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スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「NFMI」についてです。

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NFMI(Near Field Magnetic Induction)は、NXPセミコンダクタが開発した近距離磁気誘導技術です。一般的にワイヤレス通信は電波を空間に放射することで情報を伝達しますが、NFMIではコイルの中の磁界が変化すると電流が流れる「電磁誘導」を利用します。

NFMIは10MHz程度の周波数を使うため人体や水分による吸収が少なく、通信が途切れにくいという長所があります。ただしBluetoothやWi-Fiで利用される2.4GHz帯の電波に比べると到達距離が短く、1メートルほどの距離しか通信できないため、これまでは補聴器を中心に利用されてきましたが、左右のボディ(ハウジング)が完全に分離した「完全ワイヤレス」イヤホンに適した技術として注目を集めています。

NXP Semiconductorsでは、完全ワイヤレスイヤホン向けに「MiGLO」というのチップ(SoC)を提供しており、完全ワイヤレスイヤホンでの採用が続いています。左右の通信に電波を利用する一般的な完全ワイヤレスイヤホンは、送信側を手のひらで覆うとすぐに音途切れが発生しますが、NFMI/MiGLO採用機では起こりにくくなっています。音途切れが起こりにくいほかにも、音声信号の到達の遅れが小さい(低遅延/低レイテンシ)、消費電力が少ないというメリットがあります。

NFMI/MiGLOを採用した完全ワイヤレスイヤホンは、その片側(仮に左側とします)がスマートフォンとBluetoothで通信し、音声信号を受信します。この例の場合、音声信号のうち左チャンネルはそのまま再生されますが、反対側の耳のぶん(右チャンネル)の信号はSBCなどのコーデックで再圧縮され、NFMI/MiGLOにより右側へと送信されます。

ただし、NFMI/MiGLOはコイルと磁界の向きが合わないと電流が流れにくくなるという弱点があり、受信機と送信機の位置が絶えず変化する用途には不向きです。完全ワイヤレスイヤホンの場合、右側/左側とも耳穴に差し込まれた状態が続くため通信は安定しますが、着脱を繰り返すと音が途切れる可能性はあります。