苦労や災難が続けて舞い込んできても、「自分は運が良い」と思い続けられる人は少ないのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』はダイソー創業者の矢野博丈氏がセブン&アイホールディングス名誉顧問の鈴木敏文氏との対談で、「運の半分は自分で作るものだ」という人生訓を、自らの経験を交え語っています。

「運」の半分は自分でつくるもの

100円ショップの先駆けにして、業界トップの規模を誇る「ザ・ダイソー」。100円という驚きの価格設定から、いずれはつぶれるだろうと囁かれながらも、今日も隆盛を極めています。

その秘訣を、創業者の矢野博丈さんは「運」だとおっしゃっていますが、そこには独自の考え方がおありのようです。

気韻生動 鈴木敏文(セブン&アイホールディングス名誉顧問) × 矢野博丈(大創産業会長)

鈴木 「売値が100円って決まっているにも拘らず、原価は上がっていく一方でしょう。その中でよくやってきたなぁと」

矢野 「おっしゃる通り、原価はどんどん上がっていくんですよね。当時から、いずれ原価が100円を超えて潰れるという確信を持っていました。第二次石油ショックの時に原価が一気に上がって、同業の仲間は皆、辞めたんですよ。『ダイソーも近いうちに潰れるぞ』ってよく言われていました。で、とても100円じゃやっていけなくなって、ある日、120円均一に値上げしたことがあるんです。ところが、3つくらいしか売れなくて、もう昼から100円に戻しましたけどね(笑)」

鈴木 「その状況をどう乗り切っていったの?」

矢野 「結局は、運です。中国というものすごく低コストの工場地帯ができましたから。しかも、早過ぎもせず遅過ぎもせず、ちょうどいい時機に」

鈴木 「なるほど。いくら努力をしても、やっぱり何事も運が向かなかったらどうにもならないからね」

矢野 「僕が毎年、新入社員に言うのは『人生は運だ』と。で、運というのは半分は持って生まれてくるけれども、あとの半分は自分でつくるものだと。だから、学校の勉強はいまからせんでもいいけど、人に好かれるにはどうしたらいいかとか、人を喜ばせるにはどうしたらいいか、そういう心の勉強はしないといけんよと言うんです」

鈴木 「心に響く話です」

矢野 「僕自身、20代の頃は運命の女神を憎み続けていましたが、ある結婚式に参列した時に、京都のお坊さんがこんな話をしていたんです。

『仏縁に導かれたお二人だから、きっといい夫婦になられるでしょう。けれども、好むと好まざるとに拘らず、これからお二人には艱難辛苦が押し寄せてきます。それを乗り越えたら、きっといい人生が送れるでしょう。人生にはいろんなことが起こりますけど、無駄は一つもありませんよ』

と。その言葉を聞いた時は、『何を言うんだ。俺の人生、無駄しかないじゃないか』と思って腹が立ったんですけど、ふと考えてみると、仏さんがこいつは見どころがあると思って、人の何倍も艱難辛苦を与えてくれたんじゃないか。運が悪いと思い続けてきたけど、もしかすると運がいいんじゃないか。そう思うようになってから、少しずつ心のモヤモヤが晴れて、いいことが起きるようになりました」

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