[Digital Cinema Bülow 2〜CineGear 2014]Vol.01 CineGear Expo レポート1〜カメラ・レンズ関係編〜

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変化するCineGear Expoの客層

昨年は12,500人の来場者があったCineGear Expo。毎年訪れる度に気になるのは撮影スタイル自体の変化だったが、今年は訪れる客層に少し驚かされた。映画やテレビ撮影の関係者よりも明らかにコンシューマーや学生、そして業務系などの来場者が増えたことだ。毎年出展されるメーカーの方に聞いても、こんなに人が多いCineGear Expoは初めてで、3つある駐車場が初日の開場時間にはすでに満杯で入場できないといった状況になった。

また別な動きとして、新製品は出る物のその回転率が早く、ハリウッド近郊にあるプロショップやレンタルハウスは軒並み売り上げを落としており、各店舗とも在庫を持たず、ネットショップ対応の倉庫は地方へ移転、といった方針に変わってきているという。これは近年ハリウッドではすでに撮影を行わなくなった(海外や地方等の撮影費の安いところへ移動)ことに要因が有るようで、相次ぐ市場の変化にCineGear Expo自体の存在価値も変わってきている。ハリウッドの映像産業の構造が少しずつ変貌しているのは間違いの無い事実だ。それでも、今年の会場ではロジャー・ディーキンス氏などの著名なアカデミー受賞の撮影監督も何人か見かけられ、映画の都の雰囲気は充分に味わえる。

映画撮影自体がそれほど激変した年というのは、DSLRムービーの登場による撮影革新で、カメラ市場も激変した2009年を除いては、大きな変化というのは観られず、少しずつ何かが変わっているという印象を受ける。ただし全体的な小型化、軽量化が少しずつ進み、大規模撮影がそれだけ受け入れられなくなった現状も少なからず垣間みえる。そうした機材を制作するベンチャー企業やアジア系企業の進出も著しい。

カメラ・レンズ関係のここ近年のトレンドとしては、新たなアナモフィックレンズやプライムレンズの登場だろう。デジタル撮影になってからセンサーサイズの大型化が進み、一方でポストプロダクションにおけるデジタルワークフローが進化・確率されてくる中で、レンズの表現こそが撮影現場のクリエイティブが活かせる唯一の領域と言えるのかもしれない。

カメラ・レンズ関連

■KOWA

産業用レンズ等も手がける日本企業、KOWA(興和光学)がCineGear Expoに初出展。これまで主に顕微鏡、望遠鏡や産業用光学機器に使用するCマウントレンズを作ってきた同社が、昨年のInterBEEで参考出展されていた映画撮影用にも使えるマイクロフォーサーズマウントにも対応した“PROMINAR”レンズシリーズを出展。非常に歪みの少ない8.5mmの超広角から50mmまで6種のラインナップがある。発売はPhotokinaの時期(本年9月中旬)を予定しているようだ。

こちらもKOWAのブースに展示され、昨年から発売されているiPhone5用のPhotoレンズアダプター「TNS-IP5」。iPhone5に付属しているイヤホンの「+」ボタンでシャッターを切ることができ、望遠撮影時の手ブレ軽減機能となっている。

■RADIANT IMAGES

昨年のCineGear Expoで発表され話題を集めた、RADIANT IMAGESのNOVO。GoPro HD3をベースにしたカメラユニットで、今回は「NOVO STABILIZED」と称した、3軸ジンバル型の両手ハンドル型スタビライズシステムも登場。

■池上通信機

池上通信機が昨年発表して話題になった、ARRIと共同開発の35mm大判センサー搭載カメラ「HDK-97ARRI」を持って、CineGearに初参戦。海外ではTVドラマ系などでかなり売れ行きも好調だそうだ。

■VANTAGE

アナモフィックレンズ専門のレンズブランド、HAWKSのメーカーであるVANTAGE(独)から、T値=1を実現した、「VANTAGE ONE」シリーズを出展。17,5mmから21、25、32、40、50、65、90、120mmまでの9本のシリーズセットがラインナップ。フルセットの価格はおよそ3,000万円ほどだそうで、昨今のデジタルカメラによるマーケティング重視の製品作りとは、まさに真逆の発想で作られた、本格シネマトグラファーのためのプライムレンズ。

■Focus Technologies

このところ進化が著しいレンズフォーカスシステムの世界。4K OVERがスタンダードになった撮影現場では、やはりフォーカスの問題が大きな比重を占めている。Focus Technologiesの「The Sniper MK III」は、この10年で3世代目を迎えるレンズフォーカスシステム。カメラ上部に取り付けられたレーザーユニットのレーザー照射により距離を測定。MK IIIの最大の特徴はそのスピードだそうだ。またディスプレイは新開発のOLEDを採用。プロパッケージの方には新開発のビームスプリッター(5°と17°)が同梱され、さらにフォーカスを正確に追尾可能。

■スコルビオ

SCORPIO HEADで有名なスペイン・バルセロナのメーカー、スコルビオが出した「scorpiolens ANAMORPHIC 2x」アナモフィックレンズシリーズ。20mm〜300mmまで14本のラインナップ中、25mm〜135mmまでの9本がT2の絞り値を有する(他はT2.8〜3.2)。価格もARRI等の他メーカーに比べればかなりの低価格のようで、すでに日本の販売商社との取引もあり、出荷され次第日本の現場でもお目見えしそうだ。

■True Lens Services

最近GL OPTICS(中国)などのEFスチルレンズをモディファイするメーカーも出て来たが、ハリウッドでは以前からある、オールドスチルレンズにシネマレンズの筐体を被せた、いわゆるモディアファイレンズのメーカー、英国のTLS(True Lens Services) OPTICS。手前はCOOKEのSpeed Panchroレンズにシネマレンズスタイルをモディファイした18mm〜100mmの新バージョン。奥のズームレンズはなんとNikonのズームレンズがベースになっているそうだが、周知の通りニコンレンズがズームやフォーカスリングの操作の回転向きだが、映画用レンズやEFレンズ等とは逆。このギアを逆向きにする特殊な改良も加えて、シネマレンズ用にあわせている点もユニークだ。

これもTLSのカラーのPLレンズキャップ(全6色)。ポリカーボネート製で衝撃に強く、カンパニーロゴなどの名入れも可能。レンズの数が多くても一目で分かる安心グッズ。

■キヤノン

キヤノンはNABで発表した、ドライブユニット付きEFシネマレンズ「CN7×17 KAS S / E 1」「CN7×17 KAS S / P 1」をEOS C500とともに展示。オンセットによる4Kワークフローデモも行われていた。

■ARRI

ARRIのブースでは、ALEXA、AMIGAなどのカメラ展示とともに、やはりアナモフィックレンズなど、レンズ群に注目が集まっていた。写真は昨年発表のウルトラワイドズームレンズ 9.5-18mm T2.9。ARRIのYouTubeチャンネルでも、このレンズのデモ映像が公開されている。

■OVIDE

スペインのバルセロナにあるOVIDE社の「SMART ASSIST HD2」は、QTake HDソフトウェアベースのビデオアシストのオールインワンシステム。22インチモニターのタッチパネル操作によりキーボードやマウスも必要なく、グリーンバックなどの合成撮影の際のオンセットでのビデオコントロールとメタデータ管理を効率化。またIDXのVマウントタイプのバッテリーが2個装着可能で、屋外ロケでのバッテリー駆動にも対応する。iPadでのプレイバックも可能。

txt:石川幸宏 構成:編集部
Vol.00 [Digital Cinema Bülow 2] Vol.02
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