「刃物のようなものを所持した中学生風の男が...」 23時に鳴り響いた防災無線、和光市緊迫の一夜
2018年10月18日、埼玉県和光市内のマンションで老夫婦が殺傷された事件で、行方不明になっていた中学生の孫の身柄が19日10時ごろに川越市で確保された。
和光市や朝霞市内では18日深夜から19日午前にかけて、「刃物のようなものを所持した中学生風の男」に注意を促す防災無線が流れ、緊迫した空気が漂った。市内在住で防災無線を聞いていた記者は19日、和光市役所を取材した。
和光市・朝霞市で深夜に「防災無線」
埼玉県和光市の公式サイトによれば、最初の防災無線が流れたのは23時ごろ。記者は和光市内の自宅にいたが、「外が騒がしいな」「何かの演説かな」くらいにしか思わず、しばらく聞き流していた。しかし音声はやけに長く、気になって玄関を開けてみると、「これで防災無線を終了します」との音声が流れ、放送は終了した。
慌てて「和光市」でツイッターを検索すると、最初に朝霞市のツイッターアカウントが目に留まった。
「本日、和光市本町地内で刃物のようなものを所持した、身長165センチ程、黒髪短髪、中学生風の男が徘徊しているとの情報提供がありました。戸締りを確認し、不審者を見かけたら朝霞警察署へ連絡してください」(18日23時ごろ、朝霞市の防災無線)
和光市の公式サイトを確認すると、和光市で流れていたのとほぼ同じ内容のようだ。近隣住民が刃物を持った「中学生っぽい男」を見たということか...? 事件自体はまだ大きく報じられておらず、この時点では詳しい状況はわからなかったが、とりあえず緊急事態であることは理解できた。和光市より数分情報が速かった朝霞市のツイッターをフォローし、すぐに戸締りを確認した。事のてん末が明らかになったのは翌朝だった。
「昨日、午後7時30分頃、和光市本町地内で男性の遺体と負傷した女性が発見されました。現場から刃物のようなものを所持した165センチ程、黒髪、中学生風の男性が逃走していると思われます」(19日7時50分ごろ、朝霞市の防災無線)
2度目の防災無線も聞き逃してしまった記者だが、朝霞市のツイッターで状況をすぐに確認できた。ツイートの内容だけでは無差別殺人の可能性も考えられたが、このころには事件の詳細はすでに各メディアが報じており、親族内での殺人であることを把握した。
「なぜあの時間に流すのか」と苦情も
和光市役所危機管理室の担当者によれば、防災無線を流すに至ったのは、朝霞警察署から「臨時放送依頼書」が届いためだという。依頼書が届いた時刻と、和光市の防災無線の放送時間は以下になる。
第1報(依頼書到達)18日21時30分ごろ→(和光市防災無線)23時05分ごろ
第2報(依頼書到達)19日7時15分ごろ→(和光市防災無線)7時25分ごろ
このほか、11時10分ごろには、第3報で「中学生風の男」を確保したという防災無線が流れている。第2報が依頼書到達から約10分で防災無線を流しているのに対し、第1報の防災無線を流すまでに1時間半ほどの時間を要している。この理由について、和光市役所危機管理室の担当者は、
「時間帯を考え、深夜に流すべき放送なのかを判断するため、(市の方で)情報収集を行っていました」
と回答した。「臨時放送依頼書」が届いた場合は基本的に防災無線を流すが、緊急性のないケースもあるからだ。今回は「事件性がある」「緊急性がある」と判断したが、住民からは「なぜあの時間に流すのか」といった疑問の声が多数寄せられたという。このほか、「無線の内容が聞き取れない」という問い合わせも多少あったようだ。