◇第一声で仕掛けてみる


土屋:僕はインタビューの5分前に、相手と話すことをイメージして深呼吸しています。インタビューの最初にやってることはありますか?

吉田:ボクはプロレス好きなんですけど、プロレスの場合はその試合に至るまでの流れ、つまり、こういう確執があってこういう展開で試合が組まれましたっていうものがベースにあるんです。だから、インタビューのときにもなぜこの取材が組まれたのかの流れを考えて、それを第一声で仕掛けてみる。最近やった紀里谷和明監督のインタビューだと「ずっといけ好かないと思ってたんですけど、最近イメージが変わったんですよ」って感じで、最初にそう仕掛けたら相手がどう出るか。

土屋:そこからはジャズ(アドリブ)なんですね。

吉田:完全にそこからは流れです。まず最初にこういう感じの流れになるだろうってことは想定しておきますけど、それをひっくり返されたらそれはそれでおもしろいから、それにどこまでアドリブで付き合えるかという感じですね。

土屋:インタビューされる時はどうなんですか?

吉田:気楽ですよ。何も調べなくていいですから(笑)。

土屋:調べずにインタビューするってのは、アカンですか。

吉田:単純に恐ろしいですよね。ただ、ボクの中でルールがあって、相手の人となりは相当調べるんですが、作品までは追わない。それは専門でやってる人が死ぬほどいるから。紀里谷和明監督を取材したときも、かなり意気投合して取材後には「LINEを教えて下さい」とまで言われましたけど、監督の作品は最新作しか見てなかったんですよね。『CASSHERN』の話をさんざんしたのに、実は見てなかった。

だからボクは「『CASSHERN』が叩かれてくやしい」みたいな監督の話にいくらでも乗れるんですよ。「再評価されるべきですよね!」って無邪気に言える。作品を見ちゃうと、どうしても自分の感情が入っちゃうじゃないですか。そこまでの作品じゃなかった場合、「いや、あれは叩かれて当然ですよ!」とか言いたくなっちゃうだろうし。

角川春樹さんの取材をした時もそうで、『男たちの大和/YAMATO』を作ってるころから交流が始まって、映画は大ヒット。でもボクは観てないんですよ。見てないから無邪気に「完全復活おめでとうございます!」って無邪気に言えるじゃないですか。見てなければ”角川春樹、最高!”だけでいける。