神戸元町映画館。のぞいてみたくなる雰囲気があふれている。

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日本で映画の発祥地は「神戸」だという。

神戸元町映画館設立者に言わせれば、「神戸が映画史上特別なわけではないと思います。ただわたしにとっては特別な街ですが」とのこと。

神戸は、映画評論家の淀川氏が居た街でも有名でもある。淀川氏を頼りに神戸に来た映画関係者もいるそうだ。
そんな神戸には歴史ある元町商店街があるが、そこには小さな間口から独特の雰囲気があふれている場所がある。それが「元町映画館」だ。

元町映画館支配人に、この個性的な元町映画館についてお尋ねしてみた。

Q.この元町映画館で上映する作品を選ぶ基準をお聞かせください。
A.単館のスクリーン数が非常に少なくなっている神戸ですので、「神戸で観られる映画の種類を減らさない」ことを目標に、他館では積極的に上映しないようなホラー、アジアのアクションやインディペンデントの作品を含め、なるべく多様な作品を上映することにしています。作品ごとにまずは当館に来てくださるお客さまを思い浮かべ、「観たいと思う人がいるかどうか」を考えて作品を選びます。

Q.手作りの映画館と聞きました。何かエピソードがあればお聞かせください。
A.場内の天井やステージは、黒いペンキを使ってみんなで塗りました。スクリーンのカーテンも、吸音のため壁に貼っているプリーツ状の布も、絨毯(じゅうたん)も全て皆で裁断し縫って設置したものです。また、普通の店舗物件を工夫して映画館に改装したもので、劇場の天井が低く、映写室の前を横切ると影がスクリーンに映ってしまいます。
そのため映写室の前ではかがんで通っていただくなどお客さまにはご不便をおかけしていますが、それもひとつの味わいとして受け入れていただけたらうれしいです。

Q.生活の中に潤いを与えてくれる空間、喜び、哀しみを見つめなおせるような場所として、誕生したということが元町映画館サイトで紹介されていました。支配人にとって映画とは何ですか。
A.映画を観る時間は、自分自身の内側を見つめる時間であると私は思っています。自分はなにを面白いと思い、なにを哀しいと思い、なにに怒りを覚えるのか。日常生活を送っている何時間、何日、何年よりも多彩な感情を体験できるのが映画です。映画を通して自分を発見してゆく、そのようなものだと思っています。
神戸元町映画館の中にいると、場所の雰囲気、上映作品、観客にまぎれる自分がいると、なにか自分なかに不思議な化学反応が起きそうな感じになるものだ。

ただいま元町映画館で上映されている作品、「めぐり逢わせのお弁当」は、カンヌ国際映画祭批評家間観客賞など、たくさん受賞している作品である。

このストーリーの舞台はインド。インドではお昼どきにお弁当配達人が、オフィス街で働いている家族へ、妻の代わりにお弁当を届けるシステムがある。確実に届けられるシステムなのに、なぜか別の人に届けられてしまった、めったにないアクシデントから始まるお話。料理が心を温める、心を深める、そんな内容となっている。

小規模な予算で作られたのに精錬された語り口が特徴のこの作品。元町映画館の支配人が願っているように、多くの人がここで何かを感じて、自分を発見できるような作品だと思う。元町映画館に足を運んで観てみるのはいかがだろうか。
(W.Season/ 編集プロダクション studio woofoo )