そうは言っても韓国人だけで構成されるグループが表彰され、英語と韓国語で受賞スピーチをするところがアメリカ最大のテレビネットワークで放送されているのですから、その功績は無視できないし、無視してはいけないと思います。それに私自身は、彼らがアメリカのオーディエンスと繋がることができたのは、彼らの音楽と歌にこめられたメッセージに惹きつけられたからだと信じています。」

最後にベンジャミンが今後期待を寄せるK-POPアーティストを挙げてもらった。

ベンジャミン「Seventeen、MONSTA X、NCTのような新人のヒップホップグループで自作したり、曲作りにメンバーが関わっているグループは、アメリカで人気を獲得し始めているところだと思います。2NE1のやっていた強いガールズグループのサウンドを継承するBLACKPINKや、メンバー自ら曲作りに参加する数少ないガールズグループの1つであるPRISTINにも期待しています。

男女混合グループのK.A.R.Dもアメリカで注目を集めていますが、これは今時でトロピカルなムーンバートンサウンドと、男性と女性が一緒に踊っても平気だという西洋風のコンセプトによるものだと思います。もしK.A.R.Dが清純なコンセプトでデビューしていたら、アメリカのオーディエンスとは通じ合っていなかったでしょう。」

今年の4月にビルボードはオンライン版と紙面に防弾少年団と彼らの所属事務所代表パン・シヒョクのインタビューを掲載した。ベンジャミンがインタビュアーを務めたこの記事の中でパン代表は防弾少年団のアメリカ進出について、英語の曲を発表するよりも、世界の人々が共感するような要素を加えながら、K-POPアーティスト・プロデューサーとしてのベストを尽くすことが重要だという考えを表した。

“カンナムスタイル”のようなバイラルソングは、伝播の速度と範囲も大きいが、消費されるのも早い。防弾少年団を筆頭に現在のK-POPアーティストは、本国でのスタイルを守りながら着実にファンを増やすことで、「韓流ブーム」のような一過性のトレンドの一部になるのではなく、個々のアーティストとしてのアイデンティティーを海外のファンにも浸透させていっているのかもしれない。

ベンジャミンが名前を挙げた新人のうちの1組・NCTのグループ名は「Neo Culture Technology」の頭文字から取られている。メンバー数に制限がなく、「開放性」や「拡張性」をキーワードに、グループ内でソウルをはじめとする世界の都市を拠点とした複数のユニットが構想されているという彼らは、EXOやSHINee、東方神起らを擁するSMエンターテイメントが長年取り組んできた「文化技術」戦略の最新形態だ。様々なテクノロジーに裏打ちされたカルチャーとしてのK-POP。ブームの隆盛と収束を経験しながらアップデートされてきたこの産業は、自分たちの得意なことをやる、という一見原点回帰とも取れるやり方で言葉の壁を越え、世界にファンダムを築いている。