あとを絶たない陰湿ないじめとそれに対する学校・教育委員会の酷い対応ですが、またも同様の事件が発覚しました。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵でこれまで数々のいじめ問題を解決に導いてきた阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、当事件の詳細や教育局長が口にした嘘を記すとともに、加害者がまったく反省していない証拠となるSNSへの投稿画像を掲載しています。

つくば市お葬式いじめ事件

もともといじめの対象であったAさんが体調不良で学校を休んでいた時に事件は起きた。

Aさんが休みだと知ったいじめ加害者3人が、「Aは昨日死んだんだよ」と言い始め、Aさんの何も置かれていない机に花瓶を置くふりをした。そして、悲しむふりをしたり、拝むふりをした。

Aさんが登校すると、お葬式ごっこをした1人が、Aさんにどういうお葬式をしたかを詳しく解説した。「あなたは昨日死んだんだよ」。葬式ごっこをしたいじめの加害者は、Aさんにそう言った。Aさんが苦しそうにする様子をみて、楽しそうに続きを話した。

「あなたは昨日死んだんだよ」

これについて、いじめ加害者らは、よくそういうように休んだ子をについて言っていたと証言している。しかし、その度に葬式ごっこをして、当人に「あなたは昨日死んだ」と告げたであろうか。そのような事実はないのであり、Aさんにだけこうした行為を行い、苦しそうな様子を見て、ただ単に楽しんだのである。

実はこの日、起きたのはこれだけではない。

この日、Aさんは持ち物がなくなっていることに気がついた。美術の作品などを入れる美術バックがなくなっていたのだ。その中には、鑑賞会に出品した自分の作品が先生から返却されていて、その作品がバックの中に入っていた。

Aさんはバックを探した。美術バックは、自分が使っている隣のロッカーから発見された。Aさんは、中身を確認せずに、バックがあったことで安堵し、自分のロッカーへ戻した。

この日以来、美術バックは特に使うこともなかったので、3月の下旬に持ち帰るまで確認することはなかった。

3月バックを持ち帰ってから、事態はさらに悪化する。美術の鑑賞会で出店したAさんの作品には、お葬式いじめとつながる第2のいじめが行われていた。

Aさんの作品には署名がある。その自分の名前の前に「故」と書かれていたのだ。

「故 ○○××(被害者の個人情報のため氏名は記載しません)」

まさに、いじめ加害者による被害者へ明確に「死ね」というメッセージが送られていたのだ。

「死ね」「消えてくれ」「あなたの居場所はない」。自分が苦しむ様子を楽しんでいるいじめ加害者、そして、機能しない学校の対応には、絶望感や喪失感、苦しいという思いを通り過ぎた捉えようのない感情があったであろう。

つくば市教育局による調査

つくば市教育局は同局内で調査委員会を立ち上げ、この「お葬式いじめ」についてを調査している。その上で、上記の「お葬式いじめ」と「故と名前に書いたいじめ」をいじめとして認定している。そこまでは良い。昨今、いじめ行為自体を認めつつも加害者証言を尊重していじめが無かったことにする学校などが多い中、いじめ認定をするところは評価に値する。

しかし、この報告書につけた別紙資料は、何がしたいのか目を疑わざるを得ないものであった。

別紙資料では、「故」事件については、誰が書いたかわからずという結論となっているが、関係生徒らの証言として、発覚した平成29年3月の前、鑑賞会があった平成28年12月に、Aさんが友人に「もう消したけど、故と自分の名前の前に書いた」との証言が記載されている。

しかし、この作品は教員に提出しているので、「故」と書いてあれば、当然に教員は気がつくに違いない。また、Aさんにはこうした会話は記憶にないのだ。

つまり、Aさんが自ら書いたのではないか?と疑いの目を向けつつも、様々な証言から誰がやったか示す確証は得られなかったけど、被害者が辛いと言っているようだから、いじめとして認定はとりあえずしておこうということなのだ。

ただ、これを生徒が発言したとは到底思えないのだ。

調査委員会の報告書では、この部分は黒塗りになっていて誰の発言かは不明となっているが、生徒らはこうした作品がどのような形で扱われるかを知っている。

つまり、結果的には教員から手渡しで返却されるのだから、「故」が署名の前にあれば、その段階で問題になっているのであり、証言自体が不自然だとなってしまうのだ。弁解するならば、もっとマシな嘘をつくだろう。

一般的にはこうした不自然な構成が正規の調査報告書に記載され、これが指摘された場合、一次資料から調べ直すものだが、そのような痕跡もない。

日常的にあったAさんへのいじめ

Aさんは女子テニス部内(部活内)でもいじめの対象となっていた。「下手くそ」「居ない方がいい」というような発言は日常茶飯事であり、孤立させるように無視したり、後輩らの前で「ディス」ってみたり(暴言を吐く)などをされていた。体調不良で部活を休めば、「ズル休み」だと噂を立てられていた。

お葬式いじめをした加害者の中には、Aさんに「顔面崩壊」だとあからさまな暴言を吐き続ける者もいた。加害者はこれを面白い・オイシイと表現していたとの情報もあり、調査委員会の報告書では、「顔面崩壊」と言ったらAさんが、「え?」という顔をして困惑したという描写もある。

