名勝負に欠かせないのが、試合を取り仕切る審判団だ。W杯やCLのファイナルを担当した超一流から、その笛がしばしば物議を醸すレフェリーまで、EURO2016を裁く個性豊かな18人の“演出者”を紹介する。
 
※国際試合=CL、ELなどクラブの大会も含む。イエローカード、レッドカード、PKの1試合平均はすべて全公式戦が対象。
※成績は6月6日までの数字。
 
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Martin ATKINSON
マーティン・アトキンソン
イングランド国籍/1971年3月31日(45歳)
国際レフェリー歴/10年目
国際試合の担当歴:77試合
1試合平均:イエローカード=3.39、レッドカード=0.15、PK=0.23

 16歳でレフェリーを志し、副審の経験を経て34歳でデビューを飾った。師と仰ぐのは同じイングランド出身で、職業も警察官と共通項の多いハワード・ウェブ氏だ。


Felix BRYCH
フェリックス・ブライヒ
ドイツ国籍/1975年8月3日(40歳)
国際レフェリー歴/9年目
国際試合の担当歴:86試合
1試合平均:イエローカード=3.70、レッドカード=0.22、PK=0.31

 整然と理論を展開する弁護士のイメージとは裏腹に、ピッチでは冷静さを失いがち。13年にネットの外側を通ったボールをゴールと判定する世紀の大誤審を犯す。


CÜNEYT Çakır
ジュネイト・チャクル
トルコ国籍/1976年11月23日(39歳)
国際レフェリー歴/10年目
国際試合の担当歴:102試合
1試合平均:イエローカード=4.39、レッドカード=0.31、PK=0.32
 
 14-15シーズンのCL決勝をはじめ、この1~2年で数々のビッグマッチを担当。14年のW杯では伊紙から「今大会最高のレフェリー」と称賛を浴びた。趣味は卓球。


Carlos Velasco CARBALLO
カルロス・ベラスコ・カルバジョ
スペイン国籍/1971年3月16日(45歳)
国際レフェリー歴/8年目
国際試合の担当歴:74試合
1試合平均:イエローカード=5.60、レッドカード=0.37、PK=0.31
 
 前回大会は開幕戦を裁くも、曖昧な判定基準が非難の的に。警告を乱発する傾向があり、抗議した選手と諍いになる場面が少なくない。セルフコントロールが課題。
 
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Mark CLATTENBURG
マーク・クラッテンバーグ
イングランド国籍/1975年3月13日(41歳)
国際レフェリー歴/10年目
国際試合の担当歴:85試合
1試合平均:イエローカード=3.35、レッドカード=0.14、PK=0.22
 
 プレミアファンにはお馴染みの顔。意外にも代表のメジャー大会を裁くのは今回が初で、本人の意気込みは十分。国際レフェリー歴10年目の節目に、華を添えられるか。
 

William COLLUM
ウィリアム・コラム
スコットランド国籍/1979年1月18日(37歳)
国際レフェリー歴/10年目
国際試合の担当歴:80試合
1試合平均:イエローカード=3.24、レッドカード=0.25、PK=0.32
 
 荒れた展開でも落ち着いた振る舞いを心掛け、試合の“温度”を適切にコントロール。「本大会出場を逃したスコットランドに代わって全力を尽くす」と健闘を誓う。
 

Jonas ERIKSSON
ヨナス・エリクソン
スウェーデン国籍/1974年3月28日(42歳)
国際レフェリー歴/14年目
国際試合の担当歴:111試合
1試合平均:イエローカード=3.06、レッドカード=0.14、PK=0.16
 
 194センチ・94キロの大男で、その立ち姿には威圧感が漂う。かつては投資家として鳴らし、株式売却で巨万の富を築いた。4か国語を操るマルチリンガルでもある。
 

Ovidiu HATEGAN
オビディウ・ハツェガン
ルーマニア国籍/1980年7月14日(35歳)
国際レフェリー歴/8年目
国際試合の担当歴:61試合
1試合平均:イエローカード=5.31、レッドカード=0.32、PK=0.25
 
 医師として働く傍ら、主に母国ルーマニア・リーグを舞台に研鑽を積む。国際的には無名の域を出ず、CLの通算担当歴もわずか11試合と経験不足は否めないか。
 
Photographs by Getty Images
 

Sergey KARASEV
セルゲイ・カラセフ
ロシア国籍/1979年6月12日(36歳)
国際レフェリー歴/6年目
国際試合の担当歴:47試合
1試合平均:イエローカード=4.20、レッドカード=0.25、PK=0.37
 
