トランプ大統領の水を飲む姿がぎこちないとか、輸入物ミネラルウォーターを 飲むのはおかしいとか、そんなことを言っている場合じゃない。ぐっちーさんはアメリカの国内外で起きている重要な出来事を見逃すな、と言う(写真:ロイター/アフロ)

日本ではドナルト・トランプ大統領の訪日などに記事が集中していたなか、実はアメリカでは、今後の同国の政治を占ううえで、非常に重要な選挙が行われていました。バージニア州の知事選挙がそれです(ニュージャージー州でも知事選がありましたが、前評判どおり民主党の勝利なので、これは取り上げません)。

「寝ていたアメリカ独身女子」がついに決起した?


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実は、前回の大統領選挙で南部を固めたトランプ大統領が唯一失ったのが、このバージニア州なのです。しかし僅差での敗北であり、今回も当初は大接戦が予想されていました。が、終わってみれば民主党のラルフ・ノーサム氏が9ポイントもの差を得票率でつけて圧勝する結果となりました。さらに中身を詳細に見てみると、出口調査によれば独身女性においては、なんとほぼ77%対22%で民主党支持となっており、これが圧勝の1つの要因と見られています。

こちらの連載でも以前書きましたが、この独身女性層の民主党支持者が「家で寝ていた」ために、アメリカの大統領選挙において、ヒラリー・クリントン候補は、バラク・オバマ前大統領の得票数を600万票以上失ってしまいました。一方の共和党における票数は、前回選挙とほぼ同数でした。ヒラリーは、これで負けたわけです。

つまり彼女たちは「トランプなんて大嫌いだけれど、ヒラリーも嫌い」という非常に複雑な「ねじれ」を起こしており、これが票数の減少につながったのが敗因といえ、今回は「トランプにこのまま2期連続8年もやられたらたまらない」と奮起した民主党支持層が動いた、といえるでしょう。

ただ、この結果だけ見て民主党が反撃態勢に入り、来年の中間選挙も取れる、と思うのは間違いです。今いちばん勢いのあるリベラル派は、そもそも別の候補者を支持していました。このあたりの民主党内の「ねじれ」(人種、性別、年齢、地域)が解消されているとはいえず、いかにこの大統領選で「家で寝ていた」支持者たちを選挙に向かわせられるのか、かなり難しい情勢にあることには違いありません。

一方、共和党候補者はもちろん、まさに「ガットレンチング」(Gut wrenching=腸がねじれるほど痛い) とでも言うべき情勢で、はたしてこのままトランプ支持で突っ走っていいのか(実際、共和党支持者に限ってみると、トランプの支持率は70%もある、というデータもある)、極めて難しい選択を迫られることになるでしょう。アメリカ政治はこれからがどうやら本番で、当面、税制改革案を議会で通せるかどうかが非常に重要になってきます。これが通らないというような結果になると、来年の中間選挙に向かったトランプ大統領がさらに求心力を失うことになり、まさに政権の危機となってしまいます。

一方で……、サウジアラビアも大変な事態となっています。

報道によると、富豪のアルワリード王子、ムトゥイブ国家警備隊相ら11人の王族と4人の現職閣僚を含む約50人を逮捕するという、まさに衝撃の事態となりました。

サルマン皇太子(MbS)が、ついに動いた

この逮捕劇での主役は腐敗防止最高委員会で、そのトップに立つムハンマド・ビン・サルマン(MbS)皇太子です(以下MbS、現国王の子)。その後、現国王の弟であるムクリン元皇太子の息子マンスール氏が謎の墜落死をとげる、という事件まであり、これが普通の事故と思っている関係者は皆無です。

ウォールストリートではアメリカでも有名な投資家であるアルワリード王子の逮捕が大きく取り上げられていますが、なんといってもこのMbS の動きが注目です。

宣伝になってしまいますが、わたくしのHP(グッチーポスト)においてJDというペンネームで記事を書いている、いうなれば「外交ディープスロート」のような男がおりまして、ここで彼が詳しく解説しているので、ぜひ読んでいただきたいのですが(有料です……笑)、こちらでまとめて書いておくと、今回のこの一連の動きは、これまでのサウジにおけるタブーを完全に破り、近代国家への転換を図りたい、というMbS の野望が一気に展開した、というような状況で、今後中近東において大きな流れが変わる潮目になる可能性があるのです。

これまでの経緯を簡単にお話しすると、サウジでは、このMbS皇太子が次期帝王となるべく、さまざまな動きをこれまでもしてきました。読者のみなさんのために簡単に整理します。

2015年1月、第6代国王のアブドッラーが逝去し、アブドッラーの弟であるサルマン現国王が第7代として即位します。このとき、アブドッラーの遺言により、皇太子にはアブドッラーの弟であるムクリン、副皇太子にはアブドッラーの甥であるムハンマド・ビン・ナイフ(MbN)が就任したのですが、同時に7代の子供であるMbSは30歳の若さで国防相に就任。さらに新設の経済最高開発評議会のトップに就任となり、ここで一気にきな臭くなります。

