【日本未上陸】19世紀の禁断の愛...近世初のレズビアンが綴った暗号日記をもとにした『Gentleman Jack』

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のどかな19世紀イギリスで、とある女性実業家が近隣の婦人と運命の恋に落ちる――。『Gentleman Jack』は、秘密の暗号で書かれた当時の実際の日記をベースにした物語。米HBOで4月22日から放送が始まった。

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凛として自分を貫く女性事業主

イングランド北部の裕福な地主、アン・リスター(サランヌ・ジョーンズ『女医フォスター』)。知的な彼女は工業の事業を進めるほか、19世紀にして海外旅行などにもたびたび出かけるなど、極めて活動的な人物。彼女のこだわりは真っ黒なドレスで、たとえ結婚式であろうといつでも黒の装束を身にまとう。物事を好きなように進め、周囲の目など気にせず、そればかりか常に周りを見下すのがアンのスタイルだ。

かつての恋人はあまりに頻繁に旅行を繰り返すアンに、「スマートさを認めてくれず、奇抜さだけをあげつらう人々から逃げているだけではないか」と疑問を投げかけたことがあった。リスターは「私は平凡さから逃げているだけ」と歯牙にもかけない。

そんな彼女は、女性を恋愛対象としていることを公言。近所に住むアン・ウォーカー(ソフィー・ランドル『ピーキー・ブラインダーズ』)に色仕掛けで迫る。実はリスターは当初、敷地内で石炭を採掘しようと考え、その資金調達を狙ってウォーカーに近づいていた。しかし二人は互いをかけがえのないパートナーと知り、真実の恋に落ちていく。

暗号で綴られた秘密の日記

19世紀の実在の地主であるリスターの生涯に迫る本シリーズ。ストーリーのベースとなっているのは、彼女が書き遺した400万語にも及ぶ日記だ。ほとんどの内容は暗号で綴られている、とHollywood Reporter誌は紹介。その内容を解読することで、事業や旅行の詳細だけでなく、恋の始まりから理想の愛への発展までが明らかになった。リスターがこうした秘密を劇中で明かす際は、はっきりとカメラを見据えるようになっている。カメラと偶然目が合ったような、さり気ない違和感を覚えさせる瞬間に始まり、徐々に視聴者の方へはっきりと向くようになるという凝った演出だ。

リスターは「近世初のレズビアン」とも形容される人物。もちろんそれ以前に同性愛者がいなかった訳ではないが、女性との恋愛の記録をこれほどまで詳細に日記に残したのは初めてのことであろう、とVulture誌は述べている。男性とのセックスに嫌悪感を覚え、女性との恋愛を自分の本質の一部として受け入れていたリスター。日記を紐解けば、互いを慈しみ合ったウォーカーとの日々のほか、それ以前の女性遍歴や寝室での行為までが率直に綴られている。実際の日記を下地にした興味深いシリーズだ。

主演サランヌ・ジョーンズは表情で語る

主演は『女医フォスター』のサランヌ。リスターと同じく寸暇を惜しんで日々目標に近づこうと努力するサランヌだからこそ、役に命を吹き込むことができた。このキャスティングは製作の勝利、とHollywood Reporter誌。周囲が期待するような女性像の型にはまらず、信じたように生きるリスターの人生を再現する。

リスターの役どころについてVulture誌は、自己主張が強く物怖じしない人物だと表現。意志が固く激昂しやすいが、内面の脆さも併せ持つという難しいキャラクターだ。サランヌの名演は、愛する人の結婚式のシーンに象徴される。カメラは式に華やぐ教会を写さずに、泣く泣く参列したリスターの表情を静かに捉え続ける。表情だけで傷心が伝わる名シーンとなっている。

強さと儚さの『Gentleman Jack』は米HBOで放送中。『女医フォスター』に興味のある方は、Huluで日本からも視聴可能。(海外ドラマNAVI)

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サランヌ・ジョーンズ
(C)Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com