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2012年7月に埼玉県坂戸市で男性(当時33)の遺体が見つかった事件で、傷害致死罪で有罪判決を受けた櫛田和紀受刑者(40)が9月3日、東京高裁に再審請求を申し立てた。同日、主任弁護人の長沼正敏弁護士や元東京都観察医務院長で法医学者の上野正彦氏らが会見。高裁での事実認定について、遺体が受傷した経緯や死亡推定時刻について、疑義がある点を指摘した。

●一審、二審ともに「単独犯行」認定

この事件では、2012年7月22日、埼玉県坂戸市の高速道路の高架下で男性が遺体で発見された。中学の同級生だった櫛田受刑者が、同年4月と5月に発生した男性に対する傷害の疑いで逮捕後、同年9月、男性を殺害した疑いで逮捕された。櫛田受刑者は、傷害致死罪と2件の傷害罪などで起訴された。

2014年2月、一審のさいたま地裁での裁判員裁判では、傷害致死について、櫛田受刑者の単独犯行を認定した上で、懲役13年の有罪判決を下した(傷害2件は認められず無罪)。

2014年12月、二審の東京高裁では、一審の訴因変更の手続きを取らない事実認定について法令違反と認め、一審判決を破棄したが、櫛田受刑者の傷害致死を認めて、一審と同じ懲役13年とした。傷害2件は、一審同様無罪とした。最高裁は、2016年1月に上告を棄却し、判決が確定した。

●弁護団「即死したとなると、第三者の犯行の可能性が否定できない」

今回の再審請求の主な理由は、遺体の状況に起因するものだ。確定審の鑑定では以下のような見解が出され、判決でも採用さている。

・男性は棒状のもので殴られた

・男性は受傷後、1日間程度生きていて、その後死亡した

対して、再審請求で上野氏が出した鑑定は、以下のような見解だ。

・男性は車によってひかれた

・男性は即死

死亡した男性が車にひかれたと考えられる理由について、上野氏は「遺体の皮下出血がむらなく広がっていていて、タイヤのようなものの作用による出血と考えた。棒状のものによる暴行は考えづらい」と話した。

男性が受傷後即死したと考える理由について、再審請求書は、胸腔内の出血がない点を指摘した上で、「肺挫傷と同時に心臓と肺が機能停止状態となり、急死したため出血が起こらなかった」旨を主張している。

確定審では、受傷日時から死亡までの時間があいている前提で、最終接触者が櫛田受刑者である可能性が高いことから有罪を認定しているが、弁護団は「即死したとなると、第三者の犯行の可能性が否定できない」と指摘している。

また、無罪になった傷害事件のうちの1つにおいて、死亡した男性は「(櫛田受刑者ではない)見知らぬ二人組に襲われた」旨を当時警察に相談しているが、男性を襲った二人組は見つかっていないという。長沼弁護士は「確定審は『疑わしきは被告人の利益』という原則から大きく逸脱した判断。第三者の犯行とみている」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)