【カオス通信】腐女子コミックの乙女心
「腐女子」は男同士の恋愛を妄想してやまない女性(婦女子)達の俗称。広義ではオタク趣味の女性達を示す意味でも使われています。近年、彼女達に向けた商業作品はかなり増えてきましたが「腐女子そのもの」を取り上げたものは、未だ発展途上の感があります。今回はそういった腐女子ネタな漫画の中から、比較的読みやすい作品をいくつかご紹介したいと思います。
〜人気ブログの書籍化作品〜
本作は彼女が腐女子な日常を描いたブログが元ネタ。「801ちゃん」という呼び名は、彼女の「やおい(※1)」趣味と、京都・御園橋801商店街のマスコットキャラ「やおいちゃん」のふたつがかかったものです。801ちゃんのキャラは腐女子モード時=毛むくじゃらの妖怪、お出かけ時=短髪美少女という具合に描き分けられてますが、中身はどこまでも腐女子。ネタにされるだけあって終始妄想全開になっています。
作中で彼女は男同士のカップリングを妄想したり、美少女フィギュアに萌えたり、コミケで大量の同人誌を購入したりと大忙し。スーツ萌え属性もあるため、彼氏が夏服から衣替えでスーツになるのを見るや「スーツゥ、スーツや!! ええのう!! たまらんのう!!」と萌えまくり。同人誌仲間に彼氏を紹介する際は「これ!! うちの彼氏!! 超萌え!」「ヒヒヒ!! すごいや801ちゃん!!」と腐女子同士の会話がいきなり大炎上。彼氏がネタの同人誌を作るしか!と萌え上がる腐女子達を前に、彼氏本人は困惑しまくりといった始末。
作者(彼氏)もオタクを自称してますが、作中では良識ある社会人として描かれているので、特にイタい感じはありません(むしろ好人物に思えます)。本作はオタ知識必須のネタも多いのですが、注釈で用語解説してあるので初心者(?)でもそれなりに楽しめるかと。基本的なオタ知識を標準装備しているアキバ系なら読んで損はないでしょう。
ちなみに鉛筆タッチのゆる〜いテイストの4コマ作品なので、一般的な漫画単行本をイメージすると割高感があります(価格:1,050円)。これはあくまでブログ本と割り切って、購入の際は「きっちり製本された同人誌」を買うぐらいに考えた方がいいでしょう。腐女子の生態を理解するためのテキストとして買うのもいいかも知れません。
(※1)やおい:少年愛を描いた同人誌の内容が「ヤマなし、オチなし、イミなし」だったことから、略して「やおい」と呼ばれるようになった。アニパロでは『六神合体ゴッドマーズ』のマーズ(弟)×マーグ(兄)、『キャプテン翼』の日向小次郎×若島津健(通称:小次健)、『新世紀エヴァンゲリオン』渚カヲル×碇シンジ、『テニスの王子様』手塚国光×越前リョーマ(通称:塚リョー)などのカップリングが有名。
〜恋は苦手な妄想少女の青春〜
タイトルから想像できるように、オタクがネタとして直球で使われています。主人公・浅井留美(高1)は、BL(※2)妄想で頭が一杯のオタク少女。そんな彼女をクラスメイトの男子・阿部隆弘(非オタク)が好きになってしまうという、ある意味不幸な出来事から物語が始まります。どんなにアプローチしても、腐女子な浅井は阿部×千葉(阿部の親友・イケメン)のラブを妄想して悦に入るばかり。阿部君の純愛はなかなか浅井に届かずに……、といった学園ラブコメとして王道的な作りになってます。
引用されるネタは、BL、百合(※3)、アニメ、声優、コスプレ、同人誌といったアキバ系の要素がてんこ盛り。最初は読み切りで描かれた短編作品でしたが、いつの間にやら月刊コミックハイ!の連載作品に見事昇格。これも時代の要請だったのでしょう。同作品はエロ成分が多く、話も結構ドロドロしていた「紺条夏生(※4)」時代と比較すると、かなりギャグ面が強化されていて、明るいのびのびとした内容に仕上がってます。元々作者はコメディが向いていたのかも知れません。
この『妄想少女オタク系』の名は、一部では結構知られてはいますが、漫画の出来を考えればもっとメジャーになってしかるべきと思う次第。個人的には、去年超メジャーになった『デトロイト・メタル・シティ』よりも好きな作品なので、今後も地道な支援をしていきたいと思っております。余談ですが、2巻に出てくる柊先生激萌え。マックスファクトリー(※5)とかでフィギュア化してくれたら超買う!(妄言失礼)
(※2)BL:ボーイズ・ラブの略語。
(※3)百合:ガールズ・ラブの俗称。BLの反対語。
