Bリーグ2016-2017 クライマックス(6)

 田臥勇太率いる栃木ブレックスが王者に輝き、Bリーグ初年度は幕を閉じた。その華やかな優勝争いが注目を集めた一方、残留と昇降格をかけた戦いが同時に行なわれていた。

 B1の下位4チームが『残留プレーオフ1、2回戦』を戦い、1回戦で敗れた2チームはB2へ降格し、残り2チームで2回戦を行なって、勝ったチームが残留となる。


チャンピオンシップの翌日に行なわれた入替戦で、B1横浜がB2広島に勝ち残留を決めた。 B2プレーオフには上位4チームが進出し、セミファイナルに勝利した2チームはB1昇格が決定。敗れた両者で3位決定戦を行ない、勝利したチームと、B1の残留プレーオフ2回戦で敗れたチームが『入替戦』を戦うシステムだ。

 わかりにくいシステムではあるが、B1とB2が昇降格する制度は「必要」との声は現場から多く聞こえてきた。B1で最下位となった仙台の志村雄彦キャプテンも、たとえ自分たちが降格したとしても「プロリーグで生き残る力をつけるためには必要な制度」と話す。

 ただ、残留プレーオフ1回戦と、チャンピオンシップの準々決勝と準決勝では、1勝1敗のあと”第3戦”という名の前後半5分で戦う『ミニゲーム』を採用したが、この制度に対する反対意見はあまりにも多かった。

 B1の横浜と秋田との残留プレーオフ1回戦。もつれた『第3戦』において横浜は、エース川村卓也がブザービーターで3ポイントを決めたことで生き延びたが、尺野将太ヘッドコーチ(以下HC)は反対の声を上げていた。

「リーグ戦を60試合もしておきながら、第3戦方式だと、たった10分で勝負を決めなくてはならない。状況によっては2戦目を捨て3試合目に備えなくてはいけなくなり、2試合目の価値が薄れてしまう」(尺野HC)ことがその理由だ。

 最終的には仙台と秋田がB2へ降格し、島根と西宮がB1に昇格。そして入替戦では、横浜が広島を下し、B1残留を決める結果で終わった。今後、よりよいリーグにするための検証材料として、昇降格をかけて戦った選手やコーチの声を紹介したい。

◆残留プレーオフ1回戦で敗退し、B2へ降格(秋田、仙台)

田口成浩(秋田ノーザンハピネッツ)
「ルールなので決まった以上は全力でやりますが、変えていきたいので言います。僕はbjリーグ時代からやっている前後半5分で戦う『第3戦』は反対です。40分で争うスポーツなのに、1試合の勝敗を10分で決めることはおかしいです。昨シーズンまでのNBLでは1勝1敗にもつれても第3戦は1試合行なっていたし、ファイナルは3戦先勝方式でした。NBLではやれていたことが、なぜBリーグでできないのか疑問です。

 ただ、僕たちが落ちたのは第3戦のルールのせいではありません。むしろ僕たちはホームで負けたのだし、シーズン中から惜敗していたので、これが自分たちの弱さだと受け止めています。

 負けたことが信じられず、しばらくはどん底でしたが、秋田の人や多くのブースターの声援に励まされ、水野社長が言った『ハピネッツはこれで終わりではなく、これからも続く』という言葉に立ち上がることができました。この負けた経験は生かさないといけない。今はどん底からのぼり詰めてB1で戦う姿を見せることが僕たちのやることだし、やってやろうという気持ちです」

志村雄彦(仙台89ERS)
「チームをB1に残すことが使命だったので、残れなかったことには責任を感じています。ただ、最下位になって自動降格するのではなく、残留プレーオフがあったおかけで最後まで立ち向かえたことは確かなので、これをいい経験にしていくしかない。周囲からは『強豪揃いの東地区は不利だ』とたくさん言われたけれど、自分は強豪と多く戦うことで強くなれると思ったので、得るものは多いシーズンでした。

