先日から大きな話題となっている中央区立泰明小学校の「アルマーニ標準服問題」ですが、そもそも、なぜ区立小学校の校長が「制服の変更」を独断で決めることができたのでしょうか。無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』ではその理由を探るとともに、「校長」という役割について考察しています。

校長の権限

2月14日、文科省は、高校学習指導要領の改訂案を公表しました。今回の改訂案では、学習する知識の量を維持した上で、生徒の思考力・判断力・表現力を向上させる観点から再編し、27科目にも及ぶ新設や見直しを行っています。また、文科省は、話題になった「坂本龍馬」などの歴史用語の削減については、削減しない方針を明確にしています。今年度中に改訂し、19〜21年度を移行措置期間とし、22年度から実施となる予定です。

やはり同じ14日、大津市は、市立学校で重大ないじめ事案が起こった際に設置する第三者委員会で、再調査する場合には、「保護者が委員の半数以上を推薦できる」とする条例案を発表しました。第三者委員会がらみのご相談で多いのが、第三者委員会が被害者、被害者家族の意見に聞く耳をもたないというものです。大津市のこのような被害者側に対しての姿勢は、全国に広げていくことが必要です。メルマガをお読みの方、またご協力いただけます方がいらっしゃいましたら、ぜひ、地元の議会に、大津市方式の条例をご提案いただけましたら幸いです。

さて、先日、ワイドショーを賑わせたのは、アルマーニの標準服問題です。銀座にある東京都中央区立泰明(たいめい)小学校が「アルマーニ」の制服の導入を決定し、一式の価格が、これまでの2.5倍の8万円ほどになるとのことで、多くのマスコミに取り上げられました。制服の着用は強制ではないとされてはいますが、実際上は着ないわけにはいかないことや、公立小としては、その価格があまりにもかけ離れているとのことで議論を呼んでいます。

価格もさることながら、この制服の決定に至る過程に「学校」という組織の問題点が現れているように感じます。報道を読む限りですが、校長がPTAにも相談せずに、上位組織にもはからずに、自分一人で制服を決定したというのです。個人商店や個人事業主であればそのようなこともあると思います。しかし、中央区によって設置された区立の学校で、許可を受けることもなく決裁できるという点は、ある意味、組織のシステム上の不備ではないでしょうか。校長の権力に対しての「監視機能」がないことは問題だと思います。

一般的に「権力」が与えられているという背景には、その人に権力を与えても濫用はしないだろうという信頼があり、その信頼があるからこそ、その役職なりが与えられているのだと思います。権力を持つ側としては、自分にその力を委ねてくださっている方への責任を背負っているわけです。権力者の「決断」において、関係者のためにならないもの、つまり、関係者の喜びや幸福感、さらには関係者の成長につながらないものは、自己満足であり「職権濫用」でしょう。

ちなみに、学校における管理職である「校長」には強い権限が与えられています。実際のところ、いじめが解決するかどうかは、「校長しだい」のところがあります。やる気のある校長先生ならば、いじめは一日で解決しますし、反対にひどい校長にあたれば「保護者の育て方が悪いから、いじめられる」と責任を転嫁し、いじめはいっこうに解決しません。

学校長は、社会の尊敬も受けますし、学校に於ける権力者でもあります。それ故に、常に「自分は学校長たるに相応しいかどうか」ということを自問自答し生徒や保護者に対して恥ずかしくない自分であっていただきたいものです。

今年のNHKの大河ドラマは「西郷どん」ですが、その偉大なリーダーとして、敬愛されている「西郷隆盛」が好んだ「敬天愛人」という有名な言葉があります。私心をなくして公につくす心というのは、いつの時代も大切なのではないかと思います。

今学年もあとわずかとなりました。この時期のいじめには、特に早期解決が必要です。気にかかることがありましたら、早めにご相談ください。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク

代表 井澤一明

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