(※4)紺条夏生:「條」の字が「条」になっている作者の旧ペンネーム。代表作に『欲シガリーノ★ネダリーナ(双葉社)』がある。
(※5)美少女フィギュアやアクションフィギュアなどを製作・販売している模型メーカー。クオリティの高さには定評がある。
〜老眼鏡紳士に萌える〜
これは表紙を見ただけでは、腐女子的な臭いはほぼ感じられません(上級者は気付けるかも知れませんが)。確かに「紳士」「老眼鏡」に萌えるフェティッシュな感覚は描かれているのですが、作品の重点は登場人物の心理に置かれているので、普通に面白く読めてしまいます。
舞台はイタリア。物語は21才の主人公・ニコレッタ(女性)が、再婚するのに邪魔だと言って自分を捨てた母親に会いに行くところから始まります。訪ねた場所は、母親の再婚相手が経営する美味しいと評判のレストラン。そこでカメリエーレ長(※6)のクラウディオと出会い、心惹かれていく……というのが序盤のおおまかな流れ。ニコレッタは老眼鏡紳士のクラウディオを見て「色っぽい人だなぁ…」と目を細めちゃったりします(ちょい腐女)。
創作系同人出身というだけあって、絵・コマ割・ストーリーには作者独特のこだわりが感じられます。作者の腐女子な部分は漫画の中でうまく昇華されているので、アキバ系の知識がなくても問題なく読むことが可能です。どんな妄想も工夫次第で一般に通じる作品に仕上げることができる、ということを証明する好例だと言えるでしょう。ちなみに同作品で最も腐女子なのは、レストランの従業員を老眼鏡紳士だらけにしたニコレッタの母で確定。
(※6)カメリエーレ長:「カメリエーレ」はウェイターのイタリア語訳。よって、カメリエーレ長=ウェイター長=給仕長となる。要するにレストランのフロア責任者のこと。
■アキバ系カオス通信バックナンバー
・第10回「『どろろ』と『鉄コン筋クリート』」
・第9回「マニアック芸人の明日はどっちだ?」
・第8回「麻生外相のアニメ文化大使構想を考える」
・第7回「業務用カラオケ・勝手にアニソン満喫度調査」
・第6回「秋葉原でポストおでん缶を探してみる」
・第5回「美少女&ミリタリー妄想大作戦」
■独女通信 | ファンキー通信
レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。
Copyright 2007 livedoor. All rights reserved.
■『となりの801ちゃん』作:小島アジコ、発行:宙出版
〜人気ブログの書籍化作品〜
本作は彼女が腐女子な日常を描いたブログが元ネタ。「801ちゃん」という呼び名は、彼女の「やおい(※1)」趣味と、京都・御園橋801商店街のマスコットキャラ「やおいちゃん」のふたつがかかったものです。801ちゃんのキャラは腐女子モード時=毛むくじゃらの妖怪、お出かけ時=短髪美少女という具合に描き分けられてますが、中身はどこまでも腐女子。ネタにされるだけあって終始妄想全開になっています。
作者(彼氏)もオタクを自称してますが、作中では良識ある社会人として描かれているので、特にイタい感じはありません(むしろ好人物に思えます)。本作はオタ知識必須のネタも多いのですが、注釈で用語解説してあるので初心者(?)でもそれなりに楽しめるかと。基本的なオタ知識を標準装備しているアキバ系なら読んで損はないでしょう。
ちなみに鉛筆タッチのゆる〜いテイストの4コマ作品なので、一般的な漫画単行本をイメージすると割高感があります(価格:1,050円)。これはあくまでブログ本と割り切って、購入の際は「きっちり製本された同人誌」を買うぐらいに考えた方がいいでしょう。腐女子の生態を理解するためのテキストとして買うのもいいかも知れません。
(※1)やおい:少年愛を描いた同人誌の内容が「ヤマなし、オチなし、イミなし」だったことから、略して「やおい」と呼ばれるようになった。アニパロでは『六神合体ゴッドマーズ』のマーズ(弟)×マーグ(兄)、『キャプテン翼』の日向小次郎×若島津健(通称:小次健)、『新世紀エヴァンゲリオン』渚カヲル×碇シンジ、『テニスの王子様』手塚国光×越前リョーマ(通称:塚リョー)などのカップリングが有名。
801ちゃんの表と裏の姿をイラストで共演させたシンプルな表紙。 |
■『妄想少女オタク系』作:紺條夏生、発行:双葉社
〜恋は苦手な妄想少女の青春〜
