フルコースのオードブル、といった感じだろうか。10月12日に行なわれた日本対パナマ戦である。

 森保一監督が率いる日本は、新戦力をテストした9月のコスタリカ戦を経て、10月シリーズへ突入している。今回の主眼が12日のパナマ戦ではなく、16日のウルグアイ戦に置かれているのは言うまでもない。テスト的要素を含む選手起用はパナマ戦で、ということになる。

 新潟で供されたオードブルは、その目的を満たしていた。食欲を刺激する──つまり、次への期待を抱かせたのだ。

 分かりきっていることとはいえ、パナマのフィジカルコンディションは万全でなかった。ガリー・ステンペル監督によれば、「30時間の長旅で疲れはあった」と言う。

 前半は個の打開力を見せたホセ・ロドリゲスとエドガル・バルセナスの2列目両翼は、後半になると存在感が希薄になった。他方、後半開始とともにボランチから右サイドバックへポジションを移したマイケル・ムリジョのように、疲労を感じさせなかった選手もいる。ただ、総じてコンディションに恵まれていなかったのは間違いない。

 時差の影響を受けない国内組がスタメンの7人を占めた日本には、ホームのアドバンテージが確かにあったと言える。3対0の勝利は妥当だっただろう。

 3点のうち2点は幸運に恵まれたものだったが、南野拓実があげた先制点に偶然の要素はない。敵陣で相手のパスをカットした青山敏弘が、最前線にいた背番号9へパスをつなぐ。DFとの競り合いで譲らなかった23歳は、GKの動きを見極めて冷静に流し込んだ。

 オードブルの味わいを広げてくれたのは、センターバックの冨安健洋だった。シントトロイデン(ベルギー)で定位置をつかんでいるこのCBは、守備はもちろんビルドアップでも存在感を発揮した。「スパン!」と音がするようなタテパスを1トップの大迫勇也に通し、決定機の足掛かりを作り出す場面もあった。

 パナマ相手に及第点の出来を見せたことで、冨安はウルグアイ戦に出場する権利も得た。招集された選手を漏れなく使うなら、16日のウルグアイ戦では吉田麻也と三浦弦太がCBのコンビを組むことになるが、コスタリカ戦に続いてフル出場した槙野智章のパフォーマンスも悪くない。さて、森保監督はどんなチョイスをするのだろう。

 ウルグアイ戦は吉田に加えて長友佑都、酒井宏樹、柴崎岳らのロシアW杯16強のメンバーが、スタメンに名を連ねるはずだ。コスタリカ戦で躍動感溢れるプレーを見せた中島翔哉、堂安律らとの化学反応は楽しみである。

 来年1月のアジアカップまで視界を広げると、GKの定位置争いも気になる。

 コスタリカ戦は東口順昭が、今回のパナマ戦では権田修一が出場した。どちらもクリーンシーンを記録している。減点材料もない。

 ウルグアイ戦に万全を期すなら、W杯メンバーの東口が起用されるだろう。あるいは、第3GKのシュミット ダニエルをデビューさせてもいい。

 試合中の交代を見込まないGKは、守備の安定を担保する意味でも大会を通してレギュラーが固定されるものだ。横一線からのアピール合戦となっているこのポジションは、実は競争が激しいのである。