バーチャルカラオケ(画像提供:第一興商)

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つい先日、友人と居酒屋に入った。初めて行く店だったのだが、引き戸を開けた瞬間、常連客が一斉にこっちを振り向いてドキッとした。

こういう店では変におびえず、かといって常連さんたちのお邪魔をすることなく、まずは場の雰囲気を静かに感じつつお酒を楽しむこと。数々の居酒屋をめぐって得た経験則に従い、そうやって飲んでいると、しばらくして「良かったら、そっちのみんなも歌って!」とマイクが回ってきた。

そう、この店は居酒屋とスナックの中間、一つの空間でみんながカラオケを楽しみながらお酒を飲む店だったのだ。最初は緊張したが、誰がどんな歌を歌おうと一緒になってワイワイ盛り上げてくれる常連の方々の手腕に助けられ、若輩者の筆者たちも楽しく飲むことができた。

そんな中、常連客が歌っていて驚いたのが「バーチャルカラオケ」だった。例えば「居酒屋」という有名なデュエット曲がある。五木ひろしと木の実ナナが歌った永遠のカラオケ定番曲。これの「バーチャルカラオケ」版を常連さんがリモコンで入力すると、カラオケ映像にはナイトドレスに身を包んだ美女が映し出された。

モニターの中の美女が、画面の外のこちらに向かってマイクを差し出す。そして「もしも〜きらいでなかったら〜」から始まる男性パートが歌い終わると、女性パートは映像の中の美女が歌うのだ。つまり、美女と二人でデュエットしている気分が味わえるのである。これが「バーチャルカラオケ」というものなのだという。

しかもこの映像、すごく凝っている。男性の視線の揺れがリアルに再現され、たまにドレスの胸元にチラッと目が行ったりする。デュエット相手の美女の背後にはスナックと思しきスペースで、お酒を楽しむ男女の姿がぼんやり映り込んでいる。その作りこまれた映像に、思わず目がくぎづけになってしまった。

「いいでしょー! これ!」「この店で大ブームだよね」と常連さんは「バーチャルカラオケ」を口々に絶賛。帰宅後、早速調べてみるに、このサービスは、カラオケ業界の最大手の第一興商が「通信カラオケDAM」で配信しているものらしい。

一体どんな経緯でこのような斬新なサービスが生まれたのか、今回、第一興商の広報の方に話を伺うことができた。

――バーチャルカラオケ」は、どのような経緯で生まれたサービスなのでしょうか。また、いつ頃から配信されているのでしょうか。
「スナックやパブなどのナイト店舗で、忙しく働くママさんの接客を補助するサービスとして、また、「1人でもデュエットを楽しみたい」といったお客様のご要望に応えるために誕生したのが「バーチャルカラオケ」です。2006年に初めて当コンテンツを世に送り出しました。その後、2012年にはHD映像化や楽曲ラインアップの変更などのリニューアルを行っています。

なるほど、確かにママさんが一人で切り盛りされているお店では大助かりのサービスかもしれない。

――現在、何曲ほど配信されているんですか?
“Premier DAM / BB cyber DAM”にはリニューアル前のバージョンで12曲、“LIVE DAM / Cyber DAM HD”にはリニューアルした新バージョンを12曲配信しています。

――ちなみに「リニューアル」というのはどんな部分に対して行われたのですか?
2012年の新商品発売のタイミングでリニューアルを行いました。まず、従来のSD映像(4:3)からHD映像(16:9)へ画質を向上しました。また、楽曲ラインアップを見直して、カラオケで人気の高いデュエットソングの定番曲と一部差し換えました。さらに被写体演出とカメラワークを新たに工夫し、映像のリアリティを追求しました。

――配信される曲目のセレクトはどんな基準で行われているのでしょうか?
ナイト市場において、歌唱頻度の高いポピュラーなデュエットソングをチョイスしています。その中でも、男性パートと女性パートの歌詞がバランスよく配分されており、男女の掛け合いを楽しめる曲を選定しています。お互いの感情をぶつけ合いながら歌うことで、疑似恋愛している感覚になるような、色気や艶のある曲が選ばれています。

公式サイトに配信曲が紹介されているのだが、「居酒屋」のほか、「愛が生まれた日」「男と女のラブゲーム」など、確かに大人の恋を演出するムードたっぷりの楽曲が並んでいる。

――私が実際に目にした映像には非常に色っぽい美女が登場していました。このキャストはどのように選ばれているのでしょう?
男性の好みに応じて“かわいい系”“キレイ系”など、さまざまなタイプの女性を選定しています。少し手を伸ばせば届きそうな“身近な存在”だと感じられるような魅力を持った、リアリティ・現実感を生み出せそうな女性を選びました。

――歌い手の男性の目線のリアルな揺れなどを始め、映像のクオリティが非常に高いですよね。臨場感を演出するために工夫されていることなどはありますか?
映画監督など、多方面で活躍する演出家を起用しているんです。ステディーカムを用いたカメラワークによって、登場人物の視点で撮影し、本当にその場に存在しているかのようなリアリティを追及しています。また、ホステスとしての表現力や、歌詞の本質に迫る女性の魅力を映し出して、男性の心情に沿ったカメラの距離感と臨場感によってエロティシズムを表現しています。女性が歌唱している時だけでなく、女性が歌唱している男性を見つめている目線にも物語の本質が宿るよう演出しています。

どうですか! このこだわり! こういった工夫があのような臨場感のある映像を生んでいたのか!

――どんなユーザー層を想定して制作されているのでしょう? ちなみに女性版が作られる予定は?
スナックやパブなどのナイト店舗を利用される、30代〜70代の幅広い年齢層の男性をターゲットとして想定しております。スナックやパブなどのナイト店舗で利用されるコンテンツとして位置づけていますので、女性版を制作する予定は今のところありません。

――配信曲数は今後も増えていくご予定でしょうか?
今のところ増曲の予定はありませんが、まだまだデュエットソングの名曲はたくさんありますので、ユーザーのご要望次第では対応を検討したいと思います。

これはもう、「バーチャルカラオケ」の楽しみを少しでも多くの人に体験してもらうしかない! そうすればきっと配信曲がさらに充実していくはず。「バーチャルカラオケ」は大勢でカラオケに行った際にも盛り上がること必至なので、ぜひお試しあれ!
(スズキナオ)