2次キャッシュメモリー、外部とのやり取りを行う制御装置などの各部から構成される。
CPUの処理能力は、CPUコアの数と動作クロック周波数、そして2キャッシュメモリーの3点に依存する。CPUコアについてはあとで詳しく解説するので、残りの2点について最初に説明しておこう。
動作クロック周波数は処理速度そのものだ。周波数の数値が高ければ高いほど、CPUは高速にタスクを処理できる。一方2次キャッシュメモリーはCPUコアで処理する(または処理した)データーを一時的に保存しておく機能を持っている。同じ動作クロック周波数を持つCPUであれば、キャッシュサイズが大きいCPUのほうが少ないものに比べて、高速にタスクを処理できる訳だ。
普通に考えれば、動作クロック周波数が高く、キャッシュサイズが大きいCPUがあれば高速に処理できる訳だが、思わぬ落とし穴があった。
●シングルコアからマルチコアへ
前述のようにCPUは、動作クロック周波数が高いほど、高速な処理が可能だ。ところが同じ構造のCPUで動作クロック周波数を高くすると処理能力は向上するが、発熱が増して安定動作が難しくなるうえに消費電力が増える。CPUを人間に例えるなら、100mを全力で疾走すれば体は熱くなるし、カロリーも消費するのとよく似ている。
さらにCPUの動作クロック周波数は技術的な問題から上限が存在し、新しい技術を確立しない限り上限を超えることはできない。キャッシュサイズについても同じことが当てはまる。CPUパッケージに収められる上限が決まってているのだ。さらに限られたCPUパッケージに大容量のキャッシュを搭載すると、CPU自体のコストがかさむことになる。
これらの課題を克服するために生み出されたのだが、新発想のマルチコアだ。
■マルチコアの魅力と課題
マルチコアのCPUは、シングルコアに比べて、どこが優れているのか? 課題はないのか? 具体的な例を挙げながらわかりやすく説明してみよう。
●マルチコアってなに?
マルチコアとは、ひとつのCPUパッケージに複数のCPUコアを内蔵する技術だ。スーパーコンピューターや大型コンピューターの世界では、マルチコアのアイデア自体は早くから使用されていた。1990年代には、マザーボード上に複数のCPUを搭載し、並列処理を実行できるシステムが組まれている。
現在、ゲームパソコンに代表される一般向けのパソコンに搭載するマルチコアのCPUには、2つのCPUコアを持つディアルコア、3つのCPUコアを持つトリプルコア、4つのCPUコアを持つクアッドコアの3種類がある。CPUコアの数が多いほど、潜在的な処理能力は高い。
●マルチコアCPUの凄い能力
一般向けのマルチコアCPUの中で、もっとも高性能なクアッドコアを例に、マルチコアCPUが持つ魅力について解説しよう。
クアッドコアCPUは、見掛けはひとつのCPUだが、演算処理においては4つのCPUとほぼ同等の能力を備えている。すなわち、タスクの並列処理においては、シングルコアのパソコン4台分に相当する。
パソコンのハードウェアについては、よく知らない人もいるかもしれないので、身近な例でもう少しわかりやすく説明しよう。前回の「一家に1台のスパコンを実現したPS3のCPUパワーの秘密」で説明したように、仕事(プロジェクト)をタスク、会社をCPU、人間をCPUコアと考える。
シングルコアのCPUでは、あるひとつの会社が仕事を1人でこなしている。いくら優秀な人でも、仕事の量が多ければ、それなりの時間がかかってしまう。
一方、クアッドコアのCPUは、会社がひとつであることは同じだが、仕事を4人で分担して処理する。前述するシングルコアに所属する社員に比べて処理能力が多少遅くても、仕事の量がおおければ、クアッドコアのCPUのほうがシングルコアよりも速く仕事を処理できる。
とくにRAWデーターの現像やフルハイビジョン映像の処理では、CPUコアの数が処理速度に大きく依存する。よって、グラフィックスの処理能力を重視するハイエンドなゲームパソコンでは、高機能なビデオカードとともに、高性能なCPUが要求される。ゲームパソコンがマルチコアを採用している点も、そこに理由がある。
■マルチコアが抱える課題と今後
もっとも大きな課題は、マルチコアに未対応のゲームがある点だ。未対応ゲームでは、処理能力は動作クロック周波数に大きく依存するため、動作クロック周波数が高いシングルコアのCPUのほうが快適にゲームを楽しめる。ただし、最近ではゲームメーカー側もマルチコアを意識しはじめ、インテルがゲーム開発者向けにツールを配布するなどマルチコア未対応のゲームは徐々に減りつつある。
マルチコアのCPUには若干の課題が残されているが、動作クロック周波数や発熱、消費電力問題など、シングルコアの時代からCPUが抱えているいくつもの問題を解決できるメリットがある。一般には、まだ流通していないが、インテルは「メニーコア」と呼ばれる10個以上のCPUコアを持つCPUの開発にも成功している。
メニューコアまではいかないものの、高速処理にマルチコアのCPUは欠かせない。今後も高性能なマルチコアを搭載したゲームパソコンは、続々と登場していくであろう。
参考
・マルチコア | CPU - ウィキペディア
・どうなるマルチコア時代のPCゲーム開発--インテルが開発者向けツールをリリース - CNET Japan
・第81回 メニーコアの使い道 - @IT
・日本AMD - 企業サイト
・インテル - 企業サイト
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