イリス・ヴァン・ヘルぺンが生んだ「彫刻のようなドレス」たち

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オランダ出身のデザイナー、イリス・ヴァン・ヘルペン。彫刻を思わせる独創的な服を次々と世に発表してきた彼女が、米国で初の個展を開催した。彼女が特別に選んだ4作品を、本人のコメントとともに紹介する。

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2/7「Voltage Dress」レーザーカットしたポリエステルとマイクロファイバーを使って製作。

3/7「Refinery Smoke Dress」材料は金網と牛革、コットンなど。

4/7「Hybrid Holism」コットン、チュール (ベールなどに用いる網状の絹)、金属でコーティングされたストライプを使って製作。

5/7「Hybrid Holism Dress 」UV硬化型ポリマーを材料に、3Dプリンターを使って製作。

6/7「Moon Dress」レジンを使って製作。

7/7「Radiation Invasion」合皮と金箔、コットン、チュールを使って製作。

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「Chemical Crows Dress」子ども用の傘の骨とレザーを使って製作。

「Voltage Dress」レーザーカットしたポリエステルとマイクロファイバーを使って製作。

「Refinery Smoke Dress」材料は金網と牛革、コットンなど。

「Hybrid Holism」コットン、チュール (ベールなどに用いる網状の絹)、金属でコーティングされたストライプを使って製作。

「Hybrid Holism Dress 」UV硬化型ポリマーを材料に、3Dプリンターを使って製作。

「Moon Dress」レジンを使って製作。

「Radiation Invasion」合皮と金箔、コットン、チュールを使って製作。

イリス・ヴァン・ヘルペンをファッションデザイナーと呼んでよいものだろうか。彼女は、確かに人が身に付ける衣装をつくってはいるのだが、その実験的なデザインは、人が着ることを想定しているようにはとても見えない。どれも非常に手が込んでいて、隅々まで精緻にデザインされており、着るのはもちろん触れるのすらためらわれる。

ヴァン・ヘルペンは、磁石や傘の骨、パイプ状の樹脂などから数々のドレスを生み出してきた。下絵を描くことはほとんどなく、目の前の材料の形に従って作品をつくる。

「わたしのデザインのほとんどは、手にした材料に素直に反応してつくったものです」と彼女は話す。「テクニックや材料によって、とるべきアプローチや手順は異なります。それを探り出すのがわたしの役目であり、常に新しい方法を見つけ出し、それを使って作品をつくりあげるのです」

彼女は、生物学者やコンピュータープログラマー、材料学者たちの協力を得て、衣服というよりはある種の建築物のような作品の数々をつくっている。まるで、たまたま人体を土台にして建てられることになった建築のようだ。

ヴァン・ヘルペンはこれまでもファッションショーや博物館で自らの作品を発表してきた(数多くのアーティストとのコラボレーションでも知られている。ビヨークやレディ・ガガの名前を挙げれば納得していただけるだろう)。そしていま、初めての米国でのショーを迎えようとしている。そのタイトルは「イリス・ヴァン・ヘルペン――ファッションの変容」。このショーは、最近10年間の15のコレクションから45の作品や展示品を概観するもので、ヴァン・ヘルペンのもつ技術や創造性がよく理解できる。

わたしたちはヴァン・ヘルペンに、彼女のキャリアのなかから特に重要で独創的な作品を選んでほしい、と依頼した。以下、彼女が自ら選んだ作品の数々を見てみよう。

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「Magnetic Motion Dress」透過性のフォトポリマーを使い、ステレオリソグラフィー(光造形法)によって製作。

氷のドレス、マグネティックモーション・コレクションから

「このドレスでは、水の一瞬の動きを捉えようとしました。液体ですが、まるで氷のように見えます。昔よくダンスをしていましたが、ステージ上で踊る水の動き (細かい所作から大きな表現まで) こそ、自分の作品の大切な魅力です。

実際にこのドレスを着た女性の姿を見れば、肌とドレスとがひとつになっているのがわかるでしょう。どこまでがドレスでどこからが肌なのか見分けがつかないはずです。

だいぶ昔のことになりますが、3Dプリンターで水のドレスをつくろうとしたことがあります。でも当時はまだ、透明感のある材料で細部まで精巧でしかも品質の高いドレスをつくることなどできませんでした。だから、手づくりになったのです (使ったのはホットガンとプライヤー、それに膨大な労力でした)。それから何年も経ったいま、わたしは3Dプリンターで水の動きを表現することに成功しました。氷の形です」(ヴァン・ヘルペン)

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「Wilderness Embodied」材料はレーザーカットによってつくられたシリコン製の羽やカモメの頭蓋骨、真珠など。

鳥のドレス、野生を体現したコレクションから

「これは爬虫類の革を肌色に塗ってつくりました(肌を模した素材で、映画でリアルなマスクをつくるのに使われます)。このドレスは、人々の内なる野生と、人間を取り巻く自然との関係とにヒントを得たものです。

3羽の鳥が互いに争いながら、なんとか飛び去ろうとしています。この羽は普通の羽とは動きがまったく異なります。このドレスを着ると、羽根があらゆる方向に振動し、まるで動いている鳥を見ているような不思議な視覚的効果を生み出すのです。

この作品では、人と自然の間にある超現実的な動きを視覚化したかったのです。最先端の技術を使っているように見えるかもしれませんが、すべて手づくりです」(ヴァン・ヘルペン)

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「Skeleton Dress」ポリアミドを使って製作。PHOTOGRAPH COURTESY OF INGRID BAARS

骸骨ドレス、カプリオール(跳躍)・コレクションから

「これはわたしのスカイダイビングへの愛情にヒントを得た作品です。1分間の自由落下の間に感じる無限のエネルギーを視覚化しました。その時わたしは、自分の体の内部を異常なほどよく感じ取ることができるのです。

ドレスは3Dプリンターで製作し、元になるファイルは建築家のアイザイ・ブロックの助けを借りました。2カ月間集中してそのファイルをつくり、印刷には1週間かかりました。

普通、機械(3Dプリンター)がつくったものなら完全に違いない、と思うでしょう。でもこのドレスは、そうとは限らないというよい例です。ドレスが印刷されている間、小さな「欠陥」がたくさん発生しました。材料が激しく加熱されるからです。そのため骨は不規則になってしまいましたが、そのためかえってリアルに見えます。

このドレスのデザインのために調べたのは人間の骸骨ばかりではありません。さまざまな動物(蛇や鳥や昆虫)のさまざまな姿勢での骨格の様子を数多く調べ、それらがミックスされて、この現実には存在しない骨格の構造が完成したのです」(ヴァン・ヘルペン)

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「Mirror Dress」鏡のカットから組み立てまで、作業はすべて手作業で行われた。

鏡のドレス、ヴォルテージ・コレクションから

「これは、実験家のカルロス・ヴァン・カーンプの作品にヒントを得ました。このコレクションでは、モデルはテスラ・コイルの上に立って、そのコイルから出される電力の変化に合わせて踊ります。

時々、1mくらいの大きな火花が飛びます。その一瞬のエネルギーの美しさ、そしてモデルの体から放たれるスピード感に溢れた動きは、わたしがこれまで目にしたなかでも最も美しいもののひとつです。このドレスではまさにその瞬間の美を表現しました。

製作には1年近くかかりました。模様はとても複雑でしたし、鏡のどの部分も手でカット、組み立ても手作業でしたね」(ヴァン・ヘルペン)

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