去年の12月、角川書店×ガンダム金メダルキャンペーン芸人として起用された若井のぎごちない笑顔。

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ドラゴンボール、ドラえもん、ルパン三世などのメジャーなアニメ・漫画ネタはお笑いの世界でもよく見かけます。これはお笑い芸人の中にもアニメ・漫画好きが多いことを証明するものですが、これが「ガンダム」や「萌えアニメ」になったりすると話は違ってきます。扱うネタがマニアックになればなるほど客を選び、結果的にスベる危険性も大きくなります。しかし、ネタがわかる客にとってはむしろ大歓迎という世界が確実に存在しています。今回は多様化が唱えられる昨今、お笑いの世界にひっそりと生息するマニアック芸人の未来を考えてみます。

■ガンダム芸人編
●若井おさむ 〜「こんにちは、アムロ・レイです」〜
初代ガンダムの主人公アムロ・レイのモノマネが持ちネタのピン芸人(吉本興業所属)。COSPA製(※1)の連邦軍制服を着用し、初代ガンダムの名セリフ・名シーンを随所に散りばめたコントを披露する彼の芸は、長年にわたるガンダム啓蒙活動の成果の結実です。昨年後半頃からTVのバラエティ番組でちょくちょく見かけるようになったのですが、最近同じネタをTVで繰り返し披露してしまう状況が増えているのが気になります。

私を含むガンダムネタに反応する視聴者は、高確率でネタを録画しています。よって「自動車教習所」「タコ焼き屋」「ファミレス」などは脳内再生できるほどに何度も見ている可能性大なのです。彼にとって新ネタを考えることは最優先事項だけに、ネタを1人で考えるが大変ならば、ガンダム好きのコント作家と協力することも今後考えるべきでしょう。

彼はライブ&営業を中心に置いて、TVは控えめにした方が良い気がします。トーク&アドリブはどうやら苦手みたいですし。彼は30歳まで居酒屋を経営していながら突如お笑いを志した人生経験豊富な男ですから、対処方法も既に考えているとは思いますが……。遅咲き・狂い咲き・坊やじゃないの三拍子が揃った若井おさむが本気になれば、あと10年は余裕で戦えるっ… …(かもしれない)。

(※1)COSPA:コスプレ衣装やキャラクターグッズの制作・販売を行っている会社。

●土田晃之 〜種までチェックしている真正ガノタ(※2)〜
記憶に新しいのは、TV朝日バラエティ『アメトーーク!』での出来事。彼は同番組で行われたプレゼン大会(2006年7月放送)で「ガンダム芸人企画」をプレゼンし、ネット投票でダントツの1位を獲得。同年12月の企画放送時には、ガンダムを知らない制作スタッフの代わりに番組の完全プロデュースまでをも行い、収録を見学しに来ていたガンダム知識ほぼゼロのギャル達(茶髪度高め)を前にマニア魂全開のパフォーマンスを展開しました。

TVアニメを大胆にパロったオープニングから始まり、「ミノフスキー粒子」などの専門用語や「あえて言おうカスであると!」といったセリフも多用。その後もTVシリーズの紹介、ガンプラ話、ララァからの生電話、若井おさむのコントなど、内容は盛り沢山。一応、地上波の人気番組という状況に配慮して、ガンダムを知らない人でも楽しめる構成になっていたようですが、ネタがわかる私には客観的な判断は難しいので明言は避けておきます。ちなみにガノタ内での評判はあまり良くなかった模様。いろいろ制限がある中で放送実現に貢献したことは評価するべきだと思うのですが、マニアは厳しいですね。

土田晃之のガンダム愛を示すエピソードは他にもいろいろあり、例えば彼には愛日菜(あいな)という娘がいますが、この名は『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』のヒロイン、アイナ・サハリンが元ネタとなってます。また、何かと批判も多い『機動戦士ガンダムSEED』を評価している擁護派としても知られ、MSイグルー(ジオン視点の作品)などのOAVまで細かくチェックする姿勢は天晴れというしかありません。

この趣味は仕事にも活かされていて、「月刊ガンダムエース」でコラムの連載をしたり、通販番組でガンダム製品の紹介に駆り出されたり、NTT東日本の光ネットサービス内の情報番組「INSIDE ガンダム」に起用されたりしています。現在ガンダム芸人を知識・経験・芸暦などで総合的に評価した場合、ランキング1位の座は土田晃之で確定でしょう(若井おさむは芸暦が浅すぎるので却下)。彼はこのまま迷わずガンダム道を邁進すべきかと。ひたすらガンダム芸人・土田の野望実現に励むのが吉でしょう。

