前提として合流するクルマは気後れせずに先端まで行くべき

 行楽シーズンの高速道路。渋滞している本線に加速レーンから合流するとき、合流車線の先端までスイスイ進んで合流するのは、本線上で並んでいる他のドライバーを出し抜くようで、マナー違反なのでは、と思っている人はいないだろうか? それはとんだ勘違いだ。

 合流車線は、合流するクルマが通行するために設けられている車線なので、その車線の長さを最大限利用してもまったく問題はない。むしろドイツなどでは、「ジッパー法」という法律があり、合流車線の先頭で交互に合流する方法を義務付けているほど。

 このジッパー法のメリットは、本線側に意地悪なドライバーがいない限り、ほぼ確実に1台ずつ交互に合流できて、不公平感がもっとも少なく、渋滞の悪化を防げる点。合流車線の長さがまだ残っているのに、合流車Aがかなり手前から合流したとしよう。でも合流車Aの後ろにいた合流車Bは、合流車線の先端まで先に進んで合流する。合流車Cも合流車Bにつづいて、合流車線の先端まで行くと、最初に合流車Aを自車の前に入れてあげた本線車Xは、合計3台の合流車に入られたことになる……。

 スーパーのレジで並んでいたら、自分の前に並んでいた人が、知り合いを見つけ、「私が並んでいたから、ここに入っていいわよ」と割りこませたらどうだろう? 合流車Aのように、手前で本線に合流しているクルマは、悪気はなくても、上記のオバサンのやっていることと本質的には変わらないのだ。

 本線車Xのドライバーの立場からすると、当然、合流車Aは不愉快な存在になるはず。つまり、「早く合流しないと、本線で渋滞に並んでいる人に悪い気がする」という合流車Aタイプのドライバーは、じつは独りよがりの偽善行為で、まったく合理的でなく、かえって本線を走っているクルマに迷惑をかけているということを知ってほしい。 

 というわけで、渋滞時こそ、長い合流車線はすべて使い切って合流するのが正解だ。だとしたら、本線が渋滞時に、その本線から加速レーンに車線変更して、渋滞しているクルマを左側から追い抜いていくのはどうなるのか?

合流車線への車線変更は違反ではないがマナー的にはダメ

 たとえば、東名高速上りの海老名SA出口には、約4kmの長い合流車線があるが……。法律的には、この長い加速車線は登坂車線などと同じ、「付加車線」にあたる。登坂車線がそうであるように、本線から「付加車線」の合流車線に車線変更し、そこを走行すること自体は違反にはならない。

 しかし、一方で左側からの追越しは、「追い越し違反」の対象になるので……。(「追い越し違反(先行車両の左側からの追い越し)」違反点数2点 反則金9000円)細かくいえば、渋滞中など、一番右側の追越し車線より、中央、あるいは一番左の走行車線の方が流れがよく、追越し車線のクルマを左側から抜いていくケースもままあるし、それを目的に流れのいい車線に車線変更することもしばしばあるわけで、「本線→合流車線→合流車線の先端でまた本線に戻る」というパターンは、法律的にはかなりグレーなゾーンに入る。

 ただ、合流車線の本来の用途ではないので、ルール違反かどうかはグレーだが、マナー違反は確定だろう。

 また違反といえば、渋滞時に時折見かける路肩走行は、問答無用の交通違反。「通行区分違反(路肩走行禁止)」で、違反点数2点、反則金9000円のペナルティだ。しかし欧米では、混雑時に「路肩走行可能」の表示を出し、路肩を開放する「ショルダーユース」という仕組みがある。

 日本でも、2012年に東名高速でこの「ショルダーユース」の実験が行われ、渋滞の発生件数が1/10以下になったという報告がある。国土交通省では、この実験の結果を踏まえて、将来的に導入を検討しているとのことだが、こうした即効性のあるアイディアは、できるだけ早く実現してもらいたいものだ。