ゴルゴ13

【カオス通信】舘ひろしが挑む“あぶない『ゴルゴ13』”

2008年2月1日 10時0分

■『ゴルゴ13』（1983年・劇場アニメVer.）
監督は『あしたのジョー』などの名作を手がけた出﨑統さん。ゴルゴを演じた瑳川哲朗さんの渋い声はキャラクターのイメージにピッタリで文句なしです。主題歌が思いっきり80年代の歌謡ロックなのはどうかと思いますが、'83年という時代を考えれば、これも当時はアリだったのかも。ちなみに1983年は、飯島真理さん（※１）が坂本龍一プロデュースの1stアルバム『Rose』をリリースした年でもあります。
（※１）飯島真理：『超時空要塞マクロス』リン・ミンメイの声優として有名なミュージシャン。『Rose』は、YAMAHAシンセサイザーの伝説的名機「DX-7」の音色が効果的に使われたアルバムとしても有名。収録された楽曲はどれも素晴らしく、個人的にも超オススメの名盤です。

この劇場アニメVer.のストーリーはガチでハードボイルドなので、誰でも楽しめる娯楽作品にはほど遠い内容となっています。眼前に容赦なく非情な物語が展開されるので鬱な気分になりたくない人は観るべきではないでしょう。ただし、劇画的な雰囲気は確かにあるのでゴルゴファンなら必見ともいえます。アクションシーンは迫力があり、展開もスピーディーなのでラストまで退屈することはありません。

やたらとベッドシーンやヌードシーンが出てくるところも特徴です。客観的に考えて、あんなに濡れ場や裸が必要だとは思えないんですが、スタッフも劇場版のゴルゴなんだからエロ上等！　とばかりに暴走してしまったんでしょうか。単にエロ要素が多いというだけなら別に構わないんですが、非道いエピソードやグロシーンも少なくないので心情的にはＲ18という印象です。

『ゴルゴ13』を映画化する際のアプローチとしては、こういう手法もアリといえばアリなので気になった人は必ず一人で観てみてください。うかつにお友達や家族と一緒に観てしまうと確実に気まずくなるので、くれぐれもご注意を。

この作品はCGが使われた最初のアニメ作品としても知られていますが、CGシーンを現代の基準で観ると正直ショボイです。ただファミコンが発売された年に制作されたということを考えれば、当時としてはかなり頑張っていることは確か。分かる人には分かる!?

劇場アニメのパンフレット。ヘリコプターとビルは当時まだ珍しかったCGで描かれています。CG制作の直接経費は1秒50万円以上だったらしい。

■舘ひろしテレビアニメ版はどうなるか
上に挙げた３作品のほかに、OVA版の『ゴルゴ13～QUEEN BEE～』という作品もあります。これはクオリティ自体は高いのですが、賛否両論がかなり分かれる作品なのでここではスルーしておきます。内容の詳細は書くとネタバレになるので、気になる人は各自確認してみてください。

さて、ゴルゴ役の舘ひろしさんに関しては演技力にも定評がありますし、少なくとも私は結構期待しています。今回のキャスティングは、最近よくある「芸能人が声優に挑戦する」というものとは意味合いが違うはずですしね。劇場版は、実写・アニメ共に原作に近いイメージで作られてはいましたが、脚本が面白くなかったり、俳優のイメージが強烈過ぎたり、過剰にエロス＆バイオレンスだったりと、常に問題を抱えるものとなっていました。

『あぶない刑事』（1987年）のパンフレット。舘ひろしさんのグラサン姿は今見るとゴルゴっぽい雰囲気がある気がしないでもない……。

今回のTVアニメでは、ゴルゴというキャラクターを正しく掘り下げ、ドラマのあるストーリーと迫力のあるアクションで、もっと幅広い層にアピールしていただきたいものです。お子様向けに作る必要はありませんが、大人向けをやり過ぎてもよくありませんので、サジ加減は重要な気がしてます。とりあえず普段アニメと縁のない大人を夢中にさせるくらいの出来映えであって欲しいところ。原作の持つ魅力を真っ当に発揮させることができれば、先の見えないアニメ業界に『ゴルゴ13』が風穴を開けてくれるかも知れません……。

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