芋煮会は今後日本にとって必須のコミュニケーションイベント!?

写真拡大 (全3枚)

芋煮は東北の人々にとってソウルフードだ。芋煮とは、主に山形、宮城、福島を中心に作られるサトイモを使った鍋料理のことで、味付けは各地域、家庭により千差万別である。そして秋に河川敷に集まり、家族、友人などと行う芋煮会は、年中行事の1つになっている。

この芋煮会を東北以外の地域でも、コミュニケーションイベントとして広げていこうという動きがある。芋煮会は今の日本で希薄になりがちな、人と地域のつながりを作る、大切なポイントになりうるという。芋煮会の魅力とは何なのか? 全日本芋煮会同好会でお話をうかがった。

――芋煮会が今の日本に必要な理由とは何ですか?
芋煮会には「持ち寄る」「みんなで作る」「分け合う」というコミュニケーションの重要な要素が集約されています。各地で開くことによって、人と人、地域と地域のつながりが活性化されます。例えば以前、年配者が多く集まる東京・巣鴨で行われた芋煮会をお手伝いしたことがありました。巣鴨には、若い頃に東北から東京に出て来た人も多く住んでいて、芋煮会をしていると、そういう方々が懐かしがって声をかけてくれます。芋煮会は、地域とのつながりが希薄になりがちな年配者と、コミュニティをつなぐ架け橋になれたのです。また全日本芋煮会同好会は、東日本大震災をきっかけに、日本を元気にしようというイベントの中で生まれました。災害が起きた時の炊き出しとしても、芋煮会は1つのスタイルになれます。

――芋煮といっても各地で味付けはさまざまなので、レシピがぶつかったりしませんか?
芋煮会というと、毎年山形市でクレーンを使い巨大鍋をかき混ぜるような大規模な芋煮会を想像する人もいると思いますが、私たちの芋煮会は1つの鍋で全員分は作りません。昨年、東京都江東区の若洲海浜公園で「東京一の大芋煮会」を行いました。参加者270人(全日本芋煮会同好会、山形未来ラボ、関東在住山形県人会の3団体合同)を17、8チームに分け、各鍋最大10人くらいで芋煮を作りました。各グループすべて違う芋煮です。もちろん家や地域で芋煮の味付けは異なるので、「芋煮とはこういうものだ」という信念はそれぞれあるでしょう。しかし私たちは「芋煮」よりも、「芋煮会」というプラットフォームを大切にしています。

――芋煮の味にはそれほどこだわっていないということですか?
いえ、1つの味付けにこだわらないだけで、「芋煮ラボ」と銘打って、レシピ研究はかなり本格的に行っています。オリジナルレシピを作る試みもしています。レシピ開発以外にも、芋煮をみんなで作れて、芋煮会のノウハウを他で教えることができ、コミュニティとの接点を作れる「イモニスト」を、東京五輪がある2020年までに1000人養成することを目標にしています。

さらに国内だけでなく英語などでも発信し、将来的には芋煮を「Imoni」として海外で通じる日本語にしたいです。海外各地でもそれぞれの地域でアレンジされた芋煮が広まったらうれしいです。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、じつはその文言の中に「芋煮」という言葉も入ったんですよ! 

――東北以外の人にとって芋煮会は敷居が高いですか?
全く高くありません。私たちの会でも、メンバーは全員が東北出身者というわけではありませんし、名称にも「全日本」と付けているように、日本中で芋煮をやっていきたいと思っています。もちろん「芋煮」と聞いて一番響くのは山形や宮城、福島出身者ですが、東北だけのものにせず、せっかくの食文化なので全国はもちろん、世界にも広げていきたいです。
 
9月は、前述した山形で行われる「日本一の芋煮会フェスティバル」が開かれるなど、芋煮会のトップシーズンが到来します。東北以外の人も、今秋はぜひ河原で芋煮会を開いてみてください。鍋を囲み、食と人をともに煮込むことで、皆がつながる良い機会になるはずです! 
(加藤亨延)