ずばり今秋はアメリカンフットボールの関東学生リーグが見逃せない。写真は優勝候補筆頭、日大フェニックスのQB西澤凌介選手。3年生ながらエースとしてオフェンスチームを引っ張っている。撮影:小座野容斉

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酷暑が去り秋が急接近してきたような陽気ですが、秋と言えばスポーツの秋。体を動かすのに気持ちのいい季節になってきました。

でも自分で体を動かすのはちょっと、という人はスポーツ観戦はいかがでしょうか?爽やかな秋空の下、ビールでも片手に熱戦の臨場感を味わうというのはなかなか贅沢な時間です。

そんなスポーツ観戦ファンの中で、今年盛り上がり必至と話題になっているスポーツがあります。それが アメリカンフットボール(アメフト)。

日本ではジョー・モンタナさん率いる米プロリーグNFLのサンフランシスコ・49ersが活躍した90年代初頭に、長嶋茂雄さんや明石家さんまさんをも巻き込んだブームが訪れましたが、以後なかなかアメフトの話題を耳にすることはありませんでした。

それでも日本のアメフトのレベルは上がり続け、あまり知られていませんが4年ごとに行われるアメフトのW杯ではアメリカの出場しなかった第1回大会(1999年)と第2回大会(2003年)で優勝しています。

その日本のアメフトの中でも、今週末6日から開幕する「関東学生リーグから目が離せない」というのはNFLから日本の高校リーグまで、アメフトに関する日本随一の情報量を誇るウェブマガジン週刊TURNOVERで執筆と編集を務める共同通信社の松元竜太郎さんです。

「今年から関東学生リーグのリーグ編成が変わりました。これまで並列の2ブロックに分かれていた1部リーグが、上位のTOP8と下位のBIG8の二つのリーグに分かれたのです」

野球にたとえるなら、セ・リーグとパ・リーグに分かれていたリーグが、各リーグの3チームずつで上位リーグと下位リーグの新しいリーグを編成したようなもの。これまで関東学生リーグでは上位校と下位校の実力差が大きく、優勝を狙えるチームは強豪と対戦する10月中旬のリーグ終盤まで馴らし運転状態でしたが、今年は「9月から気が抜けない」(松元さん)というのです。

レベルの向上はリーグ編成の問題だけではありません。近年多くのスポーツで体育会離れが叫ばれている中、微増ながら競技人口が増加しているのも見逃せません。2000年のゼロ年代後半には人気アニメ『アイシールド21』の影響で競技者が増えたのに加え、 2011年より小学校の新学習指導要領にタックルのない簡易版アメフトとも呼べるフラッグフットボールが取り上げられ競技の裾野が爆発的に広がってきているのです。

さらには「プロコーチを起用する大学が増え、確実に競技のレベルが上がってきています」と松元さんは指摘しています。海外・社会人リーグでもコーチとして抜群の実績を残した注目の外国人コーチを招聘している慶應義塾大学を始め、TOP8の半数近くはプロコーチを登用しているといことです。

とはいえ一般にはあまり馴染みのないスポーツ、いきなりスタジアム観戦して楽しいのでしょうか?

「無理にルールを覚えて行くことはないと思います。会場に行くとヘルメットのぶつかり合う迫力のある音の臨場感も楽しめますし、チアリーダーがいることも多く華やかで楽しい雰囲気です。ビールを飲みながら会場の雰囲気を味わうだけで十分に楽しいと思います」

大学の試合は一日に3試合行われることが多いのですが、入場券を買うと終日スタジアムにいられ全試合見られるのも嬉しいポイント。また以前は日本の大学チームはボールを持って走るランプレーが多かったのですが、レベルの向上にともないTOP8リーグの大学はほとんどパスプレーを中心に試合を組み立てるようになりました。その結果派手なプレーが増え、初心者でもよりわかりやすく楽しむことができるようになったと言えるでしょう。

でもせっかく観戦するなら少しくらいはチームの情勢も知っておきたいところです。今年の注目ポイントはどういったところでしょうか?

「実力的には日本大学が頭ひとつ以上抜けています。日大に対する挑戦権の獲得を目指して法政大学、明治大学、慶應義塾大学、早稲田大学の4強が群雄割拠しています」

「第一節にいきなり早稲田・明治という好カードがあります。負けてしまった方は優勝がかなり遠のきます。第二節は慶應・明治があり、第三節、第四節でそれぞれ早稲田、慶應が日大に挑戦します。本当に毎週目が離せません」

このまま日本のアメフトのレベルが上がっていけば、日本人初のNFLプレーヤーが誕生するのも夢ではありません。

この秋、週末に時間が空きそうなときはスケジュールをチェックしてアメフト観戦をすれば、未来のNFLプレーヤーの活躍を目にすることができるかも知れませんよ。
(鶴賀太郎)