「東京オートサロン」には毎回、いろいろな意味で突き抜けているカスタムカーが出展されます。2018年の会場にも実にさまざまな個性がひしめきました。どのようなクルマが並んでいたのでしょうか。

カスタムカーの祭典「東京オートサロン」、今年も大盛況

 幕張メッセにて2018年1月12日(金)から14日(日)にかけ、「東京オートサロン2018」が開催されました。


さまざまなカスタムカーで賑わった「東京オートサロン2018」。写真はラリードライバー、ケン・ブロックがドライブした「Hoonicorn V2」(2018年1月、加藤博人撮影)。

 毎年想像もつかないようなカスタムカーが出展されますが、今回も例年どおり、いろいろな意味でとても突き抜けているクルマがズラリと並びました。そうしたなかから注目の9台を紹介します。

ケン・ブロックの1400馬力「マスタング」、「Hoonicorn V2」

 世界的ラリードライバー、ケン・ブロックが標高4000mのパイクスピークに向かって激走する動画「Climbkhana」に使われた、1965年型フォード「マスタング」をベースに大改造したドリフト・マシン「Hoonicorn V2」がトーヨータイヤのブースに出展されました。


フォード「マスタング」をベースに大幅改造された「Hoonicorn V2」(2018年1月、加藤博人撮影)。




 ケン・ブロックはトーヨータイヤブースのゲストとして来日し、素晴らしいドリフトパフォーマンスを見せてくれました。「Hoonicorn V2」に搭載されるエンジンは1号機「Hoonicorn」と同様の6.7リッターV8エンジンですが、メタノール燃料の特製ツインターボチャージャーをはじめさらなるチューンナップを各所に施して、最高出力は驚異の1400馬力を叩き出す、モンスターマシンへとさらなる進化を遂げています。ケン・ブロック自身も「自分でも少し怖い」と話すほど。まったくもってクレージーなクルマ「Hoonicorn V2」は「オートサロン」で国内初展示を果たしました。

D.A.Dの金銀メルセデス「D.A.Dラグジュアリークリスタルベンツ」

「オートサロンといえばこれ!」というくらいすっかり定着しているのがD.A.Dの「クリスタルベンツ」です。ベースは金銀ともに、メルセデス・ベンツ600SLとなります。独特の光を放っているこのキラキラベンツ、ゴールドの方は2009(平成21)年に「東京オートサロン」へ出展された際、見事、カスタムカーコンテストにてグランプリを獲得しました。いずれも30万個以上のスワロフスキー製クリスタルが埋め込まれています。


D.A.Dの「クリスタルベンツ」。ベースカーはメルセデス・ベンツ600SL(2018年1月、加藤博人撮影)。


 内装もなかなか突き抜けてます。シートバック周辺もキラキラしていますね。ちなみに筆者、ふだんは「ベンツ」とは書かず、「メルセデス」「メルセデス・ベンツ」と書くのですが、この車はやっぱり「ベンツ」ですね。いろんな意味でメルセデスを超越しています。ゴージャスですね。

ピンクのすっごいランボルギーニ

 近年、オートサロンへの出展車に輸入車、とくにランボルギーニをベースとしたカスタムカーがすごく増えたような気がしていますが、こちらもそのひとつ。LYZERが手掛けたド派手なピンクのキラキラ「ムルシエラゴ」です。ちなみにこちらは60万粒のクリスタルを使って作られたそうで、前述したD.A.Dのキラキラベンツの2倍。「すごい!」と思いましたが、要するにD.A.Dの「SL」はオープンカーですから、そのぶんクリスタルが少なくて済んだということなのでしょうか。


スワロフスキークリスタル60万粒が施されたLYZERの「ムルシエラゴ」。(2018年1月、加藤博人撮影)。

 ちなみに、LYZERの意味は「Leading your zone to extra radiance」の頭文字だそうです。

竹やり出っ歯の82「クレスタ」

 82年型トヨタ「クレスタ」をベースにした、これぞ「改造車」です。もちろん公道走行は不可です。「カスタムカー」より「改造車」という言葉が似合ってますね。


トヨタ「クレスタ」をベースにした、ある意味で日本の伝統的な改造車。もちろん公道走行は不可(2018年1月、加藤博人撮影)。




 ちなみに、このような昭和のヤン車系カスタムは筆者が見たところほかには見つけられませんでした。赤と白という配色も素晴らしいと思います。

57年前に初めて地球を縦断した「ランドクルーザー」を復元!