(※2)種:「ガンダムSEED」の俗称。ガノタ:「ガンダムオタク」の略称。

<補足>他にもガンダム好きの芸人には、有野晋哉(よゐこ) 、千原靖史(千原兄弟) 、品川祐(品川庄司)、田村淳(ロンドンブーツ1号2号)、井上聡(次長課長)、片桐仁(ラーメンズ)などが挙げられます。アニメ好きの芸人は大抵初代ガンダムは基本として押さえていると考えて問題ないようです。

去年の12月、角川書店×ガンダム金メダルキャンペーン芸人として起用された若井のぎごちない笑顔。公式ガンダム関連漫画の中でも最強に狂っている『妹ガンダム』のオビにも出撃! ジーク・ジオン!



■萌えアニメ芸人編
●国井咲也(アニメ会) 〜見かけは男、心は乙女の婦女子芸人〜
二次元キャラへの萌えを叫ぶ、異色お笑いユニット「アニメ会」の代表を務めるお笑い芸人(フリー)。彼は少女漫画『快感フレーズ』のキャラ「大河内咲也」に憧れ、自分の本名を「咲也」にしようと裁判所に改名届けを提出し、受理されたという武勇伝の持ち主。くまのぬいぐるみが大好きだったり、女装コスプレが趣味だったりと、脳内は乙女回路に支配されています(肉体的には男性)。ちなみに182cmの長身。

アニメ会の活動は単独ライブを始め、学園祭出演、各種イベント出演、書籍の執筆、雑誌への寄稿など多岐に渡っています。秋葉原界隈では有名ですが、一般にはあまり知られていないので、分類的はカルト芸人と呼んで差し支えないでしょう。最近は多忙になってきているようですが、ネタを受け取る側にアニメ・漫画・ゲーム等の知識を必要とする間口の狭いスタイルなので、真のブレイクへの道は険しいと言わざるを得ません。

ライブはひたすら脳内妄想の萌えを語って観客の共感を呼ぶというカタチが多いのですが、大きく羽ばたくためには、マニアックな内容を噛み砕いて芸に昇華させる技術を磨かなければいけないでしょう。以前私がライブで見たドリフ的コントはかなり面白かったので、これをもっと伸ばしていただきたいと思う次第です。

●三平×2(アニメ会) 〜やおいも愛せる同人誌中毒芸人〜
三平×2と書いて「みひらさんぺい」と読みます(大川興行所属)。漫才コンビ「ペイパービュウ」のツッコミ担当でもあり、西口プロレス所属のレスラーでもあります。レスラーとしては、あの長州小力と同じリングでヒールとして活躍中。同人誌をこよなく愛し、収集活動以外にも同人誌を制作してコミケにサークル参加したりもしています。

トークのキレは構成人員5人のアニメ会の中でもピカイチ。イベントの司会でもプロフェッショナルな仕事ぶりを発揮できるスキルを持っていますが、趣味を最優先するあまりに結果的にギャラの低い仕事が多くなり、自らを「ボランティア芸人」と自虐するなど、幸せに縁遠い芸能生活を送っています。彼はもっと売れてもいいはずですし、アニメネタ以外でも全然イケますので、特にTV関係者の方は一度キャスティングの検討をしてはいかがでしょうか。お調子者なところはありますが、結構使えると思います。

<補足>他メンバーは、サンキュータツオ(ドS芸人)、沖縄の比嘉(妄想芸人)、亀子のぶお(タイツコスプレ芸人)の3名。この5名に構成作家のみやじまこを加えるとアニメ会は計6名となる。

アニメ会制作の同人誌。表紙は名作アニメ『かみちゅ!』が元ネタ。定期的に開催されているイベント「アニメだった。」の5人全員ショット。本田透との共著。オタク生活の手引書としても良く出来ている名著。


TVで流せないネタで人気の鳥肌実や、国内より海外で評価の高い電撃ネットワークなど、芸人の生きる道も様々です。マニアック指向の芸人は、広く浅く有名になるか、狭くて深いマイナー道を突き進むかの二択しかないみたいですが、どれを選ぶかは本人の気持ちひとつ。ともあれ、できるだけ長期間頑張れる道を選んで欲しいと願う次第であります。

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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。

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