防弾少年団。彼らは9月18日にニューアルバムのリリースを控えている。

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アメリカ・ビルボードのK-POPコラムニストであるジェフ・ベンジャミンの言葉から、K-POPの世界的躍進の背景を探るコラムの後編。前回はPSYの“カンナムスタイル”の世界的ヒットの功績や、アメリカのファンから見たK-POPの魅力について話を聞いたが、今回は言語の壁を超えるK-POPの戦略や、韓国アーティスト初となった防弾少年団のビルボードアワード受賞について、そして期待の新人にも言及してもらった。

■K-POPとラテンミュージックのファンダムは似ている?母国語のまま全米進出する韓国アーティストたち

前回の記事で“カンナムスタイル”のヒットによって「韓国語のポップミュージック」というものをアメリカ人が受け入れ始めた、とベンジャミンは語っていたが、PSYの後に出てきた防弾少年団やEXOなどのアーティストも、基本的には韓国でリリースした韓国語の曲がそのままアメリカで売れている。日本では多くのK-POPアーティストが日本のレコード会社と契約し、韓国で出した曲の日本語バージョンや、日本オリジナルの日本語の曲を作って売り出したりするので、アメリカのファンとは違った聴こえ方がしているだろう。

ベンジャミン「私は言語学の専門家ではないですが、韓国語と日本語は韓国語と英語よりも似ていますよね。だから韓国のアーティストにとって日本語でレコーディングして説得力を持たせるのはそこまで大変ではないんだと思います。

一方で英語で歌うのはまた別の話です。韓国のアーティストが英語で歌ったのと韓国語で歌ったのを比べると、韓国語の方が聴いていて楽しいなと思いますし、結局のところ無理して英語で歌うよりも、自分たちが得意な韓国語で歌う方がアメリカで受け入れられるのではないでしょうか。」

日本のように現地のマーケットにあわせてローカライズするよりも、本国でやっているベストな状態をそのまま持ってくる方がアメリカにおいては良いのではないかということだ。K-POPアーティストの日本オリジナル作品は、しばしば本国でのイメージとはかけ離れたいかにもJ-POPな楽曲とビジュアルを展開してファンの間でも賛否両論が起きるが、韓国で作られた本来のアイデンティティーを守りながら国外でも受け入れられることは健全だし、誇るべきことだろう。

またK-POPのように非英語圏の音楽でアメリカでも人気があるのがリッキー・マーティンやShakiraをはじめとするラテンミュージックだが、ベンジャミンはK-POPのファンダムの広がり方とラテンミュージックやアメリカのパンクシーンのファンとの類似性を指摘する。

ベンジャミン「ラテンミュージックもパンクのシーンもアメリカでとても熱心で強固なファンベースを築いている一方で、「メインストリーム」の音楽とは考えられていません。それでも確実にこの国のカルチャーで大きな動きを見せています。特にアメリカのチャートで何週にもわたって1位に輝いたルイス・フォンシ、Daddy Yankee、ジャスティン・ビーバーの“Despacito”は、どんな言語で歌われていたとしても曲次第でチャートを制することが可能だと証明しました(ルイス・フォンシ、Daddy Yankeeはプエルトリコ出身。“Despacito”はスペイン語の曲)。」

■防弾少年団のビルボード受賞の功績とは? NCT、K.A.R.D、Seventeenら期待の新人も

『ビルボード・ミュージック・アワード』トップ・ソーシャル・アーティスト部門を受賞した防弾少年団のアルバム『WINGS』も韓国語の作品だ。彼らのビルボードアワード受賞は、K-POP全体にとってアメリカのマーケットにおけるブレイクスルーとなるのだろうか?

ベンジャミン「防弾少年団のビルボードアワード受賞によって、彼ら自身やK-POPはより多くの注目を集めるようになったので、それはとてもエキサイティングなことだと思います。ですが、「ブレイクスルー」というのはもっと音楽そのものでアメリカの人々と通じ合うことを指すと思うので、ビルボードアワード受賞が彼らのSNSでの功績であることを考えると、ブレイクスルーとは言えないかなと思います。