非常に興味深かったのはこのMbSは、米国、中国、ロシア、日本など主要国に外遊して次々にトップと会談。父のサルマン国王およびMbNはどっかに行ってしまったような様相で、これはひと波乱あるな、と思われていた矢先、MbNが解任され、MbSが皇太子になるという泥沼の権力闘争がスタートしたわけです。

これまでサウジ王家は伝統的にさまざまな主要セクションを有力部族で分割して担当するという、部族闘争を起こさないよう、バランスを取ることで知られていましたが、この一連の動きでついにMbSがすべての主要セクションを掌握する事態となり、これはまさに「独裁」といえるでしょう。

この微妙なバランスの上に成り立ってきたサウジが今後この路線で進むのか、当然、権力を手放した部族たちはおもしろくありませんから、新たな政争が起きる可能性も十分です。ただでさえ不安定な中近東が一気に荒れてしまう可能性も決して捨てきれません。

石油掘削装置稼働数が増えたのは何かの前触れ?

当方のHPで書いてくれているJDによると、「国王とMbSというサルマン国王一族が、(1)ナイフ一族(MbN)、(2)アブドッラー前国王一族(ムトゥイブ)、(3)タラール一族(ワリード)、(4)ムクリン一族(マンスール)、(5)ファハド元国王一族(アブドゥルアジズ)という有力王族を軒並み排除した」ということになります。これはまさに大事件です。

一方でMbSはこれまでの賄賂などが普通にまかり通っていた不正についても厳しく取り締まりを始めており、この独裁と不正取り締まりというのはどうも中国の習近平と重なって見える気もします。もちろん近代国家として歩み始めた、と好意的に見ることもできますが、今後の部族間対立、ある意味、独裁政権が持つ怖さなどを考えると、目が離せない事態になってきたといえます。

すでに原油の生産量ではアメリカが世界トップになっているものの、引き続きサウジも重要な供給源であり、独裁の先には、原油価格のコントロールなど市場に影響を与えるファクターはたくさんあるでしょう。国家財政の80%近くをエネルギー生産の輸出に頼っているロシアなどにとっては原油価格の高騰はまさに願ったりかなったりで、このあたりの「独裁者コンビ」が手を組む可能性も排除できません。

今週のワタクシのメルマガでは、すでにアメリカの油井稼働リグ(掘削装置)数が大きく増加しているというデータを出しましたが、まさにこういう一連の動きの中で経済も動いている、という一例でしょう。サウジのこうした動きの中、市場参加者は原油という新たな変数を解かねばならない事態になってきたことだけは確かです。「みなさま、シートベルトをいま一度お確かめくださいませ」ということになりますか……。

週末に行われるG1レースは、マイルCS(CS=チャンピオンシップ、11月19日京都競馬場11R)。

「大混戦で参る」戦、だからまた「デムルメ」!?

えー、正直サウジの混乱どころではありません。われわれの間では「参るCS」と言われているくらい、えらい混戦が繰り広げられる、まさに「大混乱」レース。会場の京都競馬場も今年は荒れに荒れており、参る、いやマイル戦なので、スピード勝負ではあるものの、相当力のいる馬場になっていることもあり、速い馬が素直に来るようにも思われません。

そもそもこのレース、過去10年で1番人気が来たのがたった2回。ここ7年は1番人気が1回も来ていない、という「化け物レース」。

それもこれも近年圧倒的なマイル馬(国内外のマイルG1戦だけで4勝をあげたモーリスのような奴ですな)が不在。今年の春のマイル戦である、安田記念でもコンマ5秒内(だいたい2馬身半)になんと9着までが入ってしまうという、もう何が何だかわからん団子状態で突っ込んでくるわけです。

となると……ここまで読んでいただいて、気がついたあなたは鋭い。そうなんです。この団子状態をブレークするにはどうしても騎手の剛腕が必要で、今回は特に重視せざるをえません。

ということで いつもの「デムルメ」馬券(ミルコ・デムーロ騎手と、クリストフ・ルメール騎手が騎乗する馬の、勝ち馬投票券を買う)……「おい、こら! お前、毎回デムルメばっか推してるだろ!!」という批判をこの際無視して、やはり行くしかないでしょう(涙)。

本命はデムーロ騎手騎乗のペルシアンナイト。そりゃ、みなさんね、10月1日に行われたスプリンターズS(1200mのG1戦)のレッドファルクスを勝たせた騎乗を思い出しましょうよ! しかも、もうG15勝ですぜ! もう抵抗しない。デムーロに座布団10枚!!

ちなみにゴール前はすごいことになるので、馬券を買わない方も絶対見たほうがいいレースです。馬券はともかくも、見る分には、超お勧めであります。