 ピンク色のボディカラーに惹かれて近寄ってみたら、河北新報という宮城県仙台市に本拠を置く新聞社のクルマでした。「さくら」という車名に、ボディにはアラスカからチリに至るルートの地図が描かれています。


「河北新報 さくら号」。トヨタ「ランドクルーザー(FJ28VA)」のタフさを世に知らしめた(2018年1月、加藤博人撮影)。




 このクルマは、いまから57年前の1960(昭和35)年に、河北新報の企画で南北アメリカ大陸を縦断したトヨタの「ランドクルーザー(FJ28VA)」です。同年3月29日にアメリカ・アラスカ州のフェアバンクスから、カナダ、アメリカ、メキシコと北米大陸を縦断し、グァテマラ、エル・サルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマと中米を通過し南米に入ってコロンビア、エクアドル、ペルーを経て約4か月後にチリのプエルトモントに到着しています。その後、河北新報社の駐車場で長い間眠っていたところ、2017年に宮城トヨタの手によってレストアが施され、「東京オートサロン」に出展することになったそうです。レストア技術のすばらしさにも感動しました。

アルファインダストリーとのコラボで実現した戦闘機デザインの「チャレンジャー」

 米・ラスベガスで毎年11月に開かれるカスタムカーのイベント「SEMAショー」にも、2、3年前から出展されることが増えて来た戦闘機スタイルですが、今年の「オートサロン」には、岐阜のEDGEカスタム社からダッジ「チャレンジャー」をベースにした戦闘機カスタムが出展されていました。しかも、米軍御用達のアルファインダストリー社とのコラボで、内装などもやたらカッコいいのです。


ダッジ「チャレンジャー」ベースの戦闘機カスタム。ボディにはリベット(鋲)が打ち込まれている(2018年1月、加藤博人撮影)。




 ベース車両の「チャレンジャー」は、もともと軍用機のロービジ迷彩をほうふつとさせるグレーのボディカラーがカタログカラーとして設定されているそう。米軍機のノーズアートでおなじみのシャークマウスもしっかり入ってますね。

「GRスーパースポーツコンセプト」

 今年のトヨタは突き抜け感が半端ありません。TOYOTA GAZOO Racingから出展された「GRスーパースポーツコンセプト」は、オートサロン会場の投票で実施された「東京国際カスタムカーコンテスト」のコンセプトカー部門にて最優秀賞を受賞しました。


トヨタ「GRスーパースポーツコンセプト」(2018年1月、加藤博人撮影)。




 外観は「ル・マン・プロトタイプカー」をイメージさせますが、実際のところ、同モデルには「LMP1」「TS050ハイブリッド」などと同様のパーツが随所に採用されており、エンジンもレースで鍛えられたV6ツインターボを搭載しています。

クルマという形をした芸術品

 他とは次元が異なる超絶テクニカルなカスタムで例年、来場者はもちろん、業界を騒然とさせるクールレーシング。過去の「オートサロン」では、版画や彫金などで見られる「エングレイビング」という技術を駆使した金銀の「GT-R」で話題をさらったことも記憶に新しいですね。そして今年はまた凄いのが出てきました。


井澤孝彦氏による日産「GT-R」のドレスアップカー(2018年1月、加藤博人撮影)。




 金銀「GT-R」同様、カスタム界の鬼才、カリスマペインター井澤孝彦氏による作品です。「GT-R」のボディを縦横無尽に駆け抜けるライン、実はラッピングは一切なく、すべて塗装なのです。しかも下描きなし、圧巻の手作業です。ドアミラーやドアハンドルはエングレイビングのテクニックで仕上げられており、エンジンは1000馬力のチューンドエンジンを搭載。中身も負けずに突き抜けています。

ホンダアクセスが手掛ける「『けもフレ』フィット」

 2017年に大ヒットしたアニメ『けものフレンズ』の世界観をホンダ「フィット」で再現したユニークなカスタムモデル。作ったのはホンダ車純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセスで、ホンダ「フィット」の「クロススタイル」をベースに仕上げています。


「フィット クロススタイル」をベースに、さらにドレスアップされた『けものフレンズ』仕様「フィット」(2018年1月、加藤博人撮影)。




 インテリアも『けものフレンズ』仕様で要注目。運転席は『けもフレ』キャラクターの「サーバル」、助手席は同じく「かばんちゃん」をイメージし、アニメの舞台となる「ジャパリパーク」の世界観を再現しています。ちなみに、ブースでは先着1500名にオリジナルクリアファイルが配られました。