暖房時はオフにすれば燃費向上に繋がる

 いまのクルマのエアコンは、温度設定さえしておけば、あとはお任せというオートエアコンが主流だが、このオートエアコンでも「A/C」というボタンを押せば、エアコンのスイッチがオフになり、「送風」だけの状態になる。一年中、「送風」なんて使ったことはない、という人も多いだろうが、この「送風」モードの使い道はあるのか?

 もちろん「送風」にだって出番はある。それは冬の暖房時。

 エアコンは沸点の低い冷媒=フロンをエバポレーターに流して、冷媒が気化することで、周囲の空気を冷やし、空気が冷えると空気中の水分が結露するので、それを車外に排出させて、除湿もできるというシステム。

 日本のエアコンはとっても優秀なので、エバポレーター付近の空気はいったん3〜4度まで冷やされて、それをエンジンの冷却水の熱で設定温度に温め直して、室内に送り出している。

 これは夏でも冬でも同じなのだが、冬は温度を下げる必要がないので、エアコンのコンプレッサーを回さずに、冷却水の熱を利用したヒーターコアで空気を暖め、それを「送風」で車内に送り込めば、それで快適に過ごせるはず。

 エアコンをオンにしておくと、気化した冷媒を圧縮し液体状態に戻して循環させるために、コンプレッサーを回す必要がある。このコンプレッサーはエンジンの力で回しているので、エアコンをオンにすると、エンジンの負担が増えて、燃費が10%前後悪化する(HV車などの電動エアコンは除く)。したがって、冷気を必要としない冬場などは、エアコンをオフにして、「送風」だけの暖房にすれば、燃費が約10%も節約できるというわけ。

 しかも、エアコンがオフなら除湿機能も働かないので、喉や肌の乾燥を防ぐのにも有効だ。その反面、窓ガラスが湿気で曇ってくることは避けられないので、冬でも窓が曇り出したらエアコンをオンにして除湿しよう。

 冬場以外でも、エアコン内部のフィルターなどに結露した水分を乾かし、カビの発生を防止するために、クルマから降りる前に数分間「送風」モードを使ったり、春や秋のエアコンのオフシーズンにも、ときどき「送風」を使っておくと、エアコンの嫌なにおいが発生しづらくなるはずだ。

 もちろん、夏でも冬でも、エアコンは嫌い。エアコンは苦手という人もいるだろうから、そういう人はエアコンをオフにして、「送風」だけで過ごしてみてはどうだろうか。