世間一般の認識は間違っている……よくあるクルマの誤解3選
進化していても数十年前のイメージが払拭できていないことも
1)「スポーツカー=速い」じゃない
スポーツカーの定義にはさまざまなものがあり、スポーツカーに求められる要素にもさまざまなものがあるが、多くのスポーツカー好きの共通認識からすると、「速さ」の重要度はあまり高くない。
最高速度や最高出力、0-100km/h加速タイムなどは平凡かそれ以下でも、運転する楽しさや官能的なサウンド、流麗なスタイリングがあればスポーツカーとして認められる。
スーパーカーの場合は「速さ」は絶対条件として、当代トップクラスのレベルが求められるが、スポーツカーの場合はさにあらず。遅いよりは速いに越したことはないものの、絶対的な速さは二の次とする意見が多数派である。
たとえばマツダのロードスターは「速さ」以外の要素でスポーツカーとしての人気を不動のものにしている典型的な存在だ。動力性能や加速性能はそれほど高くはないが、人馬一体感が得られるハンドリングやスタイリングなど、「速さ」以外の部分で世界中のスポーツカーマニアから傑作スポーツカーと高く評価されている。S660や86/BRZ、ロータス・エリーゼなどにも同様のことが言える。
逆に、動力性能が高いだけの直線番長的なクルマはスポーツカーとして認められない場合が多い。
2)「アメ車=ガソリン垂れ流し」じゃない
アメ車というと、巨体に大排気量エンジンを積むため燃費は極悪。ガソリンは垂れ流しのように消費するクルマというイメージが抱かれがちだ。実際、「ガソリンは水より安い」と言われた時代のアメリカでは燃費など眼中にないようなクルマが多かったのも事実だが、アメ車全体を見るとイメージするほど悪くはない。
排気量8リッターのV10を積むダッジ・バイパーやラムトラックなどの燃費はさすがに極悪レベルながら、もう少し一般的なフルサイズのセダンやSUVなどは、競合する日欧車と比べても燃費は決して悪くないか、むしろ良い場合さえある。
たとえばフルサイズ級のSUVで見ても、キャデラック・エスカレードやリンカーン・ナビゲーターなどは排気量は6リッター、車重は2.5トン以上にもなる巨体ながら、街乗りでも燃費はリッター4〜5km/L程度、高速巡航なら7〜8km/L程度は走るので、レンジローバーやランドクルーザーあたりと同等。日本ではレギュラーガソリンに対応することを考えると、むしろ経済的だ。
古めのモデルの例を挙げると、日本ではLサイズのミニバンに位置付けられるシボレー・アストロも街乗り燃費はリッター5〜6km/L、高速巡航ではフタ桁燃費を記録することもできたので、同時代の競合ミニバンと比べて特に燃費が悪かったわけではない。
最新モデルでも、全長5mを超えるフルサイズ級セダンのキャデラックCT6は街乗りで7〜8m/L、高速巡航で12〜13m/L程度の燃費は普通に記録するので、日本のクラウンあたりと変わらなかったりするのだ(ハイブリッドではない純ガソリンエンジンのクラウン)。
3)「ミニバン=走りがダメ」じゃない
車重が大きくて重心が高いなど、運動性能面で不利な条件が重なるミニバンは走りが良くないものが多かった。ミニバンの運転からは楽しさは感じられず、ミニバンの運転席は、単なる移動のためだけの運転作業を強いられるハズレ席として認識されてきた。
しかし、それはすでに昔の話。90年代にセダンのアコードをベースとしたホンダ・オデッセイが登場してからは「ミニバンでも走りが悪くない」と評価できるモデルが徐々に増え始め、今では運転するのが億劫になるようなミニバンはほぼなくなったといえる。
もちろん、スポーツカーなどには及ばないながらも、クルマ好きの人が乗っても「これなら許せる」「積極的に楽しい」と思えるミニバンは激増しているのは間違いない。
クルマの性格上、ファン・トゥ・ドライブ性は二の次としてきたアルファード/ヴェルファイアでも現行モデルはリヤサスが従来のトーションビーム式からダブルウイッシュボーン式となり、走りの味が激変。
セレナやノア・ヴォクシー、ステップワゴンなどにもワークスチューンのスポーツモデルが展開され、一流のレーシングドライバーたちから高く評価されているなど、もはや「ミニバン=走りがダメ」は遠い過去の話になりつつあるのだ。