タイトルから想像できるように、オタクがネタとして直球で使われています。主人公・浅井留美(高1)は、BL(※2)妄想で頭が一杯のオタク少女。そんな彼女をクラスメイトの男子・阿部隆弘(非オタク)が好きになってしまうという、ある意味不幸な出来事から物語が始まります。どんなにアプローチしても、腐女子な浅井は阿部×千葉(阿部の親友・イケメン)のラブを妄想して悦に入るばかり。阿部君の純愛はなかなか浅井に届かずに……、といった学園ラブコメとして王道的な作りになってます。
引用されるネタは、BL、百合(※3)、アニメ、声優、コスプレ、同人誌といったアキバ系の要素がてんこ盛り。最初は読み切りで描かれた短編作品でしたが、いつの間にやら月刊コミックハイ!の連載作品に見事昇格。これも時代の要請だったのでしょう。同作品はエロ成分が多く、話も結構ドロドロしていた「紺条夏生(※4)」時代と比較すると、かなりギャグ面が強化されていて、明るいのびのびとした内容に仕上がってます。元々作者はコメディが向いていたのかも知れません。
この『妄想少女オタク系』の名は、一部では結構知られてはいますが、漫画の出来を考えればもっとメジャーになってしかるべきと思う次第。個人的には、去年超メジャーになった『デトロイト・メタル・シティ』よりも好きな作品なので、今後も地道な支援をしていきたいと思っております。余談ですが、2巻に出てくる柊先生激萌え。マックスファクトリー(※5)とかでフィギュア化してくれたら超買う!(妄言失礼)
(※2)BL:ボーイズ・ラブの略語。
(※3)百合:ガールズ・ラブの俗称。BLの反対語。
(※4)紺条夏生:「條」の字が「条」になっている作者の旧ペンネーム。代表作に『欲シガリーノ★ネダリーナ(双葉社)』がある。
(※5)美少女フィギュアやアクションフィギュアなどを製作・販売している模型メーカー。クオリティの高さには定評がある。
浅井留美は腐女子な眼鏡っ娘。惚れる阿部っちの気持ちも分かる。 | 阿部っちの親友・千葉にベタ惚れの松井。超モテの美少女である。 |
■『リストランテ・パラディーゾ』作:オノ・ナツメ、発行:太田出版
〜老眼鏡紳士に萌える〜
これは表紙を見ただけでは、腐女子的な臭いはほぼ感じられません(上級者は気付けるかも知れませんが)。確かに「紳士」「老眼鏡」に萌えるフェティッシュな感覚は描かれているのですが、作品の重点は登場人物の心理に置かれているので、普通に面白く読めてしまいます。
舞台はイタリア。物語は21才の主人公・ニコレッタ(女性)が、再婚するのに邪魔だと言って自分を捨てた母親に会いに行くところから始まります。訪ねた場所は、母親の再婚相手が経営する美味しいと評判のレストラン。そこでカメリエーレ長(※6)のクラウディオと出会い、心惹かれていく……というのが序盤のおおまかな流れ。ニコレッタは老眼鏡紳士のクラウディオを見て「色っぽい人だなぁ…」と目を細めちゃったりします(ちょい腐女)。
創作系同人出身というだけあって、絵・コマ割・ストーリーには作者独特のこだわりが感じられます。作者の腐女子な部分は漫画の中でうまく昇華されているので、アキバ系の知識がなくても問題なく読むことが可能です。どんな妄想も工夫次第で一般に通じる作品に仕上げることができる、ということを証明する好例だと言えるでしょう。ちなみに同作品で最も腐女子なのは、レストランの従業員を老眼鏡紳士だらけにしたニコレッタの母で確定。
(※6)カメリエーレ長:「カメリエーレ」はウェイターのイタリア語訳。よって、カメリエーレ長=ウェイター長=給仕長となる。要するにレストランのフロア責任者のこと。
オサレな表紙。青山とか表参道あたりの書店が似合う風情がある。 | オビ装着バージョン。ハチクロの作者・羽海野チカ先生が号泣。 |
■アキバ系カオス通信バックナンバー
・第10回「『どろろ』と『鉄コン筋クリート』」
・第9回「マニアック芸人の明日はどっちだ?」
・第8回「麻生外相のアニメ文化大使構想を考える」
・第7回「業務用カラオケ・勝手にアニソン満喫度調査」
・第6回「秋葉原でポストおでん缶を探してみる」
・第5回「美少女&ミリタリー妄想大作戦」
■独女通信 | ファンキー通信
レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。
Copyright 2007 livedoor. All rights reserved.
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