 降格が決まった今、これから大事なのは、観客の皆さんに勝つ試合を見せるだけじゃなく、『見に来てよかった』と思ってもらえるものを提供していくこと。それは、どう自分たちの特色を作り出していくかに懸かっている。中にはお金をかけて選手集めをするチームがあってもいい。Bリーグはそれができる仕組みだから。だったら僕らは地方なので、力のあるチームにどう対抗するかの戦術を作り、チャレンジしたい気概を持った選手を集めていくしかない。そうやって力をつけて、B1にふさわしいチームになるしかないと思っています」

◆残留プレーオフを制してB1に残留

岡田 優(富山グラウジーズ)
「残留プレーオフは、負けてしまうとB2に降格という重いものがのしかかった戦いでした。B2に落ちてしまえば自分だけでなく、ブースターやスポンサーを含め、多くの方々が悲しむと思ったので、プレッシャーはかかっていたけれど『自分がチームをB1に残す』という気持ちでやりました。勝ったからよかったですが、こういう試合は2度とやるもんじゃないですね(苦笑)」

◆B2からB1へ昇格(優勝・西宮/準優勝・島根)

天日(てんにち)謙作コーチ(西宮ストークス)
「B1とB2の入替えシステムは日本のバスケ界にとって必要だったと思う。降格が関係ないB1の中位チームだと、チャンピオンシップに進出できなかったら安泰の戦いになってしまうけれど、僕らは絶対にB1に上がらないといけなかったし、次の年にまたB2でやるのは嫌だという思いがあるわけだから、そのプレッシャーの中で戦えたことでチームは上昇していった。来シーズンは『B1に生き残りたい』というモチベーションで戦えることは楽しみです」

寒竹隼人(島根スサノオマジック)
「シーズン当初からB2で優勝して、B1に上がるという明確な目標のもとで取り組んできました。プレッシャーはありましたが、B1に昇格して(B2の)ファイナルに進出できたことは、チームがプライドを持ってやってきた結果だと思います。島根はB1でプレーするに値するチームだと思っているので、1年でB1に上がれたことは、チームにとっても、島根県にとっても、大きな意味があることだと思います」

◆入替戦に勝利してB1に残留

川村卓也(横浜ビー・コルセアーズ)
「結果的には、秋田との残留プレーオフ1回戦で勝ったことが残留につながったわけですが、秋田との『第3戦』で決めたブザービーターの3ポイントについては、今のビーコルでは僕しか決められないと思い、自信を持って打ちました。

 ただ勝った立場からしても、前後半5分のミニゲームはやめてほしい。チャンピオンシップでもこのルールを採用していたけれど、しっかりともう1ゲームやるべき。それがバスケットボールです。

 残留プレーオフを経験したことは正直大変だったけれど、上と下を入替えすることはバスケ界の発展のためには必要なシステムだと感じました。僕らも残留をかけた試合を5試合もしたことで、チーム力は上がったと思うので。ただ、もう2度と入替戦はやりたくないですけど(苦笑)」

◆入替戦で敗れてB1昇格ならず

山田大治(広島ドラゴンフライズ)
「正直、B1とB2ではメディアの扱いや注目度は全然違うので、B1に上がりたい思いでやっていました。でも力が足りなかった。入替戦でB1のチームと戦ったことで、自分たちの足りなかったところが明らかになりました。ミスが多く、決めるところで決められず、リバウンドを取るところで取れず、小さなミスの積み重ねが敗因につながった。僕自身はチームを勝たせられなかった責任があるので、この悔しさを忘れずに、もう1年チャレンジします」

 Bリーグのミッションには、『世界に通用する選手やチームを輩出する』ことが掲げられている。現状、日本の国際競技力は低い。ならばなおのこと、『負けられない試合で勝ち切る』経験が積めるプレーオフの試合数増加は、必要なのではないだろうか。そういった意味では、『第3戦方式』やファイナルの『一発勝負』がふさわしいのかどうか、検証されるべきで、実際に戦う現場から声を上げることが重要だ。

 そんな中で、チャンピオンシップと同時に行なわれた昇降格の競争は、選手やチームの意識改革につながった。オフに突入したBリーグ。2年目の生き残りをかけて、戦力確保、営業努力など、再び新たな競争が始まる。

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