1月に起きた京都市の会津小鉄会分裂騒動に絡む乱闘事件に関わったとして、6月16日、京都府警は神戸山口組の井上邦雄組長(68)を傷害容疑で再逮捕した。

 井上組長は6月6日、兵庫県警に逮捕されていたが、その容疑は、4年前に携帯電話を知人女性の名義で機種変更したという“微罪”。京都府警の逮捕は、本格的に組織壊滅を図る警察の序章となる動きだった。

「これまで神戸山口組と兵庫県警は、ある意味良好な関係を保っていたようです。ところが昨年9月、六代目山口組司忍組長に対し、神戸側組員が色紙を持ってサインを求める事件を起こし、兵庫県警は激怒。以来両者の関係は悪化していました。

 兵庫県警による神戸側トップの逮捕は、これまでなら考えられません。兵庫県警は、京都府警の井上組長逮捕を察知し、その前に逮捕することで、任侠団体山口組離脱後の体制などについて情報を収集したかったのでしょう」(ヤクザ界に詳しいジャーナリスト)

 両県警の動きの背景には、警察庁の意向が働いていた。6月5日、警察庁の坂口正芳長官は、全国の警察本部長を集めた会議で、「六代目山口組、神戸山口組両団体の大量検挙、突き上げ捜査の徹底による幹部の長期的な社会からの隔離、ひいては組織の壊滅を図られたい」と檄を飛ばした。分裂を続ける3つの山口組に対し、警察庁はトップ逮捕と組織壊滅の号令を下していたのだ。

 関西在住のある暴力団関係者は、井上組長逮捕が、神戸側最大組織である山健組の危機をもたらすとみる。

「井上組長が正式に起訴されれば、長期勾留もありうる。神戸側が分裂し、任侠団体山口組が結成されたことは、事実上、井上組長が兼務する山健組の分裂を意味している。当事者である井上組長の不在で、一気に組織は存亡の危機を迎えたといえる」

 一方、静観を続けるのは六代目側だ。前出のジャーナリストが言う。

「六代目側は高みの見物です。神戸側は勝手に分裂し、井上組長は逮捕された。もはや自滅するのを見ているだけ」

 とはいえ、六代目側も警察から狙われる立場にあることに変わりはない。

山口組分裂から1年10カ月で、六代目側、神戸側双方の逮捕者は2000人に及ぶ。まさに根こそぎで、今後も逮捕者は続く」(警視庁関係者)

 3団体の抗争が激化すれば、警察の思惑どおりだ。

※任侠の侠の字は正字です

(週刊FLASH 2017年7月4日号)