(写真・AFLO)
2015年3月、肘にメスを入れるという、投手生命に関わる手術を受けながら、この男は凄みを増して帰ってきた。

2月に始まったキャンプ。ダルビッシュ有(29)の姿に、報道陣は言葉を失った。体全体がバランスよく大きくなり、「これまでの服が着られなくなった」という言葉も納得。体重は、自己最高の107キロまで増量されていた。

変わったのは肉体だけではない。所属事務所の方針で、日本のメディアにも愛想よく接することが日常化。

オフに野球賭博が問題になり、ある記者が、「携帯電話を調べられても大丈夫ですか?」と、今までなら凍りつく質問を投げた際も、「まったく問題ない。ただ、僕がヲタクレベルの筋肉マニアだってわかるだけですけど。レシピからトレーニングメニューなども、ここに入っています」と、大人の対応だった。

ここまで大きく変わったもうひとつの要因が、まだ入籍の発表はないが妻の山本聖子(35)、そして、2015年7月に生まれた男の子の存在だという。

「彼はブログなどで自分の言葉を発しているが、驚かされたのが『家族の存在の大切さがわかった』という言葉。そういう感傷的なことを言うタイプではなかった。苦しいリハビリを乗り越えられたのは、家族との時間があってという実感がこもっていた」(現地記者)

その証拠に、ブログでは「我が家にはなんと…レスリングルームがあります。ここではストレッチしたり、子供のトレーニングをしたりしてます」と、嬉しそうに綴っているのである。

実際に、赤いレスリングマットの上で、子供と一緒にトレーニングをおこなうダルビッシュの写真がアップされている。

また、近しい関係者には妻のことを「今まで出会った女性のなかで、すべてにおいて相性がいい。なぜもっと早くに知り合わなかったのか」と大絶賛。

サプリメントや炭水化物の摂り方のアドバイスを受け、トレーニング論に関しても夜を徹して話し合う。聖子は、現役引退後も夫と一緒にトレーニングをおこなうことがしばしばだという。

これまでも多くの選手がトミー・ジョン手術(肘の靱帯断裂の再建手術)を受け、復帰を果たした選手は80%超といわれるが、全盛期の成績を上回った選手はいるかというと、疑問符がつく。

だが、その定説は「ダルビッシュにはあてはまらない」と、メジャー評論家の福島良一氏は語る。

「成功例を統計的に見ると、術後1年2カ月後の復帰が理想的といわれていて、ダルビッシュの場合もこれにあてはまります。この手術をするならば、若ければ若いほどいい。30歳を過ぎるとどうしても回復が遅くなり、大塚晶文、松坂大輔、藤川球児らは全盛期にほど遠い球しか投げられなくなりました。でも、ダルビッシュは28歳でのこと。しかも研究熱心で、球速も出ているし、期待のほうが大きいですね」

658日ぶりのマウンド。ダルビッシュは、5イニング81球のボールを投げ、最速158kmを記録するなど絶好調。ダルビッシュの第二の野球人生の幕が開けた。

(週刊FLASH 2016年6月14日号)