お笑い番組を見て、芸人さんがオイシイと思う(ウケを狙える)のとは、別物であろう。芸人さんは職業でありプロであるから「イジリ」という言葉に変えたのだが、一般人はウケるのが仕事ではないし、プロでもない。

その場は取り繕って平気なフリをしても、心に傷を負うことには変わりはないだろう。

しかも、中学生の女の子である、見た目は自ずと気にする年齢であろう。反応を見て楽しもうと加害者は軽い気持ちで思ったのかもしれないが、言葉の重さ、人を傷つけるという感覚は薄い上、この問題の加害者らは、人の痛みを理解しようとしていない。

これは加害者の一人が、Aさんに向けて書いた投稿の1つである。

こうした投稿は随所に見ることができるが、調査委員会の報告書や調査対象ではなかった。

表面的な反省したフリを評価し、その後に起きるいじめ発覚についての報復についての配慮も学校はしていなかった。

学校対応の甘さ

Aさんが受け続けた日常的ないじめは、教員の前でも堂々と行われていた。事実被害の告白の中には、部活動の中で加害者がAさんに向けて暴言を吐いたことが記録されており、それについての行為は、加害者も認めているが、指導教員はこれについてちょっとした笑いが起きてほのぼのとした雰囲気であろう内容をつくば市教育局に回答している。

しかし、Aさんによれば、指導教員は面倒臭そうにしていたのであり、フォローもしなければ、加害生徒へ注意をするわけでもなかったのだ。

つまりは、いじめ行為は放置されていたのだ。問題になれば、慌てて取り繕い口裏を合わせに過ぎない。

こうした姿勢はつくば市教育局全体に広がっているかもしれない。

平成29年12月5日の市議会において、このお葬式いじめ問題の渦中にある中、「いじめ重大事態についての質問」に対し、当時の教育局長は「いじめによる不登校は現在おりません」と回答した。

Aさんが不登校となっていたにも関わらず、教育局長ともあろう人物が、公式な発言としてしたものである。

不誠実な詭弁

この教育局長の発言は、結果としてつくば市長が被害側に詫び状を出すということになっているが、そこには教育局長が「いじめによる不登校は現在おりません」と言った現在は、昨年度のことであり、事実に誤解があったとしている。

現在は今であり、学期で言えば、今期のことを指す。

例えば、文科省への重大事態の認知数は集計などの関係から前年度のものとなるが、その場合は「現在」と表現するのは日本語として誤りであるから、教育局長は自分の教育行政下において「いじめなどは発生しないのだ」とでも言いたかったに違いないと思えるし、議会発言に一般市民が気付くはずもないとタカをくくっていたように思える。

その言い訳は詭弁としか言いようがない。謝罪すらしっかりできない不誠実対応を恥ずかしげもなくやってのけたのである。

最後に

いじめの中には「死」を連想させるものも多くある。現実味がない「死」を様々な影響から簡単に口にしてしまうのは、子どもの性なのかもしれない。

しかし、直接的に「死」をまるで強要するかのようないじめは、もはやいじめの範疇も超えていると言える。本件は少なからずいじめの認定は出ているが、その細部については杜撰そのものであり、否定しきれない状況に致し方なく、いじめを認定したきらいがある。

さらに付け加えれば、こうしたいじめ被害について、被害側は救済措置を受けておらず、いじめに対する指導がしっかり行われたという記録もない。ほとんどは、放置であり、教育局は、学校は、やることはやりましたというような無効果の行為がパフォーマンスであったと評価できる。

だからこそ、加害者は何の反省もしていない。これには根拠がある。写真として示す下記のものは、実際に加害者がSNSのステイタスに書き込んだ記録である。

不登校に至るような酷いいじめは発生していませんと言いたいのであれば、予防教育からどうしても起きてしまういじめについての対応と解消まで、詭弁で取り繕うことなく、正直に誠実な対応をすべきであろう。

そうでなければ、上っ面の指導では、その効果はない。加害者は何もなかったかのように学校に通い青春を謳歌し、被害者は苦しみ続け、救済の道もなく、本来あったはずの楽しい思い出や学びを失うのだ。

そして。

もはやAさんの貴重な時間は戻ることはないのだから、せめて今後のつくば市のいじめ対策のためにも、再調査を行い、どこに問題があったのか再検証することが望ましい。

編集後記

常々思いますが、学校の調査も教育委員会や第三者委員会の調査も慎重に行うにしても遅過ぎます。この件では2ヶ月で調査をしたとありますが、事実は全く異なります。

そして、調査期間においては、暫定措置もないままであり、被害者側が安全確保のために学校に通えない状況になったのです。遅さは、被害者の教室復帰が望めないほど深刻な不登校になってしまいます。それは、教育の機会損失を助長してしまう結果を招くだけではなく、貴重な時間、本来はあったはずの楽しい思い出なども全てがないものになってしまうのです。

そして、Aさんは聞くところによれば卒業アルバムに写真がないとのことでした。なぜ、そこまで学校はするのか、私には理解できません。

つくば市が詭弁ではなく、被害側にしっかり向き合い、誠実な対応を行動として示すことを、あまり期待はしていませんが…、期待します。

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image by: Flickr

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