カルバハルの離脱でチャンスを得たハキミは、このヘタフェ戦を含めて公式戦3試合連続で右SBとしてフル出場。試合を重なるごとにパフォーマンスの質を上げている。(C) Getty Images

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 レアル・マドリーの新鋭SBアシュラフ・ハキミが評価を高めている。
 
 今夏にカスティージャ(マドリーB)から昇格したばかりの18歳は、ウイルス性心膜炎のため戦線離脱した不動の右SBダニエル・カルバハルに代わり、リーガ・エスパニョーラ7節のエスパニョール戦で待望のトップデビュー。続く8節のヘタフェ戦でも先発フル出場を果たし、さらにチャンピオンズ・リーグ(CL)のトッテナム戦(グループステージ3節)でもスタメン起用された。
 
 18歳11か月でのCLデビューは、クラブ史上8番目の若さである。ジネディーヌ・ジダン監督にはDFのマルチロールであるCBのナチョを右SBに起用する選択肢もあったが、リーガ2試合でのパフォーマンスを見て「イケる」と判断し――ナチョが故障明けだったのも理由のひとつだろうが――、トッテナムとの重要な一戦にハキミ(登録名はファーストネームのアシュラフ)を抜擢した。
 
 リーガでの2試合ではどこか遠慮がちにプレーしていたハキミだが、トップチームのリズムに慣れたのか、トッテナム戦ではこれがCLデビューとは思えない堂々たるプレーを披露。組み立てや崩しの両局面で積極的にボールに絡み、チームの歯車としてしっかり機能した。
 
 チーム3位タイの94を記録したボールタッチ数は、チームメイトがそれだけ信頼してボールを預けた証拠で、パス成功率も89.8%という高い数値をマーク。守備も安定しており、いまや世界最高の右SBとの呼び声もある、カルバハルの不在の影響をほとんど感じさせなかった。
 
 モロッコ人の両親のもと、マドリードで生まれ育ったハキミは、8歳の時にマドリーのカンテラ(下部組織)に入団した。順調にカテゴリーを駆け上がり、2016-17シーズンにトップチームのひとつ下のカスティージャに昇格。その16年夏にはトップチームのサマーツアーに帯同し、DF陣に怪我人が続出した今年1月にはリーガとコパ・デル・レイの試合でベンチ入りを果たした。
 
 この夏に、R・マドリーは右SBのダニーロをマンチェスター・シティに放出したため、地元メディアでは実質カルバハルひとりになった同ポジションの補強の必要性を訴え、その候補としてトマ・ムニエ(パリSG)やアルバロ・オドリオソラ(R・ソシエダ)、イェレミー・トリャン(今夏にホッフェンハイムからドルトムントに移籍)らの名前が取り沙汰された。
 
 だが、アメリカでのサマーキャンプを通じてハキミの実力を見極めたジダン監督は、アラベスへのレンタル移籍も囁かれていたこの若いカンテラーノ(カンテラ所属あるいは出身者)をトップチームに引き上げることを決断。右SBの補強を見送った。
 もともとウイングだっただけあって、ハキミの持ち味は攻撃力にある。さらにカンテラのコーチが「特筆すべき」と評した無尽蔵のスタミナが自慢で、タイプ的には同じカンテラ出身の先達、カルバハルに似ている。
 
 そのカルバハルの症状は思ったより軽く、意外と早く復帰できそうだ。それでも再発の恐れもあるため、ジダンはカルバハルが復帰してもあまり無理はさせず、他のポジションと同じように積極的にローテーションを活用するだろう。つまりハキミにも相応の出場機会が与えられるはずだ。
 
 スペイン生まれながら代表はルーツであるモロッコを選んだハキミは、来夏のワールドカップに出場する可能性もある。A代表デビューは昨年10月で、チームは残り1節となったアフリカ予選最終ラウンドでグループCの首位に立っている(2位コートジボワールとの勝点差は1)。
 
 マドリーで多くの経験を積み、ワールドカップの舞台に立つ――。11月4日に19歳になる俊英は、そんな夢を抱きながら充実した日々を送っている。