コンビニやスーパーマーケットで販売されているような牛乳とは異なり、ほとんど手を加えずに「限りなく牛からしぼったままの状態の乳(生乳)に近いもの」として販売が認められている牛乳が「特別牛乳」です。特別牛乳は日本全国でも五カ所でしか製造されていないとのことですが、京都にはこれを製造・販売している「クローバー牧場」があるので、実際に普通の牛乳とはどれくらい味が異なるのか確かめるべく買いに行ってきました。

農事組合法人 クローバー牧場 |特別牛乳さく乳処理場|京都府相楽郡加茂町

http://www.cloverfarm.or.jp/

◆特別牛乳とは?

「特別牛乳」というのは、牛乳や乳製品のパッケージ裏に書かれている「種類別名称」の一種。簡単に言うと、種類別名称に「牛乳」と書かれた、最もよく飲まれているであろう牛乳よりもワンランク上の牛乳のようなもの。



グリコ乳業のFAQによれば、「牛乳」はしぼったままの牛の乳(生乳)を加熱殺菌したもので、「加工乳」は牛乳分であるクリームや脱脂粉乳・バターを使用して成分を調整したもの、「乳飲料」は乳製品を主体に牛乳本来の成分以外を一部使用したもの、という分類になるようです。



これに対して特別牛乳は、「特に優れた飼育環境と他の牧場や牛乳処理施設では見られない特別な施設を設置することで製造を許可される牛乳」とのこと。実際に特別牛乳の製造を国から許可されている施設は全国に五カ所しかなく、その中のひとつが京都のクローバー牧場というわけ。このクローバー牧場では、「牧場」と「牛乳を殺菌処理したりパッケージに詰めたりする施設」が同一の場所にあるので、生乳は外気に触れることなく、搾乳してから1時間以内に低温殺菌処理できるようになっているそうです。



◆クローバー牧場へ

そんなわけで実際にクローバー牧場に特別牛乳を買いに行くことに。

クローバー牧場の住所は「京都府木津川市加茂町観音寺今辻38」で、京都と奈良の県境にあります。

最寄り駅はJR加茂駅。ここから30〜40分歩けば牧場まで行くことができるのですが……



奈良交通バスの「JR奈良駅西口行き」に乗れば、10分程度でクローバー牧場のすぐ近くまで移動可能。



クローバー牧場の最寄りバス停は「浄瑠璃寺口」です。



バスを降りると反対車線にこんな感じの細い道があるので……



道なりに坂をのぼればOK。この道を少し歩いたくらいから家畜の臭いがほんのり漂ってくるので、牧場が近づいていることも実感できます。



坂をのぼりきると青いカラオケを発見。



カラオケと道を挟んで向かい側に、クローバー牧場の看板があります。どこからどうみても牧場のようには見えず、何かのトラップかと疑ってしまいそうですが、ここから中に入り……



敷地内を少し歩くと「牛乳直売所」の看板も出現します。



看板に従ってさらに奥に進みます。なんだかイメージしていた「牧場」とはかなり異なる気がしますが、気にせずズンズン進むと……



こんな建物と……



牛舎を発見。



建物の前には「特別牛乳」と書かれた車が止まっており、ようやくクローバー牧場に到着できたことに気づきます。



建物の入り口を見ると「直売所」の看板があるので、ここで特別牛乳が購入できる模様。



ブザーを押して少し待つと、牛舎の方から人がやってきます。特別牛乳を購入する前に「牛舎の方も見ていかれますか?」と聞かれたので、牛乳はひとまず我慢しておいて牛舎の方を見学させてもらうことに。



そんなわけで牛舎の外側にあるコンクリートの道を歩きながら特別牛乳をしぼりだしてくれる牛たちを見てみます。



のんびりぐったりと過ごす雌牛たち。



目の前で牛たちをじっくり観察してみます。



「立つのもくたびれる……」といわんばかりに、こぞって床に寝そべる雌牛の群れ。



こちらの牛たちはカメラが気になる様子。



牛舎では50頭ほどの牛を飼育しているそうで、写真に写っているのは全て生乳を出してくれる大人の雌牛です。



少し前までは実際に牛舎の中にまで入ってもOKだったそうですが、2010年の口蹄疫の流行以降は牛舎の外側から牛を眺めるだけにしてもらっている、とのこと。



雌牛たちがもしゃもしゃ食べているのは、アメリカからわざわざ取り寄せているという牧草。なぜアメリカから牧草を輸入しているのかというと、日本の牧草は湿っており、牛の体にはあまり適していないからだそうです。



生まれて一カ月くらいの小さな子牛もいました。



乳を出す雌牛たちとは別に、若い牛たちも飼育されています。



そしてクローバー牧場専用重機も登場。



ときたま「モー」という鳴き声が響き渡る以外は非常に静かで、のんびりとした時間が経過する安らぎの空間でした。



そんなわけで牛舎を十分満喫したら、いよいよ直売所へゴー。



初めてクローバー牧場を訪れた人は、特別牛乳を試飲させてもらえるとのこと。さっそくグビッと飲み干してみると、濃厚でコクがあるのですが、さっぱりしていてグビグビ飲めるような非常に独特な口当たりに驚かされます。濃 旨ミルクのようなガツンと濃厚なミルク味を想像していただけに、ほんのり甘くて優しい特別牛乳の味わいには非常に驚かされました。コップの表面には白いつぶつぶがくっついているのですが、これは均一処理していないクリームだそうです。



