マヨネーズ&辛〜いソースでフィンランドの人気バンド、チルドレン・オブ・ボドムの緩急に富んだサウンドをイメージした「ヘイトクルー・デスロールチキン・オーバーライス」(1200円税抜)。

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CDが売れないなど、音楽業界が冬の時代といわれて久しい今日この頃。そんな中やけに活気があるのが、30〜40代の大人世代の間で再ブームのきざしがあるへヴィ・メタルのシーンだ。
アイドル×メタルをコンセプトに登場したBABYMETALが国内外で人気爆発したのをきっかけに、メタル系のライブ&フェスをはじめ、CDや雑誌、Tシャツといったグッズ関係を含めたシーン全体が熱を帯びてきた印象がある。

そこで本題に入るのだが(強引)、肉やチーズなどガッツリ感ある食材+バンドやミュージシャン、楽曲の名前をもじったネーミングでメタラーに局地的な人気を博しているのが“料理勉強家”のヤスナリオ氏が提唱する「メタルめし」。以前にコネタでもレシピ本『メタルめし!』を紹介していて、現在はメタルカルチャー誌『ヘドバン』でも連載中。その、わかる人なら爆笑&脱力必至のメニューを実際にメタルを聴きながら味わえる実店舗が6月13日にグランドオープンすることに……。さっそく、高円寺駅から徒歩5分程度の「高円寺メタルめし」にお邪魔した。

店に入るとすぐ目につくのが、若干ゆる〜いニュアンスの壁画。メタル版『最後の晩餐』的なこの壁画には、シーンの重鎮であるオジー・オズボーンを中心に、先ごろ来日したジューダス・プリーストのロブ・ハルフォード、KISSといった大御所ミュージシャンの姿が。そしてよーく見ると…あのBABYMETALもいる! 

この店の看板や店内の壁画などは、ヤスナリオさんが敬愛するマンガ家・堀道広さんに依頼したのだそうだ。まずは実店舗をオープンするにいたったきっかけをうかがったところ……

「レシピ本を出した頃から、漠然とお店を持つことは考えてまして。連載も持ったことで、僕の名前だけは知ってくれてる方が増えたんですね。それで今年頭くらいに“メタルめしレボリューションを起こすなら今じゃないのか!?”って急に思い立って」

メタルめしレボリューション、結構な急展開である。そしてここ高円寺に出店したのにはこんな理由があるのだそう。
「昔から中央線沿線が好きだったんですけど、その中でも高円寺はロックバーが多くて、最近はジャパメタBARなんかも出来てるんですよ。ロック・シティなイメージが強かったので、やるならこの街しかない!と思ってました。あとはミュージシャンや役者さんなんかにも愛されている街だし、ユニークな大人がとにかく多い。自分もだんだんその世代に近づいてきたし、そういう方々に楽しんでもらえるようなお店を出したいなって」

さて実際にどんな“メタルめし”が出てくるのかというと、例えばメタリカの名盤『マスター・オブ・パペッツ(邦題:メタル・マスター)』のジャケ写の十字架をポテトで再現し、ジューシーなチキンナゲットと組み合わせた「マスター・オブ・ナゲッツ」。メタル界の重鎮アイアン・メイデンのスピードナンバー「2ミニッツ・トゥ・ミッドナイト〜悪夢の最終兵器(絶滅2分前)」をイメージした、スピーディに提供できるそうめんメニュー「2ミニッツ・トゥ・ミッドナイトヌードル(深夜の最終兵器・満腹2分前)」といった具合。他にも、日本でも根強い人気を誇るドイツのメタルバンド、ハロウィンの名曲「イーグル・フライ・フリー」をもじった「カボチャサラダ・ベーグルフライフリー」は、バンドのシンボルでもあるカボチャを使ったサラダにベーグルをフライした羽をあしらったりと、手の込んだ“だじゃレシピ”が特徴的だ。

しかし「“アボカドドライカレー”を略したらAC/DCカレーになるんじゃないか? ということで、アボカド入りのドライカレーにAC/DCのギタリストのアンガス・ヤングの帽子をイメージしたヤングコーンをあしらいました」といった、若干の強引さが否めないものも……。

また、ビジュアルでいうと、BABYMETALをモチーフにした「赤と黒のモッシュッシュマリネ」はなかなかキュート。
「彼女たちのイメージカラーである赤と黒にこだわって、ミニトマトとオリーブ、あとモッツァレラチーズをハニーマスタード風味のマリネにしました。メンバーのYUIMETALさんが大のトマト好きというコネタも絡めつつ、“モッシュ”(※ライブで体をぶつけ合うこと)をイメージして、ビンに詰めた状態でお出ししてシェイクしてから食べてもらう感じで…ちょっと流行にのってみました(笑)」

手に入りやすい食材や調味料を使っていたレシピ本に掲載されていたものとは異なり、店で味わえるメニューはスパイスなどによりこだわっておいしさを追求。盛り付けも「基本的に悪ノリ」という方向性は変えずに、食材数を増やすなどより華やかにモデルチェンジしているのだそう。
またヴィンテージショップでそろえたという食器類は、映画『STAR WARS』モチーフのグラスなど、70〜80年代テイストにこだわっているそうなので、こちらにも注目してもらいたい。

バーめぐりの一軒目として腹ごしらえに活用するもよし、友達とライブ帰りなどにオフ会で利用するもよし。ジャパニーズメタルの重鎮・ANTHEMの柴田直人さんなどヤスナリオさんと交流のあるミュージシャンからも注目を集めているそうなので、ご飯を食べていたらミュージシャンにばったり……なんてこともある、かも?

店を切り盛りしつつ複数の料理連載を持つヤスナリオさんに、レシピ考案で一番苦労することを聞いてみたところ、
「レシピのネーミングにだじゃれを絡めるのが一番大変で、かつ楽しいポイントです。曲名に絡めるとしたら、そのバンドの一番の代表曲と絡めたいっていうこだわりがあるので…。上手いレシピを思いついて『キターーーーー!』っていうときもありますし、たまに強引すぎて自分で笑っちゃうようなものもあるんですけど、その脱力感も大事なんじゃないかなって」

カウンターのみのアットホームな空間で適度なボリュームでメタルを聴きつつ味わう、ガッツリ“だじゃレシピ”。メタル好きな人、そして何より楽しいことが好きな人におすすめしたいグルメスポットだ。
(古知屋ジュン)