 ロシア人主審のエントリーは、04年のイワノフ氏以来3大会ぶり。コッリーナ氏を彷彿とさせる風貌が印象的で、感情に左右されない安定したジャッジに定評が。大会後はリオ五輪も担当予定と多忙を極める。

 
Viktor KASSAI
ヴィクトル・カッサイ
ハンガリー国籍/1975年9月10日(40歳)
国際レフェリー歴/13年目
国際試合の担当歴:114試合
1試合平均:イエローカード=4.54、レッドカード=0.21、PK=0.34
 
 父親も国際レフェリーだったいわばサラブレッドで、選手との対話を大事にしつつ、スムーズに試合を進めるジャッジに定評がある。11年に史上最年少(当時35歳)でCL決勝を裁いた経歴を持ち、UEFA主催の国際大会では欠かせない存在だ。
 

Pavel KRALOVEC
パベル・クラロベツ
チェコ国籍/1977年8月16日(38歳)
国際レフェリー歴/11年目
国際試合の担当歴:91試合
1試合平均:イエローカード=3.88、レッドカード=0.15、PK=0.14
 
 警告を極力控え、選手との丁寧な対話でクリーンな試合を演出する。PKを3本与えた15-16シーズンのセビージャ対ボルシアMG戦(CL)の笛が話題になる。
 

Björn KUIPERS
ビョルン・カイペルス
オランダ国籍/1973年3月28日(43歳)
国際レフェリー歴/10年目
国際試合の担当歴:95試合
1試合平均:イエローカード=3.47、レッドカード=0.17、PK=0.24
 
 メジャー大会への参戦が3度目の実力者。なにより重んじるのはチームワークで、副審と密接に連携して小さなファウルも見逃さない。スーパーマーケットや美容室を営むビジネスマンとしての顔を持つ。
 
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Szymon MARCINIAK
シモン・マルチニアク
ポーランド国籍/1976年8月5日(39歳)
国際レフェリー歴/5年目
国際試合の担当歴:48試合
1試合平均:イエローカード=3.87、レッドカード=0.27、PK=0.37
 
 ここ数年でCLやELの注目カードを任されるようになった成長株だ。シーズンオフには積極的に国外に赴く勉強家で、13年8月にはJリーグの試合を担当した。
 

Milorad MAZIC
ミロラド・マジッチ
セルビア国籍/1973年3月23日(43歳)
国際レフェリー歴/7年目
国際試合の担当歴:79試合
1試合平均:イエローカード=4.37、レッドカード=0.21、PK=0.26
 
 会社経営を生業とし、どんなときも強気な姿勢を貫く。国際経験豊富なベテランながら、毅然を通り越した高圧的な態度が災いし、しばしば選手の反感を買う。抗議や侮辱には滅法厳しく、レッドカードを躊躇わない。
 

Svein MOEN
スバイン・モーエン
ノルウェー国籍/1979年1月22日(37歳)
国際レフェリー歴/11年目
国際試合の担当歴:84試合
1試合平均:イエローカード=2.92、レッドカード=0.14、PK=0.31
 
 試合の進行を妨げないジャッジを心掛け、多少のファウルはアドバンテージで流してプレーを継続するタイプのレフェリー。ピッチを離れれば救急救命員として人命救助に燃える37歳だ。
 

Nicola RIZZOLI
ニコラ・リッツォーリ
イタリア国籍/1971年10月5日(44歳)
国際レフェリー歴/9年目
国際試合の担当歴:95試合
1試合平均:イエローカード=4.67、レッドカード=0.28、PK=0.34
 
 誤審への風当たりが強いイタリアで長年揉まれ、最高峰のレフェリーにまで登り詰めた。14年のW杯決勝では完璧なレフェリングで熱戦を好アシストし、今大会も大一番を任されそうだ。
 
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Damir SKOMINA
ダミル・スコミナ
スロベニア国籍/1976年8月5日(39歳)
国際レフェリー歴/13年目
国際試合の担当歴:110試合
1試合平均:イエローカード=4.60、レッドカード=0.29、PK=0.21
 
 健康上の理由により16歳でサッカー選手を断念し、審判の道を志す。ミスジャッジは少ないものの、退場やPKなどの判定の際に躊躇しがちで、モウリーニョから「弱腰でナイーブだ」と酷評されたことも。
 

Clement TURPIN
クレマン・チュルパン
フランス国籍/1982年5月16日(34歳)
国際レフェリー歴/6年目
国際試合の担当歴:50試合
1試合平均:イエローカード=3.36、レッドカード=0.30、PK=0.31
 
 30代前半でリーグ・アンのビッグマッチを度々担当する、フランスの若手有望株。ただ試合によって判定の基準にバラつきがあり、しばしばその判定が物議を醸す。
 
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