こんな感じでお酒が静かに眠ります。

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焼酎ブームで日本が沸いたのは何年前か。それ以降、焼酎は安定した人気を誇っている。

いろんな焼酎を飲んでも納得の味を見つけ出せなかった人、お酒にこだわっている人、何より焼酎が好きな人。
焼酎を預かってもらって数年後に熟成した味を楽しむ、こんなサービスはいかがだろうか。

それは泡盛の「預かり古酒」というシステム。これは特製泡盛を酒造の地下や洞窟などに寝かせて、数年後に発送してくれるサービスのことだ。
寝かせることでどう味が変わるのか、「THE・OWNERS(ザ・オーナーズ)古酒預かりサービス」をされている沖縄県の泡盛メーカー、忠孝酒造さんに伺ってみた。

預ける期間は基本が5年。料金は商品代、保管料(5年間)、送料など込みで10,800円。
「オーナーズで預かる泡盛は、マンゴー酵母という新しい酵母を使用しています。マンゴー酵母は古酒香の一つ“バニリン”のもとになる成分を多く含んでおり、熟成により甘く芳醇な古酒香豊かな泡盛になります」という。まさに古酒のために作られたマンゴー酵母仕込みの泡盛。そのまま飲んでも美味しそうだが、これを地下蔵に眠らせる。
どんな場所かといえば、日光が当たらない冷暗所。常時温度を管理し、スタッフ以外は立ち入り禁止。さらに「クラシック音楽をかけて熟成に最も適した環境を整えています」という念の入れようだ。

実はこの、地下に眠らせる焼酎。というのは、最近の流行りではない。琉球王朝時代の文献を紐解いてみると、「首里や那覇の旧家にはそれぞれ秘蔵の古酒があったといわれ、旧家の主人は銭蔵の鍵は家族に預けても、古酒蔵の鍵はいつも自分で保管していた」と残るほど。それほどまでに古酒は貴重な家の財産として保管されていたという。

やはり寝かせれば寝かせるほど、味は変わっていくのだろうか。
「味は格段に変わります。まず、古酒の定義として、3年以上の年数が必要です。5年古酒は、熟成が進み古酒香が出始めている頃ですが、まだアルコールの刺激は残っています。さらに追加で15年、最大20年預けることができますが、そこまで熟成が進むと芳醇な香りとトロッと溶けるような味わいになります。アルコールの刺激はほとんど感じられません」
と、焼酎好きにはたまらない味になるようだ。

利用者は40〜60代が多く、「最近では家族の記念日や贈答品として、古酒となる日を楽しみに預ける方が多くなっています」という。焼酎は寝かせれば寝かせるほど味が変わっていく。どんな技を使うことよりも、じっくり時間をかけて熟成させることが何より贅沢で、美味しくなるための決め手なのだそう。

数年後に特別な記念日のある人、子供の成人の記念に一緒に飲みたいという人、数年後に定年退職を迎える人など、数年後に思いをはせて眠らせるお酒はまるでタイムカプセル。今から5年後、15年後、20年後を思い浮かべながら、時間だけが作れる特製のお酒に挑戦してみては。
(のなかなおみ)