米国大統領選挙の共和党候補指名レースで「トランプ旋風」が吹き荒れている。「暴言」を繰り返すトランプ氏に米大手メディアは危機感を強め、「指名阻止」の包囲網を敷きつつある。写真は米メディアが報道しているトランプ氏。

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2016年3月5日、米国大統領選挙の共和党候補指名レースで不動産王のドナルド・トランプ氏の勢いが止まらない。世界のリーダーを目指しているとは思えない「過激発言」を繰り返すトランプ氏。吹き荒れる「トランプ旋風」を前に、「いずれ脱落する」と予測していた米大手メディアは危機感を強め、「指名阻止」に向けた包囲網を敷きつつある。

物議を醸したトランプ発言の一つが、昨年6月の出馬表明で飛び出した「不法移民を防ぐため、メキシコ国境に『万里の長城』を造る」。メキシコからの移民を「麻薬や犯罪を持ち込む。彼らは強姦犯だ」と決めつけ、「建設費用はメキシコ側に払ってもらう」と言い放った。

この発言をフランシスコ・ローマ法王は今年2月のメキシコ訪問からの帰途、「橋を築くことでなく、壁を造ろうと、それだけを考えている人は、それがどこであろうと、キリスト教徒ではありません」と批判。すると、トランプ氏は「バチカンが過激派組織『イスラム国』(IS)の攻撃を受けたら、トランプが大統領だったらよかったと思うだろう」と切り返した。

出馬表明直後、米大手メディアの多くはトランプ氏を「泡沫(ほうまつ)候補」扱いし、「そう遠くない時期に共和党の指名獲得レースから脱落する」と踏んでいた。ところが予想に反して、トランプ氏の指名獲得は次第に現実味を帯びてきた。

ニューヨーク・タイムズは今年1月末、大統領選の指名争いをめぐり、民主党で前国務長官のヒラリー・クリントン氏、共和党ではオハイオ州知事のジョン・ケーシック氏を支持すると発表。その際、「経験もなければ、安全保障や世界規模の貿易について学習することへの興味もない」とトランプ氏を酷評した。

ウオール・ストリート・ジャーナルも社説で、「自分は億万長者であり、他者からの献金に依存しない。(献金者から)政治的影響を受けなくて済むので、(他の候補者より)優れている」というのがトランプ氏の主張だと紹介。その上で「ワシントンの政治に対する不満に応えている」としつつも、「自己中心的で、民主主義にとっては危険だ」と指摘した。

さらに、ワシントン・ポストは2月25日付で、共和党の有力者らに対し不支持を明確にするよう強く求める異例の社説を掲載。「思いも寄らなかったことが不可避になりつつある」として、強権的なロシアのプーチン大統領を称賛する姿勢を問題視し、トランプ氏が主張する不法移民1100万人の強制送還は「(旧ソ連やカンボジアの)スターリンやポル・ポト以来の強制措置だ」と批判して、「共和党は自らの品位の劣化に抵抗しないのか」と指名阻止を訴えた。

米メディア、特に大手紙は「アメリカの良心」を自負している。その良心に挑戦するかのように「イスラム教徒の入国禁止」などの言動を重ねるトランプ氏。メディアからの逆風をよそに、大統領レース序盤のヤマ場、1日の「スーパーチュースデー」でも11州中7州で勝利し、7月の共和党全国大会での指名獲得に近づいた。(編集/日向)