14日、日本代表の練習後に取材に応じた井手口陽介は、このチームで一番と言っていい独特の存在感を示していた。

金髪の井手口が記者たちの前に立ち止まる。初めての日本代表、初めての代表合宿、初めてのワールドカップ予選とあって最初に「今の心境は?」という質問が飛んだ。「……」。そこから11秒間の沈黙。もしかして質問が聞こえなかったのだろうか、と記者が焦りだしたところで話し始める。

「ま、できるだけいい準備をしておきたいです」

その後のも記者泣かせの答えが続く。一言だけの答えが圧倒的に多い。こんなやり取りが続いた。

――緊張は?
「特にないです」

――出たいという気持ちは強まりました?
「はい」

――心の準備は?
「はい、いつでも行けるようにしていきたいです」

――海外の選手から話は?
「話してはないです」

――監督からは?
「特にないです」

――個人面談は?
「ないです」

――監督の言葉で印象に残った言葉は?
「ないです」

――チームメイトは?
「最初は緊張しましたけど、みんな話しかけてくれて、今はあまり緊張はないです。かな?」

――次回はすんなりチームに入って行けそう?
「はい」

だが、井手口が3つ、しっかり答えた質問があった。それはいずれもこの合宿に関すること。

――合宿に参加して得たものは?
「すごいレベルの高い中で練習させてもらってるし、すごく吸収というか、得るものは一杯あります」

――具体的には?
「プレースピードだったり判断のスピードはレベルが違うという間隔があったし、初めてこういう体験する中で自分もやらせてもらってるので、何かを得て帰りたいです」

――伸ばさなければいけないと思った部分は?
「判断の速さだったり切り替えの早さだったり、もっとすべてにおいて質を上げていかないと通用しないと身を以て感じてるので、そこは全部レベルアップしたいです」

日本代表に来たことで得るものが多かったのだろう。スラスラとは言わないが、井手口はしっかりとした自分の言葉をつないで答えた。

井手口は決して人見知りではない。答えるときはしっかりと相手の目を見つめて話す。誠実な話しぶりは好感度が高い。そして落ち着きぶりは、まるで遠藤保仁だ。サウジアラビア戦で出たとしても、緊張してるようには見えないかもしれない。


【日本蹴球合同会社/森雅史】