直売所で販売しているのはキンキンに冷えた特別牛乳の900mlボトル(税込810円)と500mlボトル(税込520円)、それに加えて特別牛乳から作られたヨーグルトは300g(税込350円)の3種類のみ。



牛乳やヨーグルトを購入するとビニール袋の中に氷と一緒に牛乳やヨーグルトを入れてくれるのですが、冬の寒い時期はともかくとして暑い時期には保冷バックなどを持参していく方が購入した牛乳・ヨーグルトを新鮮なまま持ち帰れそうです。



◆飲み比べてみた

というわけで、購入してきた「京都の特別牛乳」と「京都のヨーグルト」がコレ。



「京都の特別牛乳」は、種類別名称にしっかりと「特別牛乳」と書かれており、無脂乳固形物が8.5%以上、乳脂肪分が3.4%以上、原材料はもちろん生乳100%で防腐剤や添加物などは一切入っていません。殺菌方法は「63度、30分間殺菌」で、この低温殺菌処理のおかげで「牛乳独特のニオイ」がない飲みやすい牛乳になっています。



また、「京都の特別牛乳」は生乳の中に含まれる脂肪球を砕いて均一処理しないノンホモジナイズ(ノンホモ)牛乳でもあります。ノンホモ牛乳は生乳本来の脂肪球を砕かないので、体内の胃液や消化酵素の働きを受けてゆっくり消化吸収されます。脂肪球の中にあることが多い乳糖もむき出しにならずに済むので、牛乳を飲むとお腹を下したりする「乳糖不耐症」の人が飲んでも、お腹を壊さないケースが多いそうです。

ノンホモ牛乳は栓を開けずにしばらく置いておくと、上部にクリームが溜まります。よく振って飲むもよし、クリーム部分を取り除いて低脂肪牛乳として飲むもよし、クリームをコーヒーに入れて楽しむもよしなので、ノンホモ牛乳特有のいろいろな楽しみ方も可能。



なお、防腐剤などは一切使われていないので賞味期限は購入後から4日間でした。



そんなわけで、「京都の特別牛乳(特別牛乳)」を「おいしい牛乳(牛乳)」と「牧場の大地(乳飲料)」と飲み比べてみることに。



種類別名称でいうと、明治の「明治おいしい牛乳」は牛乳。殺菌方法は130度の高温で2秒間行われているそう。



森永乳業の「牧場の大地」は乳飲料に当たります。



液体の色を見比べてみました。写真では少し分かり辛いですが、乳飲料は色が黄色く、他の2つは真っ白。飲み比べる前に3つの香りをかいでみると、いわゆる「牛乳独特のニオイ」が特別牛乳からはしないことに気づきます。この牛乳独特のニオイは、生乳を高温殺菌する際にタンパク質が焦げて発生するものだそうで、低温殺菌で処理している新鮮な特別牛乳ならばこの「牛乳独特のニオイ」がないわけです。

実際に飲み比べてみたところ、特別牛乳は濃厚でコクがありほんのり優しい甘みを感じるのですが、サラリと飲めてしまう不思議な飲み物といった印象。いつも飲んでいる牛乳のあの独特なニオイがないので、「これ、本当に牛乳?」と疑うレベルです。しかし、生クリームに似た非常に濃厚なクリーム感があり、乳製品感は非常に強め。これを飲んだ後に普通の牛乳や乳飲料を飲むと、味が非常に薄く感じて「本物の牛乳とはこういうものか……」としみじみと実感できました。



続いてクローバー牧場の特別牛乳からできた「京都のヨーグルト」も見てみます。



内容量は300g。



原材料名には「牛乳」とだけ記されている、非常にシンプルなヨーグルトです。



こちらの賞味期限は牛乳よりも1週間長め。



「京都のヨーグルト」は添加物や凝固安定剤などは一切使用しておらず、特別牛乳と乳酸菌で作られたヨーグルト。



せっかくなので、「京都のヨーグルト」は「明治ブルガリアヨーグルトLB81 プレーン」と比較してみます。



それぞれのヨーグルトを器に出してみると、明らかに色が異なります。「京都のヨーグルト」はヨーグルトから出ている液体がほんのり緑色で、これはホエーという栄養豊富な水分。味はブルガリアヨーグルトよりも酸味が少なく、コクがあるもののサラリと食べられる感じで、シンプルで素材の良さを活かしたヨーグルトといった印象。



◆まとめ

実際に特別牛乳を飲んでみて感じたのは、特別牛乳はこれまで飲んできた牛乳とは全く異なる飲み物である、というもの。特にクリーム感が強いので、生クリームなどが好きな人には好まれそうで、フルーツなどとの相性も抜群。一度特別牛乳を飲んだあとに牛乳や乳飲料を飲めば、あまりの味の違いに「今まで自分が飲んできた牛乳とは一体……」と、これまで牛乳に対して持っていたイメージをめちゃくちゃに破壊されました。

鼻を抜ける独特な香りには好き嫌いがありそうですが、これが苦手な場合はフルーツやはちみつなどを混ぜればおいしく飲めそう。誰でも一度は飲んだことのある牛乳だからこそ、一度「特別牛乳」を飲んでみて、自分の中の牛乳に対するイメージをぶち壊してみるのも悪くなさそうです。